概要
回虫目アニサキス科のうちアニサキス属(学名:Anisakis)に分類される線虫のこと。食中毒(アニサキス症)の原因寄生虫として知られる。
最終宿主は主にイルカやクジラなど海生哺乳類(種によって異なる)で、成虫はその腸管に棲息する。
卵は排泄物とともに海中へ放出されて孵化し、オキアミなどの甲殻類に寄生して第3期幼虫まで発育する。
食物連鎖上位の魚類やイカ(種によって異なる)を中間宿主とし、その内臓などでさらに成長する。中間宿主が最終宿主に捕食されると、その消化管から体内に侵入して成虫となる。
ヒトの体内では成虫にはなれず、中間宿主でもないため、数日で死ぬか排泄される。また、正露丸の木クレオソートが一定の濃度以上になると死滅することが高知大学の研究で実証されている。
症状
アニサキスがヒトの体内に入る場合、ほとんどは魚の生食が原因である。刺身を食べる我が国では、発症リスクは高く、2022年に保健所の届けがあった食中毒962件のうち、まさに6割がアニサキス症であった。
なお、ヒトがアニサキスに感染した魚を食べたとしても、必ず発症するわけではない。むしろ、ほとんどの場合、何も反応は起こらず、そのまま体内で死滅するか、糞と一緒に排出される。しかし、生きたまま胃や腸などの消化器に到達する(体内に入ってから数時間後)と、激しい腹痛や嘔吐が起こる。
症状が起こった場合、内視鏡手術でアニサキスを摘出するのが最も一般的である。摘出すると速やかに症状が改善する。
腹痛が起こる原因は、アニサキスが胃に突き刺さるためという説が一般的だが、他に即時型のアレルギー反応が原因という説もある。
予防には、冷凍もしくは加熱が重要である。アニサキスそのものは、そこまで頑強な寄生虫ではないため、60度で1分以上の加熱、もしくはマイナス20度で24時間ほど冷凍すれば確実に死滅する。
ただ、それだと日本の法令では「加熱済み」や「解凍」と表示する必要がある。刺身とする場合、加熱や冷凍をすれば、食感は損なわれるため、これを嫌う向きもある。
生食用として魚を消費者に届ける場合は、目視での除去が一般的である。ブラックライトを当てると、光って見えるため分かりやすくなる(なお、どんなブラックライトなら必ず光るわけではない。きちんとアニサキスの発見用に調整されたブラックライトを用いる必要がある)。
また、一部の食品会社では、電気を利用した殺虫方法を実用化しており、この場合も風味は落ちないという。
なお、稀にアニサキスそのものや、アニサキスの分泌物に対するアレルギーを持つ人もいる。こういったアレルギーの場合、加熱してアニサキスが死滅した魚肉であっても、アニサキスの死骸そのものが含まれていると、アニサキス症を発症することがある。イカやサバなどに対してアレルギーを持つという人に対し、より詳細に原因を突き詰めていくと、実はアニサキスアレルギーであったと判明する場合がある。
関連タグ
ダンジョン飯:ファンタジーな世界観なので、そんなことがあるわけ……と思われがちなのだが、しれっと食中毒になる回があったりする。2024年2月15日の午後10時後半あたりから該当エピソードが放送、アニサキスがXのトレンド入りする展開となった。
はたらく細胞:こちらでも食中毒絡みの回に敵として登場。見た目は「ウツボのような顔をしたヘビ」といった趣で、細胞たちに比べてかなり巨大。怪獣のような鳴き声をあげながら胃壁を食い破って大暴れするが、好酸球に討伐された。