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概要編集

『キリンジゲート』は、執筆は「ウヒョ助」こと塚脇永久と闘牌シーン監修の渋川難波による麻雀漫画

2018年から竹書房の『近代麻雀』にて連載されており、『鉄鳴きの麒麟児』『鉄鳴きの麒麟児 歌舞伎町制圧編』に続く「麒麟児シリーズ」第3弾である。

前2作が麻雀中級者以上を対象にしルールも東風戦メインだったのが、今作からは初心者講座も兼ね、さらにMリーグ発足に合わせて赤ドラ入りの半荘戦とルールをほぼMリーグに合わせているのが特徴。

塚脇氏が「今回は初心者講座を目指した」というように、『打姫オバカミーコ』と共にこれから麻雀を憶えようとする方にもお勧めである。


単行本7巻が発売された2022年12月に塚脇氏は「次の第8巻で完結です、『麒麟児シリーズ』もこれで完結です」と自身のTwitterで公言していたが、近代麻雀連載は2023年5月号にて最終回を迎え、第8巻も2023年6月1日発売、完結。


ストーリー編集

警察から殺人容疑で追われる少女、葉隠杏(はがくれあん)は雇い主を裏切り逃亡した代打ちの大悟と間違われたことをきっかけに、ヤクザからも追われることとなる。

ヤクザの一人が発した言葉を頼りに駆け込んだ先で彼らの襲撃に遭い、逃げ惑う中で代打ちとなった桐谷鈴司(きりたにりんじ)と出会い、彼の身を挺した行動によって一命を取り留める。傷を負った鈴司と共に代打ちの世界へ飛び込んだ杏は、騒ぎを聞き駆けつけた火骨に大悟の使っていたグローブを渡されると共にフロントへ行き、人を呼んで彼を助けるよう叫ばれ、方向も分からぬまま駆け出すこととなった。

自身の状況を嘆く中で義経と出会い、彼の策にはまり右も左も分からないまま代打ちとして卓につくこととなった杏は、様々な課題を前に思い悩むものの、一刻も早く鈴司を助けるために、ルールすら全く知らない麻雀と向き合い、勝利を勝ち取ることを決意する。


登場人物編集

桐谷鈴司編集

本作および『麒麟児シリーズ』を通しての主人公(トップ画像左のキャラ)。

作中のネット麻雀では「キリンジパパ」のID名で「一度も降段せずに十段となった最初の雀士」として他のプレイヤーたちから尊敬され「ネト麻の神」と呼ばれるカリスマ的存在。と共に、未だ誰も到達したことのない「天竜位」を獲得出来るかもしれない最初の人物として期待を寄せてられている。

が、その正体は仕事も行かなくなり引きこもってネット麻雀にのめり込んでいたのを元妻・華子に愛想を尽かされ離婚されてしまった30代の男。しかし小梅への養育費も払えなくなったのをきっかけに、小梅へのプレゼントを買うために歌舞伎町の闇金・白蛇ファイナンスを訪れた際「麻雀が得意なら何故雀荘で稼がないんだ?」と言われ、借りた金を握りしめ雀荘へ。僅差で辛くも勝利するものの「やっぱりネト麻とリアルは違う」とそれまで信じてなかったツキや流れの存在も重視するようになり、本格的に代打ちの道を歩む事になる。

本作では億単位の手術代と執刀医に話を持ち掛けるきっかけを得るため、観音寺カノンと最強の代打ち・魔人の討伐を目指す。真摯に麻雀と向き合う一方で、華子と娘の小梅のために身を挺して戦う愛情深い面も持ち合わせている。

『鉄鳴きの麒麟児』の頃は精神的に脆い部分も見せていたが、立ち直りは非常に早い方で、そして立ち直るたびに精神的弱さを克服していく。


「鉄鳴き」と呼ばれる的確な鳴き打法が武器。また、自身が鳴き麻雀主体なためか、対局者の鳴きから聴牌形や待ち牌を読むのが非常に上手い。ネト麻でしか打ってなかった頃はレートが下がるのを防ぐ為「最下位さえ回避出来ればいい」という超守備型だったが、代打ちになってからは「リアルじゃオーラスが終わった時点で点数が誰よりも高くないと意味がない」と打点の高さも重視するようになった。


