概要
インターネットや電話などの情報通信技術を用いて、場所や時間帯の制約を受けずに仕事をすること。
自宅で仕事をする在宅勤務、移動先で仕事をするモバイルワーク、勤務先以外のオフィススペースで仕事をするサテライトオフィスワークなどがある。
個人事業としてのSOHOも含むことがある。
日本のテレワークとその起源
テレワークを利用して働く人のことをテレワーカーといい、日本の場合、国土交通省で「一週間に8時間以上、情報通信機器などを利用して職場以外で仕事をする人」を「(狭義の)テレワーカー」としている。
始まったのは1970年代とされる。当時のテレワークは電話回線を通じた仕事が主体であった。
その後、パソコン通信やインターネットなどの通信技術の発達や、携帯電話の普及などに伴い、テレワークも広がりを見せている。
テレワークのメリット
場所を選ばない
もともと、疾患を抱えていたり、妊娠や育児・介護などで出勤の難しい働き手が自宅で行える就労方法として注目されていたが、2011年の東日本大震災のときにスムーズな業務進行が行えかつ節電にもつながるものとして脚光を浴びることとなる。
さらに、2020年のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の蔓延により従業員を出勤させられなくなった企業が、通勤しなくても働ける手段としてテレワークを利用するようになった。
これにより「通勤時間に費やしていた時間を睡眠や家事に当てられる」「通勤電車の混雑緩和」といったメリットにも注目が集まり、収束後もテレワークの普及が一段と進むものと着目されている。
市内の慢性的な渋滞に悩む都市では、公務員のテレワークを推奨する試みもされている。
ドルヲタやバンギャルなどの現場重視の傾向が強いジャンルのオタクにとっては推し活との両立がしやすいメリットがあり、自宅作業中に推しの音楽を流したりして楽しみながらできる、ツアーの遠征先でも仕事や副業ができ資金稼ぎと両立できる利点がある。
オフィスの縮小化
首都圏にオフィスを構えている企業の中で、「業務の大半以上がテレワークで可能」な業種はオフィスを解約したり本部を小さな物件に住み替える会社も出て来ている。
また、本社を東京から「都心から電車で2〜3時間くらい」の範囲の関東圏に移し、家賃の支出を押さえる企業も増えている。
特にweb制作系や広告系ではパソコン1台で可能な業務内容が多いため、地方移転や本部縮小により固定費の支出を抑制するメリットが大きい。
保険代理系もスマホとパソコンでできる範疇が大きいため、フリーや小規模の事業者の中には山村に転居したところもある。
諸経費の抑制
短時間の会合であれば直接の面会よりオンライン会議にするなどして、出張費を抑制できる効果もある。
コメンテーターのTV出演でも、職場からのリモート出演をしてスタジオに行く時間が割かれることを防げるメリットがある。
ワークスタイルの変化
「社員は基本テレワークで、月に何回かだけ東京のオフィスに出勤する」スタイルの企業も増えており、地方に実家や持ち家のある社員だと「親や子供の世話をしやすい」「土地代が安い場所に住めて広い住居に住みやすい」という利点にもつながっている。
中には「もともと住んでいた都市部の住居と、別荘地などの2ヶ所の自宅を行き来する」者もいる。
これにより一時は寂れていた別荘地や郊外の自治体の再興にもつながっている。
また、一時期はスマートフォン中心でパソコンの利用率が落ちていたのが、これで再びパソコンへの回帰が進んでいる。
天候や災害などへの対応策としてのテレワーク
大雪や台風が予想される時、無理に出勤させる事業所への風当たりが強くなりつつある時勢を鑑み、天候の悪化の予報が出ている時は事前にリモート勤務に切り替える事業所もある。
コロナ禍とほぼ並行して猛暑の年が続いたため、通勤時に熱中症リスクが上がることを鑑み「高温になる見込みの時はリモート勤務を推奨する」と言う企業も出てきている。
テレワークの課題
一方で急にテレワーク対応しなければならなかったため、同居家族とのトラブルの元となることも多々ある。
「自宅」で仕事をするということ
考えが古い家族だと「自宅でパソコン仕事」を「遊んでいる」「いつでもできる」と思い込み、仕事が立て込んでいるときに用事を押し付けたり、緊急性のない会話のためにweb会議中部屋に乱入などのトラブルを起こすこともある。
小さい子供を抱えている親だと子供が「親がそこにいるのに構ってもらえないことに納得できない」などでギャン泣きしたりしてweb会議に支障をきたすケースもある(特に緊急事態宣言中は、医療職やインフラ職のようなテレワーク不可職業の親の子供の預かり以外を休止する保育園も多かった)。
猫の乱入ならまだ微笑ましく見てもらえても、人間がそばでうるさくしたり機密に関わる話の際に乱入ともなると上司や同僚との関係を悪くする可能性がある。
