概要
『彼岸島』とは、『週刊ヤングマガジン』誌上において、2002年より連載されている松本光司によるホラー漫画。
2010年の夏からは「彼岸島 最後の47日間」にタイトルが変わり、そして2014年からはシリーズ初の本土上陸編となる「彼岸島 48日後...」がスタートした。
誰も知らない絶海の孤島・彼岸島においての、吸血鬼・雅に支配された辺境の漁村で、吸血鬼と化した島民と島へ訪れた主人公達が、逃げ延びるため策をめぐらすサバイバルホラー。
吸血鬼をはじめとする邪鬼(オニ)などの怪物との遭遇、スリリングかつスプラッターな描写が連続する息を呑む戦闘シーン、そして仲間との悲劇的な別れなどがドラマチックに描写される。
そして「最後の47日間」から「彼岸島 48日後...」に突入してからは、物語は明さんと雅様の最終決戦へと向けて動き始めた....!!
…という話のはずだったのだが
この作品を一言で言うなら「吸血鬼ホラーバトルアクション漫画」。
長期連載の宿命で、設定の矛盾などが半端なく発生した上に、いつしか丸太や松明といった有り合わせの武器から、日本刀や弓矢で殺しあう尋常じゃないバトルテイストに変わってしまっている。
彼岸島は地図上でもはっきりしない田舎の絶海の孤島であるはずだったが、樹海やら砂丘やらがどんどん出現してしまい、地形を整理するとどう考えても日本列島最大の島である本州と同等かそれより大きくないとおかしくなってしまうという凄ェ状態になってしまった。
また元々は小さな漁村の村民同士の争いにもかかわらず、敵勢力・味方勢力とも毎回大量に死人が出ているが一向に全滅する気配はない。
この「村」の人口は少なくとも百人単位では足りないだろう。
更に書くと、化け物じみた強さに成長していく主人公たちと同じ師匠の下で修業したモブたちとの間で戦力差が大きすぎるのも謎である。
他にも元はただの漁村だったのにもかかわらず、何故か大量の日本刀があったり、あちこちに武器として使えるサイズの丸太が落ちてたり、諸事情で全裸の腰布だけになったのにその後も服も着ずにずっとその格好のままの人や、これまた諸事情でリュックサックに入ったきり何故かそれ以降そのままの姿でいる人がいるなど、とにかくシリアスなのに突っ込み所満載な作品である。故にこの作品をギャグ漫画と見なす向きもある。
さらにあろうことか、『最後の47日間』は人類が吸血鬼に敗北するバッドエンドで終了。
新章の『彼岸島 48日後…』が2014年8月18日発売号から連載され、明さんの激闘はまだまだ終わりそうにない。
メディアミックス
ゲーム
詳しくは彼岸島(PSP)を参照のこと。
2005年にプレイステーションポータブル用ソフトとしてゲーム化。ジャンルはホラーアドベンチャーで、部分的にアクション(QTEのようなボタン入力により敵と戦う)が取り入れられている。
当時は彼岸島本編がまだ連載中だったためか、ゲーム中のストーリーはパラレルワールドのように大きく変更が加えられたものとなっている。(例:雅様がショタだったり、師匠が登場しなかったりする)
小説
2007年7月にはKCノベルスより桂木祥著、「小説彼岸島:紅い鬼 」が出版された。
内容としては原作における宮本篤退場後の「峡谷の血戦」の後を描いたオリジナルストーリーとなっており、宮本明ではなく16歳の少女千春が主人公となっている。
実写映画化&ドラマ
2013年にはドラマ化もされ、同年10月から12月にかけて、毎日放送、TBS、北海道放送で放送された。その後もTBS系列局のごく一部(例えばCBC、長崎放送、IBC岩手放送、RKB毎日放送)にて放送されている。
さらにドラマ第2部「彼岸島 Love is over」が2016年9月と10月に毎日放送、TBS、CBC、IBC岩手放送、長崎放送、テレビユー山形、熊本放送にて放送された(RKB毎日放送は同年10月に集中放送)。そしてドラマの続編である映画第2弾「彼岸島 デラックス」が2016年10月に公開されている。
アニメ
「彼岸島X」として2016年10月15日から2017年3月まで、YouTube・ニコニコ動画でショートアニメが配信された。一話3分弱で最終話は30秒拡大版。
原作のエピソードをアレンジしたオリジナルストーリーとなっている。1人の声優がメインからモブまで演じ、3話ごと(13話及び特別編は1話ごと)に入れ替わる。
担当声優は以下の通り
特に12話では総勢50人(匹)のキャラクターを山寺宏一が1人で演じている。
また、単行本30巻の限定版特典という形でドラマCD化されたことがある。
あらすじ
彼女は二年前に行方不明になったはずの兄(宮本篤)の免許証を持っていた。
冷が言うには明の兄は彼岸島という島にいると言う。
兄を連れ戻すため、仲間たちと彼岸島へ船で向かう明たち。
しかし、そこは吸血鬼達が支配する悪夢の島だった……!