葉隠杏編集

本作のもう一人の主人公(トップ画像手前の人物)。警察から殺人容疑、ヤクザからは裏切りと資金の持ち逃げをした代打ち・大悟と間違われ追われる身の中で麻雀と出会い手探りでルールを把握することとなった少女。

対局の中で学んだ鳴き麻雀の技術と鈴司たちとの出会いを通して、魔人とカノンへの討伐を志すと共に自身の道を切り開くことを決意する。前向きポジティブで挑戦的な性格をしているものの、自身の過去に囚われることが多く、それ故に自身の身を困難な状況に追い込んでしまう面を持ち合わせている。

鈴司や鮫州、間黒も驚くセンスの良さと驚愕の吸収力を見せる杏は、代打ちの世界で打ち続けることを決意する。ネット麻雀では本名を用いて戦っており、相手を下ろさせてテンパイ料を捲り上げる打法で五段に昇段している。


鮫州(さめず)編集

福老組に所属する痣だらけの顔をした麻雀打ちの男性。

仲間を裏切り福老組の資金を持ち逃げした大悟を追う中で、人違いから杏を捕えてしまう。女と分かった以降は、様々な方法を用いて彼女をアシストし元の世界へ戻そうと努めつつも麻雀を打つ事になる。

かつて大悟に魔人の裏をかく通しのサインと話を持ちかけた上で勝負に臨ませたものの、オーラスで裏切られ大悟と間黒と共に敗北を喫し、間黒と共に罰を受け右手の指を失うこととなった。


桐谷小梅(きりたにこうめ)編集

鈴司と華子の間に産まれた5歳の少女。

本作では入院中の鈴司に代わって月子が面倒を見る形で、彼女と咲代の元に預けられている。

実は瞬間記憶能力の持ち主で、作中では一瞬だけ開けた手牌の並びからシャンテン数を計算する、下家の杏のツモ牌を判断する形で活用する様子が描かれている。ネット麻雀では「ニワトリ」のID名を持つ七段のプレイヤーとしてカノンとの対局に参加した。


松原咲代・月子(まつばらさくよ・つきこ)編集

三猿駅前商店街に居を構えている女性達。

咲代はかつて「昭和の魔人」と呼ばれた剛腕プロ雀士・松原万次郎の妻で結婚当時は「歌舞伎町に咲く一番美しい薔薇」とさえ呼ばれた美貌の女流雀士だったが、今はかなり肥満している。雀荘を経営しており、月子は万次郎と咲代の娘。

女流雀士時代は下家が鳴きたがっている牌を徹底的に絞ってチーをさせない事から「キカザルの咲代」とも呼ばれていた。鈴司との初対決では自身の揺さぶりにも全く動じなかった鈴司を見た咲代は、かつて万次郎が言っていた「麒麟児だ」と確信する。

今作では鈴司に代わり自宅で小梅を預かり面倒を見ていることが、本人の口から明かされている。作中では麻雀牌を用いた遊びと対局を通して、杏に小梅が瞬間記憶能力を持っているのを説明した。


魔人編集

白髪やその強さから「白い魔人」と呼ばれる無敗の麻雀打ちの男性。

実は「昭和の魔人」と呼ばれた剛腕プロ雀士・松原万次郎の最初の弟子で、魔人を名乗っているのはその為。月子とは夫婦だった。同じく万次郎の弟子だったプロ・豪野武(ごうのたけし)は「最初の弟子は麻雀が嫌いになって逃げだようだ」と語っている。

