概要
いわゆる2chオカルト板に投稿されたもの、いわゆる洒落怖の話の内の一つである。
また、その中に登場する一辺20cmほどの正六面体の木製の箱の形をした呪物の名称。
あらすじ
ある日、自宅で仲間内での飲み会を開いたA(俺)。
その飲み会にSによって持ち込まれた『納屋から見つかったパズルっぽい木製の箱』だが、その場に居たAの中学からの付き合いである神社の息子のMによって、それが極めて危険な呪物である『コトリバコ』であることが判明する。『コトリバコ』は急いで対処しなければその場にいる人物たちにも被害が出てしまうモノであるため、Mは不慣れではあるものの電話で父親に連絡を取りながら呪いを払う儀式を執り行う。その結果、既に呪いを受けていたSの解呪と『コトリバコ』そのものを祓うことに成功した。
Mの尽力でSが無事に解呪された後日、A(俺)は地元に伝わる『コトリバコ』と自身のルーツに関わる隠された歴史を知る。
『コトリバコ』
見た目は木で出来たパーツを組み合わせた、立体パズルのような箱。
寄木細工をイメージすれば分かりやすいか。
非人道的な手法により強力な『女子供を殺す呪い』を込めた呪物である。
作中で呪物としての『コトリバコ』が最初に生み出されたのがいつかは定かでは無いが、A(俺)がMなどから聞いた限りでは1860年代後半頃だという。
当時、この地域は周囲から酷い差別・迫害を受けている部落(※)があった。
※1、元の投稿の中では「便宜上ここでは部落と書きますが、実際の話の中ではもっとひどい言葉でした」とのこと。この記事でもそれに倣い『部落』と表記する。
※2、この『部落』がどこまでの範囲かは不明。
コトリバコを持ち込んだSの実家の近くのみの話か、A(俺)やMの実家までをも含むかどうかは分からない。
この部落に、1860年代後半の隠岐の反乱(隠岐騒動のことだと思われるが作中ではこう称される)で反乱を起こした側に属する男(AA)が一人落ち延びてきた。
部落の人間は、これ以上の厄介事を抱えたら迫害がさらに酷くなると考え、男を殺そうとしたが、男は「命を助けてくれたら、武器をやる」と取引を申し出た。
その武器というのが、他ならぬ『コトリバコ』の作り方であった。
その『箱』を作るには、あまりに凄惨で非人道的な行いに手を染める必要があった。
しかし、迫害から逃れる為にその部落の人間達は『箱』を作った。
そして最初に作られたコトリバコは部落へ差別を行っていた者たちの元へと送り込まれ、わずか2週間足らずで庄屋の家の女が1人と子供が15人、血反吐を吐いて苦しみ抜いて死んだ。
この殺戮劇をもって、部落は周囲の全ての地域に伝えた。
「今後一切部落に関わらないこと」「放っておいて欲しいこと」「今までの怨みを許すことは出来ないが、放っておいてくれれば何もしないということ」「これらを守ってくれるのなら、他所へ仕事に出ている部落の者も、今後そこへ行くこともしないということ」「このことに仕返しをすれば、この呪いを再び振りまくということ」「送った箱は直ちに部落に返すこと」「なぜ放置するのか、その理由は広めないこと。ただ放置することだけを徹底すること」「この箱はこれからも作り続けること、既に箱は7つ存在していること」と。
この時点で箱が7つあったことはハッタリだった可能性がある。
こうして13年にわたってコトリバコは作られ、使われ、最終的に失敗せず完成した物だけでも16個の箱が作られたある時。
部落の中で、子供が知らずに持ち出してしまい、家に持ち帰ったその子を含めた家中の女と子供がその日の内に全員死亡する惨劇が起きた。
ひとつ間違えれば自分たち自身でも制御出来ない諸刃の剣である事を改めて思い知った部落の人間は箱の処分を試みるため、近くの地域の神社に持ち込んだ。
しかし、呪いはあまりに強すぎた。
AAは「箱は年数が経つごとに弱っていくが、手に余って処分する際には必ず特定の神(作中では明かされていない)を祀る神社で処分すること」と伝えていた。
その場で祓う事ができないと判断した当時の神主(Mの祖先)は、箱1つごとに担当グループを設定し、一定年数ごとに持ち回りで保管して呪いが薄まるまでの時間を稼ぐことを提案した。
神主と住民たちは持ち回りを決める際にとある策を練った。
それはどのグループがどの箱を持っているか分からなくすること。