主な登場人物
映画版とドラマ版のキャストも記載。
主人公とその仲間達
(映画)石黒英雄(ウルトラマンオーブの人) / (ドラマ)白石隼也(仮面ライダーウィザードの人)
この作品の主人公。最初はごく普通の気弱な高校生だったが、吸血鬼の島での戦いを経て、半年ほど修行してからは日本刀を振れば鉄でも何でも切れるようになり、吸血鬼でも無いのに邪魔な吸血鬼の神父を「ポイッゴーン」する程の超人と化した。
後に最終決戦で雅に右腕を斬り落とされ、大怪我を負うも、右腕を隊長が造った仕込み刀が仕込まれた義手に変え更に強くなる。たまに思い出したように古傷が痛んだり、足を引きずったりする。ちくしょう。
(映画)渡辺大 / (ドラマ)鈴木亮平 / (ドラマCD)浪川大輔
見た目が夜道の変質者な明の兄。明からは「兄貴」と呼ばれている。
丸太を片手で振り回す超人であるが、薙刀は大きく、重過ぎてあまり使いたくないとのこと。
- ケンちゃん(本名:斉藤健一)
明の友人にして仲間達の兄貴分。金属バットと鉈を振り回す。嘘みたいな理由で感染する。
明の友人。弱虫。商店街の仲間たちで最初に犠牲になり、明が強くなるきっかけを作った。
明の友人。絶海の孤島(のはず)の彼岸島でバズーカなどの超兵器を開発したり、豚汁を作って仲間を癒したりする文房具屋の息子。
明を追い本土へ渡るが吸血鬼に襲われ吸血鬼化し、雅を騙って大阪に君臨する。
死ね明! → 殺さないでくれ! → 今度こそ死ねっ! → 俺たち親友だろ?の流れをやった後、
ユキと同じく最期は明に斬られ死亡、墓を彼によって建立される。
なお、本名はゲームでは「正一」となっており、ストーリー内で「西山」と呼ばれる理由が語られる。
- 加藤(※本名:三村政和)
明の友人...なのだが、確実に足手まといである。
だが何かと憎めないムードメーカー。たいていこいつのミスで事態が悪化する。
あだ名は一見無関係に見えるが、「ケンちゃんとよく一緒に行動しているので加藤」とのこと。
明の幼馴染み。ヒロイン的立ち位置であったが、守られてばかりは嫌だということで戦闘時は弓矢でのサポートを引き受けるようになる。最初は"弓矢が得意"くらいの軽い感じであったが、回が増すごとに弓の腕前は那須与一並みになる。
明を追い本土へ渡るが吸血鬼化し、更に血を飲むのを拒んだ為に邪鬼化する。
西山と同じく最期は明に斬られ死亡、墓を彼によって建立される。
彼岸島の人々
(映画)阿見201
主な武器は丸太。
師匠が組織した人間側の抵抗組織(レジスタンス)の戦闘員。
全員、忍者のような姿格好に身を包んでいる。
しかし...大抵の場合どんなに強くてもやられ役である。
(映画)水川あさみ / (ドラマ)佐藤めぐみ / (ドラマCD)小清水亜美
篤の免許証を持っていた謎の女性。その正体は……?