彼を倒すことが全ての代打ちの夢であり、勝利を収めたあかつきには億単位の賞金が手に入ることが鈴司の口から語られており、打倒・魔人が今作における鈴司の目的である。

パトロンから「HAKU」という浮浪児時代に付けられた名前をID名として用いてネット麻雀を打たされていたが(最初に十段になったのは魔人)、天竜位に到達することが出来ずギャンブルの世界へ逃げ込んだ過去を持つ。

小梅同様に瞬間記憶能力を持ち、ツモ切りか手出しかなどを瞬発的に記憶したものを脳内で再生し細部まで思い出すことが出来、それを用いて勝利し続けている一方で、その能力故に火事で自身の娘を失った過去に苦しめられている。


天須鉄男(あますてつお)編集

「女神に愛された男」の通り名を持つ広島弁の男性。かつて鈴司と歌舞伎町で戦った相手の一人であり、彼からは自身と互角の実力の持ち主と評されている。作中で親の倍満や緑一色を和了る描写から、豪快な打ち手であることが示されている。現在は自身の過去と関わりの深い結ともう一度会うため、極坂の元で代打ちとして働いている。


結(ゆい)編集

魔人の愛人を務める女性。

鉄男の過去を知る人物で、鉄男にとっては姉代わりだった。彼のことを誰よりも運が太くたくましい子と評している。


有野潮音(ありのしおね)編集

「蟻の王」のID名の医者。八段。シリーズ第一作『鉄鳴きの麒麟児』では華子に惚れて結婚したいと考えており、鈴司を「唯一の取り柄」の麻雀で叩きのめす事で、華子を諦めさせようとしていた。


観音寺カノン編集

ネット麻雀で「カノン・G」のID名を持ち、初めてたった一ヶ月で九段まで上り詰めた。麻雀だけでなく将棋、囲碁、チェス、あらゆるネット対戦ゲームでトップになり「運営のAIでは?」と陰口すら叩かれる明晰な頭脳と強さを誇り、「最強AI」と評されている少女。左手首にはおびただしい数のリスカの痕がある。

誰よりも早く天竜位を獲得した後、自ら命を絶とうとしていることが有野の口から明かされている。杏からキリンジパパの名前を出されたことをきっかけに鈴司との対局に臨むものの、彼のトリッキーな「鉄鳴き」と聴牌読みの前に敗北を喫する。その後日を改め再度迎えた鈴司との対局にて自身の着順に関わらず命を絶つ旨を有野に伝えている。自身の誕生日に姿を現さなかった父・観音寺三郎から彼を探して車を飛ばし命を落とした自身の母と彼女の行動を咎められた過去をきっかけに父に失望し、自ら命を絶つことを通して三郎への報復を行おうとしていることが彼女の回想の中で描かれている。


間黒千洋(まぐろちひろ)編集

どんなに沈んだ状態からでも一発で大物手を和了したちまちトップに浮上する様を表した「海底火山」の通り名を持つ、白鯨組に所属する代打ちの男性。

魔人への挑戦権を賭けた福老組との対決に大悟(杏)を指名し、自身の勝利と共に大悟を殺害することを目論む形で登場。必要牌がどれだけ山に残っているかを読む「山読みの天才」と評価されている。基本は面前の打ち方と周囲のペースに飲み込まれない冷静な思考をもって大物手を和了り、杏と鮫洲を追い詰める。

かつて大悟と魔人に挑んだ際に通しのサインを完全に見抜かれていることに気付き、イカサマに頼ろうとした時点で負けだと大悟を心の中で非難していた。その後自身の勝利を追い求めた大悟によって共に敗北を喫し、逃亡した彼の分の罰を背負わされ左腕を切り落されたことをきっかけに、大悟に対し強い恨みを抱くこととなった。

勝負の最中に自分のアガリに素直に感心したりする杏を見ていく内に大悟とは別人と気づき、麻雀憶えたての杏が自分と互角に渡り合ったことで杏を「未完の大器」と評価し、「この子を一人前に育てあげることが、大悟への何よりの復讐になる」と考えるようになる。


関連タグ編集

近代麻雀 麻雀漫画

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