概要
アスラは元々はデーヴァ神族に対し、法や天則を司り呪力や幻力(マーヤー)を持つ神への呼び名でヴァルナやルドラがこれに該当する。
後にデーヴァ信仰の隆盛に伴って悪魔とみなされ、ダイティヤやダーナヴァと共に神の敵対者として扱われるようになった。
ただし、アスラと言われる存在全てが悪というわけではなく、善政を布いたり民への施しを行う者もいる。
アスラという言葉は「主」を意味するアヴェスター語のアフラと語源が同一であり、ゾロアスター教では逆にアフラ(アスラ)が善神にダエーワ(デーヴァ)が悪神になり、上記のヴァルナが光明、英知を意味するマズダーの敬称を与えられて最高神アフラ・マズダーとなった。
またアスラという語の語源解釈にはいくつかの例があり、「存在する、ある」を意味する動詞アス(as)、「呼吸、生気」を意味するアシュ(asu)、「輝く」を意味するスヴァル(svar)、「神」を意味するスラ(sura)に否定形aを加えてア-スラ(神ではないもの)など多数の説がある。
仏教にとりいれられた後は阿修羅と音写し、非天、不端正と訳された。
アスラのルーツをアッシリアの主神アッシュルに、デーヴァをバビロンのマルドゥクに関連付ける説が存在するが、いわゆるトンデモ説である。
そもそも都市神であったアッシュルが多くの神格と習合し最高神に登りつめたのは、アッシリアの台頭が進んだBC9頃からアッシリアがバビロンを制圧したBC7の時代であり、それよりも時代が先立つアーリア人の民族移動やアヴェスターとリグ・ヴェーダの成立年、そしてゾロアスター教の成立過程と年代的に噛み合わないのである。
神話に登場する主なアスラ
- ヴァルナ、ミトラ、ルドラ・・・「リグ・ヴェーダ」においてアスラの代表とされる。
- アンダカ・・・プラーナ文献に登場するアスラ。シヴァと敵対し、文献によっては殺されたり命を救われたりする。
- ヴィローシャナ・・・ウパニシャッドにおいてアスラの代表として、プラジャーパティに師事する。
- ヴリトラ・・・叙事詩やプラーナ文献等でアスラの長とみなされる。
- シュムバ、ニシュムバ・・・「マールカンデーヤ・プラーナ」に登場するアスラの兄弟。
- マダ・・・チヤヴァナの苦行から生まれたアスラ。アシュヴィン双神への供養を妨害したインドラに襲いかかった。
- マヒシャ・・・ドゥルガーと戦ったアスラの王。苦行により“女以外に殺せない”力を持つ。
- マハーバリ・・・プラーナ文献に登場する、苦行により三界を支配した善良なアスラの王。
- ラーフ(ケートゥ)・・・乳海攪拌の際にアムリタで不死となり、日食と月食をもたらすアスラ。
創作物に登場するアスラ
アスラとして
ファイナルファンタジー4の召喚獣として登場
女神転生シリーズの悪魔としてアスラが各種作品に登場(詳細は後述)
作品名として
上記の1が該当のゲームタイトル⇒ルドラの秘宝
他に該当があれば追記お願いします
女神転生シリーズのアスラ
初出はFC「女神転生」。このころは種族“邪神”の悪魔で、読みが『アシュラ』。
銀座の鈴木カンパニーの地下に広がるダンジョンで主人公の行く手を阻むが、ルシファーのよびかけによって本来の姿魔神アフラマズダの姿に戻る。
後の「真・女神転生」シリーズでも、天魔アスラおうがヴィローシャナ(大日如来)と同一視されるなど、アスラはシリーズにおいて代々初期作品の系譜をたどっている。
一方で悪魔本来の姿として、「真・女神転生SJ」では六道の阿修羅道さながらに弱肉強食の世界でこそ見出される「美しいカタチ」を至上とする魔王アスラのような悪魔も登場する。また「デジタルデビルサーガ」の戦うために生まれ戦うために死んでいく“アスラAI”や強者を選抜する人工の煉獄“ジャンクヤード”のような設定・世界観として取り上げられる例もある。