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キエフの幽霊

きえふのゆうれい

ロシア軍のウクライナ侵攻で活躍したとされるウクライナ空軍の架空エースパイロット。
目次 [非表示]

概要編集

キエフの幽霊とは、2022年ウクライナ侵攻ロシア軍機を多数撃墜したとされるウクライナ空軍の架空エースパイロットの通称である。

MiG-29戦闘機を愛機にしているとされていた。


なお、キエフの幽霊という呼称は、英語の「Ghost of Kyiv」を和訳したものであるため、後述するウクライナ側からの発表があるまでは、「キエフの亡霊」と和訳されることもあり、他国では「キエフの化物」「キエフの怪人」と紹介する所もあった。



始まり編集

侵攻初期にウクライナ当局が各メディアにて「偉大なエースパイロットが誕生した」と紹介した、伝える所では迫りくるロシア空軍の大群に立ち向かった1人のウクライナ人パイロットが次々とロシア軍機を撃墜し、ウクライナを守ったと言うモノであった。


彼の戦果として伝えられているのは、侵攻初日からウクライナ当局が架空人物と認めるまでの戦闘におけるものであり、当然ながら撃墜したのはすべてロシア軍機だとされた。

以下は侵攻初日にキエフの幽霊が撃墜したと発表された戦果。


また、開戦5日目には撃墜数が10機以上に達し、その後は情報媒体によってブレがあるが4月30日までで最大54機を撃墜したスーパーエースだとされた。


初期SNSやメディアでの反応編集

SNS上で噂が早く広まり始め、侵攻から3日後にはウクライナ国防省がその存在を大きく喧伝した事により爆発的な話題を呼んだ。

キエフ近郊上空とされる場所にてキエフの幽霊がロシア軍機を追い詰め撃墜する動画も多く拡散され話題を呼んだ。

ウクライナ前大統領であるペトロ・ポロシェンコはパイロットの写真を公開して「キエフの幽霊」の実在を主張した。

また各国に滞在しているウクライナ大使もツイッターにて積極的に実在と活躍を肯定していた。

ウクライナ国防省もキエフの幽霊は復員したベテラン兵であると紹介したりした。


だが拡散され話題になると共に撃墜動画をゲーム動画だと指摘する人や、疑いの目を向けるメディアが増えていった。



中期編集

動画や写真等が話題を呼ぶとともに様々な疑惑の目がキエフの幽霊に向けられる様になった。

例に上げるとロシア軍機撃墜動画はビデオゲームであるDCSのゲーム場面合成であると指摘され、ポロシェンコが紹介した写真は2019年にヘルメットの試験風景として撮影されたものの使い回しだと指摘された。

SNSでは連日キエフの幽霊がロシア軍機を撃墜しており未だに話題を呼んでいたが、あまりにも早すぎる撃墜戦果の上昇への疑念が増えた、ウクライナ国防省はキエフの幽霊とするパイロット写真や「ハロー侵略者!お前の魂を狩るぜ!」という本人のコメントを紹介したりして疑念払拭へ努めていた。

またウクライナの興行師ポドヴェザ氏はキエフの幽霊応援歌を制作し実際に公開演奏された。


この時期で大きく報じられた報道や記事として首都に向かってくるカリブル巡航ミサイルをキエフの幽霊が駆けつけて撃墜したモノや、イジューム守備隊を爆撃しようとするロシア軍機をキエフの幽霊が迎撃し阻止した等というモノがある。


日本語での記事では航空軍事評論家の関 賢太郎氏の乗りものニュースに『「キエフの幽霊」って何者? ウクライナ空軍に1日で6機撃墜のエースパイロット誕生か』という記事が掲載された。

その中で「『キエフの幽霊』は文字通り幽霊に過ぎないと思われます。」と否定しつつも「見方を変えるならば、ウクライナによる防空戦闘そのものが『キエフの幽霊』であり、その象徴となったともいえます。」と述べて最後を「ひょっとしたら我々は、500年後や1000年後に「ロビン・フッド」や「スサノオ」、実在の人物ながら虚実入り混じった「ジャンヌダルク」や「弁慶」などと並び称される、空の英雄伝説の誕生を目撃しているのかもしれません。」という言葉で締めくくった。




終わり編集

2022年4月30日にウクライナ当局がイギリスタイムスがキエフの幽霊だと報じたタラバルカ氏はそうでは無い事、そもそも「キエフの幽霊」は架空人物であり、これは士気高揚の為のプロパガンダであったと認めた。

同時にウクライナ国防省や40戦術航空旅団等のウクライナ空軍は「彼は我々全てのイメージであり、ウクライナを守るパイロット全てが『キエフの幽霊』なのだ」とコメントした。

最後にウクライナ国防省が「希望的観測だけで話を膨らませてはいけない」「嘘を広める前に嘘かどうか判断できるようにしなさい」と国民に沈静化を呼びかけてキエフの幽霊騒動は終了した。


海外メディアもウクライナ当局が認めた事により「幽霊が死んだ」「ウクライナ神話が1つ終わった」等と紹介した。




嘘ではあったが……編集

結果的に「キエフの幽霊」は嘘ではあった、だがこの「嘘」は必要だったとするメディアや人物は多い。

ミリタリーコムでは、キエフの幽霊は「ウクライナがロシアの征服に抵抗するために国民を結集させようとしている中、信じられないほど役立つものである」と述べたり、イスラエルタイムスも「抵抗のイメージとして必要」と言い、バズフィードニュースも「ウクライナの希望になった」と肯定した。

英国BBCも「困難時の士気向上に役立った」と延べ、一部では「キエフの幽霊」を侵略に対するウクライナ空軍全体の象徴として扱おうとする所も出ている。




余波編集

そんな架空人物の「キエフの幽霊」だが彼の存在はその後も影響があった。

ウクライナ国内でバッジが発行されたり、絵画や彫刻や壁画が次々と登場、プラモデルも販売された。

ウクライナ国外でも花輪が作られたり航空ゲームではキエフの幽霊なりきりスキンも登場、日本でもキエフの幽霊同人誌が発行されウクライナにも逆輸入された(後述)

2023年8月にも彼の名前は登場、モデルとなった人物が死んだとウクライナが追悼した。

(戦闘任務中のL39練習機2機が空中衝突しパイロットら3人が死亡し、そこにはピルシュチコフ少佐が含まれていた。彼は開戦直後から活躍したパイロットとして名が知られ、BBC等の西側メディアの取材にも応じていたパイロットであった。)



2023年末でも彼の名前は時折出ており、彼の活動と活躍はもう少し続きそうだ。




同人誌「キエフの幽霊」編集

キエフの幽霊コミティア140新刊「キエフの幽霊」サンプル

松田重工による同人作品。

ハルキウ州の「ラノック出版社」の社長の目に留まり、ウクライナ語での出版が実現。

戦時下のウクライナでベストセラーとなっている。


関連イラスト編集

Привид Києва (Ghost of Kyiv)cool story

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