双腺綱のうち回虫目に分類される線虫のこと。哺乳類の小腸に寄生する寄生虫である。
人間に寄生するヒト回虫や、魚介類に寄生するアニサキスが有名。
一般に適した宿主の種類が決まっており、ある種に寄生している回虫は他の種には寄生できない。例えばアニサキスはたまに食用の魚介類経由で人間に寄生して腹痛を起こすが、これは人の胃酸に耐えきれずに胃壁から逃げ出そうとするからである。
ヒト回虫の特徴
オスの全長は15〜30cm。メスは20〜35cm。他の線虫と同じ手足や体節など構造はない。
ヒト回虫の(面倒くさい)ライフサイクル
- メスは一日に10万〜25万もの卵を産む。卵は糞便と共に体外に排出される。
- 肥やしなどの形で畑に撒かれた卵は野菜などに付着して次の宿主に食べられるのを待つ。
- 食べられた卵は胃で孵化。そのまま小腸へ向かうが、そこで成虫になるわけではない。幼虫は一旦小腸を抜け出して肝臓へと向かう。
- その後幼虫は肝臓から血管を通って肺に入り、気管から食道を経て再び胃に戻って小腸でやっと成虫になるのである。こんな回りくどいライフサイクルそのものが回虫の名の由来である。
症状
食べ物から栄養を奪う、毒素を出すなどの害があるが、大人にはそれほど深刻な症状をもたらすことはない。子供に多数が寄生すれば大事となる。発育不良、頭痛、めまい、けいれんなどを引き起こす。また本来の寄生場所でない虫垂には入り込めば虫垂炎になるし、幼虫が脳に迷い込んだら命にも関わる可能性がある。
衛生環境が整備された現代においては宿主の数は少ないが、有機栽培の野菜を求める者も少なくないので数自体は減ってはいない。有機栽培の野菜は念入りに洗うか、よく火を通してからいただこう。
寄生虫が免疫系を適度に刺激することでアレルギー症状が抑えられると信じ、実際に回虫やサナダムシを自身にわざと寄生させている研究者も少なくないが、他の学者はこれに否定的である。
登場作品
- 救命戦士ナノセイバー 絶滅危惧種のヒト回虫を寄生させて日本に持ち込んだ研究者から回虫を回収するエピソードがある。