概要
「ガンダリウム合金」とは、機動戦士ガンダムシリーズに登場する架空の合金(金属材料)である。
軽量かつ頑強な素材として、機動兵器モビルスーツ(MS)の装甲に使われるという設定で知られる。
いわゆるスーパーロボット系のSF作品における「主人公ロボが強いのは超合金ナントカで出来ているから」という説明に、設定としての名称や背景が与えらたもの。
富野監督がGUNDAM CENTURY 164Pのディスカッション内で、作り手側が楽しさを演出するための方法論に絡めて述べた「例えばロボットと言うと恥ずかしいから、モビルスーツと言ってみたという気分を判って欲しいなっていう、これにつきるんですよ」を表す一例だろうか。
用語としての詳細
主役メカの名前を冠しているが、意外なことに用語としての初出はガンダムシリーズ第二作目の機動戦士Ζガンダム。
同作に登場するMSリック・ディアスには
「ガンダリウムγという新素材を採用したのでガンマガンダムと名付けられることになったが、諸事情によって名前をリック・ディアスに変えた」
という設定があり、ここで初めて「ガンダリウム合金」という存在が言及されている。
γはギリシャ文字の三番目にあたるので、一番と二番に相当するαやβもあるんだろうという事になり、後から「初代ガンダムの装甲がガンダリウムα」ということになっていった。
第一作である機動戦士ガンダムの時点では、レギュラーメカであるガンダム、ガンキャノン、ガンタンクの装甲はガンダリウムではなく「ルナ・チタニム」というチタン系っぽい材質だとされており、後のMS大図鑑などで「ガンダリウム合金の原料がルナ・チタニウムである」という形に統合されている。
合金としての詳細
作品世界が広大になったガンダムは、それを支える設定情報もまた膨大であり、発表された資料でも時期や担当スタッフによって解釈が違う、後に整合性を取るため変更が加わるといった事情もあって、断定しきれない部分もあることは御承知おきいただきたい。
ルナ・チタニウム
ガンダリウム合金との関連性は諸説あるが、深く関係している素材なのでここに記載。
ある意味で最も設定が交錯している部分でもある。
名前の由来は、月面あるいは鉱脈用の小惑星ルナツーで採れるから。希少な素材であり、加工も難しいらしい。
名前の通りチタン系の素材っぽいのだが、宇宙のような低重力環境で加工した特殊なチタンなのか、他の素材と合金化した金属材料なのかなど、設定上であまりハッキリしない部分もいくつかある。
上記のように初期の設定ではガンダムの装甲材という扱いだったが、後にガンダリウム合金の設定に組み込まれて「ガンダリウムの材料(のひとつ)」ということになった。
設定によっては「ガンダリウムを作るには月面で採れる高品質のチタンが必要」という言及もあり、大きく言って「宇宙産の特殊なチタニウム」ということらしい。
装甲に超硬スチール合金や超高張力鋼を採用しているとされるジオン公国系MSに対して、ガンダムの防御力が比較にならないほど高い理由の一つが「軽量で頑強なルナ・チタニウムを装甲に採用したから」であり、ザクⅡの主力武器である120mmザクマシンガンをほぼ無傷で防ぐ化物じみた堅さを実現している。
GUNDAM CENTURYにおいては、MSの装甲は「両軍ともに発泡金属、カーボンセラミック、ボロン複合材等をサンドイッチにした複合装甲で、表面に臨界半透膜をコーティング」とされ、この段階ではルナ・チタニウムに関する言及は無い。
GUNDAM NEXT FUTUREでは
「ルナ・チタニウム製のガンプラを創る」というコンセプトのバンダイ公式企画GUNDAM NEXT FUTUREでは、現実の金属精錬や加工の観点からルナ・チタニウムとガンダリウム合金への細かい考察が行われている。
この考察の下敷きとなるルナ・チタニウムは合金素材であり、「加工が難しく高コストだが、耐熱・耐蝕・放射能絶縁性に優れ、公国軍MS超硬スチール装甲に比べ4割も軽量かつ高硬度」と具体的な性質が設定されている。
ルナ・チタニウムを採用したRX-78-2ガンダムは防御力とともに機動性や航続距離も革命的に進歩し多大な戦果を上げたため、この活躍で有効性が証明された「ルナ・チタニウム合金」が、一年戦争終結後にガンダムの名を冠し「ガンダリウム合金」と呼ばれるようになった…というのがGNFにおける公式設定である。
同時に、金属としての性質についてもかなり突っ込んだ考察が明記されている。
GNFのコラムではガンダリウム合金の定義として「諸説ある」と断りつつ
を挙げ、これらを総合した「仮説」として