(ドラマ)麻亜里
スカートとポニテがよく似合っている冷の妹。多少荒っぽいが、車の運転が得意。
その他の人間
病院の村のロッカーに隠れていた中年のおっさん。常に腰にタオル一枚。
その格好をする必要性が無くなったのに何日経とうとやっぱり腰にタオル一枚。
最期は邪鬼の太郎に捕食されてしまい、壮絶なアヘ顔を晒して島に散った。
宮本篤の婚約者。清楚な黒髪美人。
ドラマ版では斧神の正体である。
彼岸島に漂流してきた青年。「クソちゅよい吸けちゅ鬼」に対して不殺の精神を抱いていたが、高熱を出し戦えない明を守る為に戦う決意を固める。
...ようやく吸血鬼相手に戦うことを決心したのは47日間も終盤、期限まで残り数日の時点である。
またそれまでの彼は度々ヒステリックに豹変して明さんを包丁で刺そうとしたり、音に敏感な邪鬼の目の前で大声を上げて走り出したり、戦闘を全て明さんに押し付けて自身は逃げる等の行動を幾度となく行なっている。
しかし最後は明さんの窮地を身を挺して庇い、椿の攻撃で命を落とした。
通称「亮ちゅけ」、あるいは「ちゅけ」。
亮介の友人の女性。亮介と共に彼岸島に流れつく。
その後は吸血鬼に襲われて窮地に陥るも、西山の協力もありボートで亮介とともに島から脱出を図る。
しかし案の定、沖にいたサンマ邪鬼に阻まれて船を沈められ、彼とはぐれてしまった。
その後、明さんを連れた亮介達に救出された和美は吸血鬼と化してしまっていた。
それでもそんな彼女を心から愛し、己の命をも厭わない亮介の身を案じた和美は自ら明さんに自身の介錯を頼み、彼岸島に散ったのだった。
亮介の友人で、大学のレスリング部主将。
彼岸島に亮介らとともに上陸するも早々から別々の浜辺に打ち上げられてしまい、人知れず「クソちゅよい吸けちゅ鬼」に捕まってしまった山岡は彼らの食料として樽にキープされてしまった。
吸血鬼達
吸血鬼達のボス。首を切っても死なない不死身の体を持つ。
余談だが、ドラマの脚本を担当したNAKA雅MURAとは何の関係も無い。
雅の右腕。黒山羊の被り物をして巨大な斧を持った混血種(アマルガム)。
頭部に見える山羊の頭は飾り物であり、フェイズシフト装甲じみた構造となっている。
雅の左腕のアマルガムで金剛力士像のような見た目をしており、捕食と脱皮を繰り返すことで凄まじい勢いで自身の肉体を強化させていくことができる。
本土編ではさらなる高みを求めて、箱根山で邪鬼を借り続けており、最終的に武人として生まれ変わった彼からは邪念「エロ金剛」が分離し、残った方の金剛様は純粋な武の化身と化している。
旧日本軍の軍医中佐で、1942年に彼岸島に上陸した大日本帝国陸軍による吸血鬼研究の過程で雅様を不死身の吸血鬼にした張本人。
青山龍ノ介(※後の師匠)と協力し、本性を表した雅様を何とかギリギリ封印することに成功した五十嵐だったが、その後研究所の崩落に巻き込まれて自身も吸血鬼化してしまい、邪鬼が徘徊する炭鉱に60年間も幽閉されてしまった。
その後は明さん達に501ワクチンという対雅様最終兵器の在処を伝え、非業の最期を遂げる。
雅様親衛隊の隊長を名乗るフレンドリーな老吸血鬼。
明が心通わせた数少ない吸血鬼で、一応敵だがある意味相棒。癒し枠……。
もはやこの作品のヒロインと言っても間違いない存在。
しかし「彼岸島 48日後...」にて、島を出ようとする明を引き留めようとして、痴話喧嘩がもつれてしまい、明にあっさり首を刎ねられて死亡していたことが判明する。合掌。
拷問好きな女性の混血種で、常に毬をついている。
五重塔の二階を自身の住処としており、主な武器は鉈と注射器。
雅様に淡い恋心を抱いていた吸血鬼の侍女。
しかし成就しない恋に絶望し、異常とも言える執着心から超はやまった事をしでかしてしまう。
47日間の最終決戦ではその忠誠心を雅様に気に入られて邪鬼となり、最後の関門として明さんと対峙した。
吸血鬼の女スパイだったが、とある思いもよらないアクシデントから人間軍の西山と恋に落ちてしまい……?
雅様の息子達
東京にて、雅様の息子を名乗ることを許された強力な吸血鬼の一人であり、強さの序列は第五男。
息子達の中では序列は下の方とされているが、本土編に登場する最強の吸血鬼の一人であり、上野周辺の広大な縄張りを"力の都市"と呼んで支配している。
熱帯地方のオオハシを思わせる巨大な嘴を持ち、戦闘時は鋭く尖った牙や三又の矛を武器として使う。
その経歴から戦闘経験も豊富であり、池袋駅での死闘や東都ドームの決戦では明さんを苦しませた。
雅の息子の四男。
圧倒的な巨体を誇り、女の頭が生えたカタツムリの様な姿をしている。
普段は国会議事堂の地下深くに巨大な巣を張り巡らせて自身の地底世界を作り出しており、まるで蟻を蹴散らすように陸上自衛隊を壊滅させた。
体内に入り込んだ者を異形の吸血鬼に変異させる羽虫を生み出す能力を持つほか、自身の脳や知性を被造物に分け与えることができる。
また、王様自身は明さんとの戦いで死亡したものの、彼の知能を受け継いだ片割れは今もなお生存している。
雅の息子の三男にして血の楽園に君臨する統治者。
勇猛な隈取の施された顔を持ち、胸部に豹の様な模様がある人間の上半身と、巨大な虎の下半身を持つ猫版ケンタウロスの様な姿をしている。
他の吸血鬼や人間を喰らうことでその能力を無制限に吸収することができる。
またその能力の関係上、とある人間の英雄と関係が深いとされるが....
