全長1mm程度。堆肥などの中に生息する。大きさが適度に小さい、産卵から数日で成虫になる、餌が大腸菌でよいなどの理由で1960年代あたりからモデル生物として使われだした。研究により現在ではこれだけのことが判っている。
- オスの細胞は1031個。雌雄同体の細胞は959個。(メスは存在しない)
- 発生のプロセスが完全に解明されており、受精卵がどう分裂してどの細胞に成長するかが全て判明している。
- 神経細胞の数は302個。これだけでもちゃんと学習機能を持ち、細胞一つ一つの役割も全て解明されている。
- こいつの研究によりノーベル賞が二度受賞されている。一つは2002年に発生プロセスの解明に。もう一つは2006年に、受精卵にRNAを送り込むことでDNAの一部の機能を止める「RNAi」という技術の確立に。
- 1997年に全ゲノムが解読された。
- 長い事近縁種が発見されず、進化上の位置付けが謎とされていたが、最近石垣島のイチジクから発見された線虫が近縁種と分かり第二のCaenorhabditis属となった。
ガンを嗅ぎ分ける?
2015年、九州大学の研究チームはC.エレガンスに患者の尿からある種のガンの匂いを嗅ぎ分ける能力があることを発見した。日立製作所はこれを元にしたガン診断装置を九大発ベンチャーとともに開発、2020年から発売を開始した。
胎動するバーチャル線虫
民間プロジェクトOpenWormではクラウドファンディングで得られた資金を元にC.エレガンスの全ての生体機能の分子レベルでの工学的再現を試みている。手始めとしてC.エレガンスの302個の神経細胞をエミュレートしてレゴロボットに組み込んで実際の線虫の行動と比較する作業を行っている。最終的には仮想空間内に完全なC.エレガンスモデルを構築することを目標としている。