月で採掘した高純度チタンに、ルナツーで採掘したイットリムを加えて還元精製、酸化イットリウムを生じさせる。低重力下だと比重の違うチタンとイットリウムでも均一に融かし合わせることができるので、酸化物分散強化(ODS)により高い強度を得られる
という製法を提唱している。
結果、「現代の地球上では低重力環境での鋳造なんて再現できんぞ…」という問題が出たものの、粉末状の金属を型取りした後に焼き付けて固めるMetal Injection Moldingという技術を使うことで「粉の状態で混ぜ合わせておけば重力による比重分離が起こらない」という解決策を採用。
完璧な理論再現ではないものの、マジで地球産ガンダリウム合金を製造販売(税込み220,000円)することに成功した。
ガンダリウムα
機動戦士ガンダムU.C.ENGAGEなどで言及されたもので、一年戦争期のガンダムの装甲に使われていたという。
RX78のプラモの説明書などにも記載される公式設定であるため、ルナ・チタニウム関連の設定を吸収した立ち位置になる。
ガンダリウムβ
名前どおりαとγの中間らしいのだが、設定として深く言及した資料が無いので詳細不明。
ガンダリウムγ
設定としての初出。Zガンダムの舞台であるグリプス戦役辺りから、γがガンダリウム合金のスタンダードになったとする説もある。
αが初代ガンダムの装甲材だったという設定と矛盾するが、リック・ディアスのガンプラの説明書では「アクシズがガンダムの装甲材だったルナ・チタニウムを独自に研究し、ガンダリウム系として開発していた」という言及があり、この時点でバージョン3に相当していたので、ギリシャ文字三番目の「ガンマ」の名が与えられた(リック・ディアスの説明書はバンダイの公式サイトで確認可能)。
命名したのはガンダムを開発した連邦軍ではなく、ガンダムを怨敵とするジオン残党だったのである。
説明書では「ガンダムの装甲がルナ・チタニウムであった」と明言しているため、この時点ではアクシズ産のバージョン1~2に相当するのがαとβであるという設定だったことが読み取れる。
バージョン1の「アクシズ製ガンダリウムα」が連邦製ルナ・チタニウムの技術的コピー(同等品)であったと仮定すると、上記のGNFにおける「ガンダムがルナ・チタニウム装甲を採用していたので戦後にガンダリウムと呼ばれ始めた」という設定とも矛盾しない。
初出だけあってか、ガンダリウム合金の中でも設定情報が濃い。
クワトロ・バジーナを名乗っていたシャア・アズナブルが、アナハイム・エレクトロニクスの協力を取り付ける見返りとしてアクシズから地球圏に持ち込んだとされる。
ルナ・チタニウム合金(ガンダリウムα)からレアアース(希土類元素)を省き、比較的採掘しやすいケイ素やマグネシウムで精製を簡略化したほか、生成時の熱制御などを改善したことで全体的に製造しやすく、扱いやすく、性能も向上している。
装甲だけでなくムーバブルフレームの素材にもなるらしく、フレーム強度が上がった事で第三世代MSの実用化が成功するに至った。
ガンダリウムε
エプシロンの名前の通り、エプシィガンダムの装甲や構造材として使われているようだが、詳しい言及は少ない。複雑な構造の推進システムを採用したエプシィは、この素材のおかげで強度を保てているとされる。
Ζ計画を含むアナハイム社製のガンダムはギリシャ文字で開発順を表しているが、素材であるガンダリウムのバージョンとリンクしている訳ではないようで、ガンダリウムΔやガンダリウムΖ以降の新型ガンダリウム合金の存在は今のところ言及されていない。γで完成型になったという解釈もあるほか、Sガンダムのように、装甲材に「ガンダリウムγコンポジット(複合材)」を用いているという設定のMSもあるため、装甲としての活用方法が色々と工夫されていったことが窺える。
宇宙世紀以外の類似設定
ガンダニュウム合金
新機動戦記ガンダムWにおいて、ガンダムをガンダムたらしめる超合金装甲材。詳細はリンク先にて。
ガンダミウム合金
SDガンダムフォースに登場する素材。こちらもガンダムW同様、「ガンダミウムを持つ者こそがガンダム」という設定だが、次元の異なる世界が重なり合っているため、その次元ごとにあり方が異なる。
SF世界のネオトピアでは優れた合金素材で、キャプテンガンダムら優れたモビルディフェンダーを生み出すのに使用されるほか、ワイヤーの材料などにも活用されている。
武者ガンダムや騎士ガンダムに相当する世界はモビルスーツが生命体であるため、その中でも「ガンダミウム細胞」を持っている者こそがガンダムとされる。