概要
植物界裸子植物門マツ綱マツ目ヒノキ科スギ亜科スギ属の木本植物。日本在来の針葉樹で、北海道南部から屋久島まで幅広い地域に分布する。スギの名の由来は、真直ぐの木「直木」から来ていると言われ、その名のとおりまっすぐに伸びた幹ともこもことした樹冠が特徴的である。
地域による品種の多様性に富み、北は秋田杉から南は屋久杉までさまざまな性質・形態の品種が見られる(自然分布は青森県鯵ケ沢が最北端。北海道の道南杉は人工的に植えられたもので特定の品種ではない)。
なお、スギは日本の固有種であり、近縁のタイワンスギが分布する台湾を除いて、海外には近縁(同属)の種が存在しない(ただし材木用として日本のスギが植えられたものはある)。同じスギ亜科にはセコイアなどが該当する。「ヒマラヤスギ」「レバノンスギ」といった植物はあり、これらもスギと並ぶ有用植物であるが、いずれもマツ科であってスギ亜科ではない。また、葉巻の保存箱(ヒュミドール)やギターのボディ材に使われるスペインスギ(セドロ)は中南米産の広葉樹(ムクロジ目センダン科)である。
スギ人工林
スギは日本において、木材の生産のために植栽された人工林を代表する樹種である。建築材などの用途に優れているため、室町時代から盛んに植林が進められてきた。特に戦後は木材需要の高まりにより、雑木林やブナ林などの広葉樹林を伐採して大量のスギが植えられ、地域によっては山野の樹木はほぼスギ一色となった(拡大造林)。これが花粉症(後述)の蔓延のほか生態系の単純化をもたらしたとして批判が多い。
スギやヒノキの人工林が土砂崩れの元凶になっているという批判から、広葉樹に比べて根が浅いというイメージが広がっているが、スギは本来深根性であり、深く根を張る樹種である。スギ人工林でしばしば土砂崩れが起こっているのは、植林される挿し木は実生と違って地中深くに伸びる直根を欠いていることや、枝打ちや間伐などの手入れが行き届かない山林が増えたこと、崩れやすい急斜面など本来スギが不向きな場所にまで無理に植林を行ったことなどが原因であるともいわれる。
用途
- 建築材:名前のとおり木目の通りがまっすぐであるため製材しやすいという利点を持ち、神社・仏閣、城などを建立するために使われてきた。もちろん民家にも一般的に使われる。内装材としても暖かみのある木目が高く評価され、学校や住宅などに好まれる。しかし、心材にはたくさんの水を含んでいるため乾燥させることが難しく、乾いていないスギ材を使って建物をつくると曲がったり狂ったりしてしまう。これが近年スギが建築材として扱いにくいとされ敬遠される理由になっている(そのため近年ではスギ材を薄く切って張り合わせ合板にされることが多い)。
- 食器など:スギ材は固有の香りを放つ。これを生かし、日本酒はしばしばスギ材でつくった樽に入れて熟成させて香りを付ける。またご飯を入れる「おひつ」や、しゃもじなどとして使われることもあるが、香りが付くので好みが分かれることもあるとか。
- 樹皮:屋根を葺くのに用いられてきた。いわゆる「檜皮葺(ひわだぶき)」である。
花粉症
スギと言えばその花粉によってもたらされるアレルギー性疾患の代表格、花粉症でも悪名高い。
これを軽減するため医学界、生物学界、環境保全の面などから様々なアプローチが成されているが、いまだ抜本的な改革には至っていない。
これは戦後の海外からの木材の輸入増加などによって国産材の需要が減少し、扱いの面倒なスギ材の価格が暴落(今や国産スギ材は輸入材より安価である)、植林した人工林が放棄されて手入れがされず荒廃したことにも一因があるとされる。従って林業政策にも花粉症蔓延の責任の一端があると言えるだろう。
なお、本州以南の日本では花粉症といえばスギ・ヒノキのイメージが強いが、北海道やヨーロッパではシラカバやブタクサの花粉症が多く、スギが無くなれば花粉症が解決するというものではない。
苗字
日本人の苗字としても使われている