同居家族も同じ時間帯にオンライン授業やテレワークをやるために機材や回線がかち合うこともある。
仕事上でさほどの支障がなくても、各自の性格によっては「ずっと顔を合わせているとお互いの嫌なところが目につき険悪になりがち」と言うこともある。
このようなトラブルの重なりにより「コロナ別居」「コロナ離婚」と呼ばれる事態に陥る家庭もある。
集合住宅の回線の貧弱さなど困難を抱える人も多く、運用上の課題も多い。
セキュリティ―の脆弱性
PC自体は職場から支給されたものでも、そこから先の通信機器や回線が家庭用のモノと共用なことも多く、企業のそれと比べセキュリティが脆弱なケースもあり、その部分を狙ったサイバー攻撃などのリスクにも気を使わねばならない。
機密性の高い会議の場合は対面の方が確実な場合もある。
マニュアル不足
また、仕事の様式の急な変化に伴い、マニュアルが出来ておらず不備があり、新たな問題が生じるようになっている。
「高齢の従業員がパソコン操作が苦手」という事業所も未だ少なくなく、PCが苦手かつ頑固な者が役員や経営者だとリモート意向がままならないところもある。
健康被害
首都圏の通勤者の多くは自宅から駅、駅から会社までを徒歩で移動しており、これが結構な運動量になっていたのだがテレワークだと通勤がなく、長時間家にいて座りっぱなしになることで、運動不足から肥満や血行不良を起こすこともあり、健康上マイナスになることもある。
特にワンルーム住まいの単身者だと激務の期間は「移動するのがトイレと風呂だけ」という状態が続きかねない。
テレワークが出来ない職業
国や都などが奨励するテレワークだが、コンビニやスーパーマーケットなどの販売・接客、消防・救急などのライフライン、オンライン診療を除く医療従事者などテレワークが利用できない職業は多々ある。
Twitterなどでもそのような職業からの苦情は多く、不要不急の外出を制限しても外に出ざるを得ない人々がいるのもまた事実である。
テレワーク商戦
事業の拡大
テレワーク対応のグッズも多数販売されるようになっており、「カメラに散らかった部屋が映らないようにするテントやパーティション」「顔がよく見えるようなリングライト」なども販売されるようになっている。
Zoom用の「バーチャル背景」を提供する企業やデザイナーも急増。
住宅リフォーム業界でも、テレワークスペース設置工事を請け負うところが増えつつある。
アパレル業界でも「テレワーク向きのビジネスウェア」を販売するブランドが急増。
「自室内でゆったり着られ、だらしない印象にならないデザイン」「レフ板的な効果でモニターに映る顔がよく見えるように首元のカラーリングを工夫する」服が続々と売り出されている。
スポットの提供
COVID-19関連の自粛や海外客の減少で困ったホテルや旅館・ラブホテル、カラオケボックスやネットカフェの中には上記の事情で「自宅ではテレワークが難しい」と言う人に向けた「テレワークプラン」を打ち出す所も増えている。
特にネットカフェは完全個室ブースを増やすリフォームをする店舗が急増。
旅行業界やホテル業界では当初はデイユースのテレワークプランが推されていたが、地方のリゾートホテルなどでは「ワーケーション」を推しだした長期滞在プランも増えており、「親の仕事中にスタッフが小さい子供を遊ばせてくれる」プランもある。
大都市部のホテルでも、1週間以上〜1ヶ月の長期滞在プランを打ち出す所も増えている。
スターバックスなどのカフェチェーンでもテレワーク対応の半個室座席を設ける店舗が出ている。
中には「寺ワーク」と銘打った「寺院でのテレワークスペース提供」もある。
運動不足への対応
客が減り実店舗の閉店を余儀なくされたり、フリーのインストラクターの仕事が減って困っているスポーツジム業界では各社ともオンラインフィットネス事業を強化。
テレワークの合間にできる15〜5分程度の短時間プログラムを設けるところも増えている。
また、パーソナルジムやバレエ・ストリート系ジャンルのダンス教室などもオンラインクラスを設けるところがある。
学級閉鎖や部活休止などで肥満がちになる子供達に向けたオンライン体操教室も増加している。
国や自治体のテレワーク推進
大きな首都圏の公園ではwi-fiが整備されつつあることから、公園のベンチや芝生でテレワークを行う人も少しづつ出てきている。
「冷房の冷え感が苦手」「自然の風の中で作業したい」という人にとっては屋内のテレワークよりも都合が良いこともあるようである。
環境省はテレワーク推進の一環として、国立公園内でのwi-fi整備を進めキャンプ場でテレワークができるような政策を発表している。
地方自治体でも、テレワークを前提とした移住者を増やすべく移住支援金などの各種補助を出しているところもある。