概要を放てっ
1958年6月25日生まれ、福岡県大牟田市出身、兵庫県姫路市育ち。高校中退後職を転々とし、21歳の時東京の親戚の所に行くついでに初めて描いた漫画を集英社に持ち込む。
1981年、第21回手塚賞準入選(『ショット!』、棚渡哲也名義)。
平松伸二や本宮ひろ志のアシスタントを務め、『海の戦士』(『週刊少年ジャンプ』)でデビュー。
高いデッサン力に支えられた非常に緻密な人体描写と、バイオレンス溢れるアクション描写が特徴。
また多くの格闘技漫画が打撃や投げ技による攻防を主とする中で、関節技でも迫力ある攻防を見せることができる希少な漫画家。
それほどの緻密な画風でありながら、40年以上にわたる活動で一度も原稿を落としたことがなく、還暦を超えた現在でも週間連載を掛け持ちできるほど筆が早い。
漫画家人生で一番辛かったことは「原稿を落としそうになったこと」であり、自分の指をへし折って言い訳にしようとしたこともある職人気質。アシスタントに制止されて未遂に終わり、無事に脱稿できた。
また、単に筆が早いだけではなく背景を描かない、あるいはトレスで済ませるコマの多用、登場人物の肉体などを過去作品からコピーして上手く加筆して再利用するなど、省力行為はしばしば行っており、全てのコマを一から描いているわけではない。こうしたベテラン漫画家らしい力の抜きどころの巧みさも速筆ぶりを支えていると言える。
出版社から枠が空いた際の短期集中連載をよく任されているのも、これらの安定した作画実績が買われてのことと考えられる。
キャリア前期に発表した力王はビジネスジャンプのバトル漫画の方向性を決定付け、登場人物がベガの直接のモデルになったという点においてもその功績は大きい。
……なのだが、本人も認めるよく言えば思いきりがいい、悪く言えば適当な性格がそのまま出た作風で、
- ガバガバかつコロコロ変わる設定
- 滅茶苦茶な時系列
- キャラの性格崩壊と立ち位置の激変
- キャラや設定が無かったことにされる
- 登場人物の殆どに取ってつけたような哀しき過去…
- コピペ、トレスの多用
- 有名人モデルのキャラを作中で悲惨な目に合わせる
…といった展開(通称:猿展開)が凄まじい速度で繰り返される。
殊更厄介なのは、これだけ無茶苦茶な内容なのに何だかんだで面白いものに仕上げてしまえるところである。この魔性の魅力に憑りつかれてしまった読者からは「面白いんだけど俺は何を読まされてるんだろう?」「猿先生何も考えてないと思うよ」「きさまーっ猿先生を愚弄するかーっ!」と日夜弄られ続けている。
言ってしまえば作品が放つエネルギーと勢いで読者を魅了するタイプの作家である。登場キャラクターたちも尋常ならざる濃さを誇っており、彼らの熱き生き様こそが猿渡作品のキモとも言える。そのため、ノリと勢いが失われにくく、設定の破綻が起きづらい短期集中連載作品や、個性豊かなキャラクターを活かしやすい義理人情モノの方が完成度が高く、そちらは普通に名作揃いである。
また、人間誰しもが抱くであろう悪意を的確に描き出すことでも知られており、作品に登場する悪役キャラたちもどこか身につまされるようなリアルな内面を持っている。
因みに食事や食べ物の描写の下手さでも有名であり、描かれる料理が旨く見える板垣恵介とは好対照である。
そういったことも含めてファンからは「猿先生」と愚弄・・・もとい尊敬されている。
なお、彼のファンは「マネモブ」を自称する。これは「マネキン・モブ」の略で、作中に登場するモブ・キャラクターが妙に生気がなくマネキンのように見えることから、自分たちをモブキャラに喩えたもの。
その中でも、長年猿作品を追いかけくまなく隅々まで読破し、ネタ混じりの考察でマネモブたちの腹筋を爆散させるような歴戦の猛者達は、猿作品にやたらと登場する異常性愛者になぞらえて異常猿愛者と称えられる。
どの世界にも通じることやが…中身のないヤツが作品リストを誇る!
- ドッグソルジャー ※1989年にオリジナル・アニメ化。
- ザ・ハード ※1989年にオリジナル・アニメ化。
- あばれブン屋
- SOUL
- BAD POLICE
- ジャングル・キング
- 海の戦士 ※デビュー作
- 本気でゲーム ※鳥嶋和彦から「あだち充みたいなラブコメを描け」と無茶ぶりされて描いた黒歴史
- 異形人おに若丸
- Mr.ホワイティ(原作・北芝健)
- 力王 RIKI-OH(原作・鷹匠政彦) ※1989年と1990年にオリジナル・アニメ化、1991年には香港で実写映画化。
- ダムド-DAMMED(原案・門脇正法)
- DAN-GAN(原作・梶研吾)
- 高校鉄拳伝タフ※2002・2004年にオリジナル・アニメ化。
- 傷だらけの仁清
- DOKURO -毒狼-
- ロックアップ我等あかつきプロレス団(読み切り版タイトルは『漂えど沈まず』)
- GOKUSAI
- Rūnin
- ZIG(原作・長崎尚志)
猿語録じゃねぇかよえ----っ!?
- 「えっ」「なにっ」「なっ なんだぁっ!?」
- 「しゃあっ!コブラ・ソード!」
- 「コモドドラゴンを放てっ」
- 「すごい数の信者が集まってきている」
- 「そうか!君は頭が悪くて他にとりえが無いから闘うことでしか自尊心を満たすことが出来ないんだね。かわいそ...」
- 「貴方はクソだ」
- 「なめるなっメスブタァッ!」
- 「この力に一番戸惑っているのは俺なんだよね」
- 「怒らないでくださいね。強いだけの男ってバカみたいじゃないですか」
- 「忌憚の無い意見ってやつっス」
- 「うぁぁぁ、き・・・鬼龍が廊下を練り歩いてる」
- 「ククク・・・ひどい言われようだな。まぁ事実だからしょうがないけど」
- 「自分たちの手で作るから尊いんだ、絆が深まるんだ」
関連イラストやんケ
御関連タグだあっ!
猿展開猿先生の特有の唐突なストーリー展開
キン肉マン・彼岸島:整合性より勢い重視漫画の代表作。猿漫画と比較されることも多い。
宮下あきら・土山しげる:整合性より勢い重視漫画家の代表的な人物。猿先生と比較されることも多い。
平松伸二:師匠。アシスタントに来ていた猿渡の漫画を見て、このまま成長すればいずれ自分のテリトリーを侵す存在になると殺意まで抱き、寝ている猿渡を殺そうとするがかろうじて思いとどまる。(注・半自伝漫画「そしてボクは外道マンになる」の話です。真に受けないでね♡)
本宮ひろ志:もう一人の師匠。
高橋陽一:ご存じキャプテン翼の作者。同じ平松信二のアシスタント出身だが、高橋が抜けるのと入れ替わりで入ったため、机を並べた経験はない。
船木誠勝:親交の深いプロレスラー/格闘家。アニメ化された「ザ・ハード」「高校鉄拳伝タフ」に出演。