キリル文字

きりるもじ

スラブ系言語を表記するのに使われる文字。日本では、ロシア語を通してキリル文字を目にする機会が比較的多いため、ロシア文字とも言われる。

概要

キリル文字とは、主にスラブ語派の言語を表記するのに使われる表音文字（アルファベット）の一種。キリスト教の正教会の神父のキュリロスとメトディオスがスラブ系の民族へ布教する際に、当地の言語を表記するためにギリシア文字から作り出したグラゴル文字から変化したもの。

スターリン時代の政策（ラテン文字やアラビア文字からの切り替え）により、旧ソビエト連邦領内の非スラブ諸語を表記するのにも使われている。また、ソ連の衛星国であったモンゴルでも、スターリン時代にモンゴル文字から切り替えられた（中国領の内モンゴルでは、そのままモンゴル文字を使用）。

大文字と小文字の2系列が存在するが、小文字の大部分は大文字を小さくしただけのものであり、ローマ字のように大文字と小文字の形が著しく異なる例は少ない。

また、ラテン語より発音の種類が多いスラブ語派のために作られた字であるため、ラテン文字より字の数も多い（字の数は言語により異なる）。

現在もキリル文字を使っている言語

東スラブ	ロシア語	ウクライナ語	ベラルーシ語
南スラブ	ブルガリア語	マケドニア語	セルビア語
非スラブ語	モンゴル語	カザフ語	キルギス語

ソ連時代にキリル文字化された非スラブ語は、ソ連崩壊後ラテン文字・アラビア文字・モンゴル文字への切り替えが議論されている。また、スラブ語派でも西スラブ系（ポーランド語やチェコ語、スロバキア語）や南スラブ系の一部（クロアチア語、スロベニア語）は、正教ではなくカトリックが布教されたため、ラテン文字（ローマ字）なので注意。

偽キリル文字

ラテン文字の中にキリル文字を入れる、言葉遊びの一種。

テトリス→「TETЯIS」（Яは「IA」から発生した字であり、「R」とは関係ない）など。

文字一覧と読み方

以下は、スラブ系言語で使用する物。現用されない文字は除く。

母音

大文字	小文字	読み方
А	а	アー
О	о	オー
У	у	ウー
Ы	ы	ウィー
Э	э	エー

大文字	小文字	読み方
Е	е	イェー
Ё	ё	ヨー
И	и	イー
Ю	ю	ユー
Я	я	ヤー

子音

大文字	小文字	読み方
Б	б	ベー
В	в	ヴェー
Г	г	ゲー
Д	д	デー
Ж	ж	ジェー
З	з	ゼー
Й	й	イー・クラートコエ
Л	л	エル
М	м	エム
Н	н	エヌ
Р	р	エル

大文字	小文字	読み方
К	к	カー
П	п	ぺー
С	с	エス
Т	т	テー
Ф	ф	エフ
Х	х	ハー
Ц	ц	ツェー
Ч	ч	チェー
Ш	ш	シャー
Щ	щ	シシャー

その他

大文字	小文字	読み方
Ъ	ъ	トヴョールドィイ・ズナーク
Ь	ь	ミャーフキー・ズナーク

関連イラスト

関連タグ

文字 言葉 言語 スラヴ語派