用語集
- 彼岸島
物語の舞台となる絶海の孤島...だったはずが、話が進むにつれてどんどん大きくなっていくからちくしょう...!!
最初期こそ森と海だけのシケた田舎の島とのことだったが食料や物資・武器は豊富であり、世界遺産クラスの五重塔や広大な樹海、温泉地帯、果ては砂漠まで存在する。
そしてシャケが一年中川を遡上しているためおむすびの具に事欠かない。
...ただ、彼岸島自体のシンボルマークであるはずの彼岸花は何故かあまり描写されることはない。
雅様を由来とする吸血鬼ウイルスに感染した人間のことで、基本的に吸血鬼の血飛沫などが体内に入ることで次から次へと感染が広がっていってしまう。
吸血鬼となった人間には吸血衝動などが発生するが、想像を絶する精神力などでそれを抑え込んでいる者も存在する。
女性以外はほとんど農家のおっさんスタイル。
雅様以外の吸血鬼が長期間血を吸わずにいると体内のウィルスが暴走し、理性を持たない凶暴な邪鬼(おに)になってしまう。
邪鬼となった者を吸血鬼に戻す手段はなく、ただ目に入った生物を喰らうのみである。
その元の人物に応じて多種多様な姿に変化することでも知られ、シュールな半魚人だったり、空を飛ぶ死神の姿をしていたりなまはげのような顔をした犬も居たりとバリエーションが実に豊かである。
吸血鬼が血を吸わずにいるとなるもう1つの姿。
邪鬼化する際の変異に耐えられない者は亡者になってしまう。
雅様曰く動きが鈍くて使い物にならない存在ではあるが、同じ亡者が集まって合体する事によりある程度俊敏な動きを可能にする。
吸血鬼同士の血を混ぜ合わせる事によって生まれる特別な吸血鬼。
邪鬼化の比にならない想像を絶する拒絶反応が発生し、生き残るのは全体の1%ほどとされている。
雅様はこの混血の禁忌を幾度も行うことで完全な不老不死の力を手に入れたほか、たとえ一度でも混血を生き延びた吸血鬼は常識を超越した特殊能力を獲得する。
吸血鬼の頭を潰したり、落ちている者を救出したり(失敗に終わったが)、吸血鬼の檻を作ったり、塀や門を壊したり……
木さえ生えていればいくらでも調達可能なサバイバルアイテム。丸太である必要性のない時でも"タダ"で手に入るので感覚でどんどん出てくる。
師匠によって設立された組織。吸血鬼達から島を奪還するのが目的だったが、47日間以降は流れるように解散したものと見られている。
西山がよく作る料理。味噌は常に持ち歩いているらしい。家畜はおろか食料も満足に手に入らないはずの孤島で豚肉は一体何処から調達しているのだろうか……
血液を分離し、雅の不死を一時的に無効化する特効薬。
不死の能力だけが無効化される筈なのに、何故か雅は一時的に動けなくなる。
『48日後…』に登場する、雅に選別された5体の強力な混血種。
自らを「雅様の息子」と自称するアマルガム達は最低一箇所の縄張りを持っており、中には蟲の王様のように自身の遊びに熱中している者もいれば豹丸様のように超クオリティの高い難攻不落の要塞を築いている者も存在する。
関連イラスト
余談
現在連載中の『彼岸島 48日後…』は前述の通りバッドエンド後を描いている作品なのだが、さし当たっての突っ込み所は「雅を殺すのに501ワクチンが必須なのを作者が覚えているのか」であろう。
関連タグ
:彼岸島作中に登場するほぼ全ての名言を五十音順で纏めたページである。有志により時々更新中。
ドラマイズム:ドラマ第2部「彼岸島 Love is over」の毎日放送、TBS(および熊本放送)での放送枠