箱ごとに浄化までの年数が異なるからである。
グループの代表者は各グループに箱を持ち帰った後に殺された。
「どのグループがどの箱を持ち、その箱が浄化までに何年かかるか」は神社のみが知ることとなった。
現代までに大多数の箱は解体が完了していたが、「チッポウ」と呼ばれる呪いが強い物はまだそれが済んでおらず、作中の時点で発見されたと言われているものもその一つである。
M曰く、今回祓ったモノを除いて残る箱は2つらしい。チッポウが2つ。
呪いをかける手順
①寄せ木細工等の見た目のよいカラクリ箱の中に、動物の雌の血を入れて満たす
②間引いた子供の死体の一部を入れる
③決して開けられないよう厳重な封をする
④殺したい人物に渡し、もっともらしい理由をつけて身近に置かせる
⑤呪われた者は血を吐き、苦しみ悶えながら死ぬ
この呪いは「呪う対象の一族を根絶やしにする」事を目的としているらしく、呪いを受けるのは「幼い子供」と「子供を産むことができる女性」に限られる。
ある程度以上の年齢の男性と、高齢で閉経している女性には効果が無い。
しかし、効果がある人物が呪いを受けると、内臓が少しずつ捻じれて千切れて、血反吐を吐いて死んでいくという。
なお、何人の子供を使用するかによって呪いの強さが大きく変化するらしく、
一人から順に「イッポウ」「ニホウ」「サンポウ」「シホウ」「ゴホウ」「ロッポウ」「チッポウ(シッポウ)」「ハッカイ」という順番で名前が変わっていき、呪いも強力になっていく。
特に「ハッカイ」は非常に危険な代物であり、呪う側も命を落とす危険がある。呪詛を伝えた人物が二度と作ってはならないと念を押した上で渡したとされる。
登場人物
俺/A(投稿主)
男性。『コトリバコ』の語り部。
30歳手前(Mが29歳と作中で語られているので同級生の可能性が高いか)。
霊感は無い。
自宅にMとSとKを招いた飲み会の場で超常的な出来事に遭遇する。
単なる傍観者的語り部かと思いきや、後述のAAの存在により主人公的ポジションに返り咲く。
AAと同じ苗字であり、明言こそされていないが子孫の可能性がある。
M
男性。『俺/A』の中学時代からの友達。29歳。
代々地元で大きめな神社の神職を務める家系の息子。霊感が強い。
普段は一般の仕事をしているが、正月や結婚式などで忙しい時は実家を手伝っている。
飲み会の場にSが持ち込んだ箱が呪物だと気がつき、その場で父親に連絡。
自身の血を使用して『コトリバコ』とSの解呪に成功する。
作中のセリフから、彼の祖父が超常に関する能力が高いことが窺える。
S
女性。言わばこの話の発端。飲み会にやって来た。
実家の解体予定の納屋で見つけた木製の箱が『コトリバコ』だった。
作中の描写から実家は被差別集落にある模様。
「自分が持ち込んでしまった呪物に呪われてヒーローに助けられる」という要素だけを見ればヒロイン的ポジションだが、ヒーローなMの彼女はKである。
K
女性。Mの彼女。飲み会にやって来た。
その場に同席はしているものの、悲しいほどにほとんど出番がない。
この話のヒーローであるMの彼女であるため、本来ならヒロイン的ポジションのはずだが空気である。
J
男性。Sの祖父の知り合いの老人。
元々今回飲み会の場に持ち込まれたコトリバコはSの実家とJの家ともう一つの家で持ち回りで保管していた。
本来であればSの祖父が死亡した際、Sの実家から次にコトリバコを引き継ぐのはJの家。
しかしJはSの祖父が亡くなり、Sの実家にコトリバコのことを知る人間がいなくなったことでもう一つの家と共謀し、口を噤んでコトリバコを引き継ぐことをやめた。
それは自分の家にコトリバコが来ることを恐怖したからである。
その結果、Sの実家にコトリバコが留まり続けることとなった。
AA
男性。Aと同じ苗字。
作中の描写からAの先祖の可能性がある。
隠岐騒動(作中では『隠岐の島での反乱』と称される)の反乱側の一人。
反乱の平定後にA達の地元へと逃げ延び、助命の代わりにコトリバコの作り方を教えた。
「作り方を聞いてからやめてもいい、そして殺してくれてもいい」「やり遂げたら自分も命を絶つが、それでもやらなければならないことがある」と住民に伝えた。覚悟ガン決まり勢。
コトリバコの作り方を教えて作らせた後、最も強い力を持つハッカイを持っていずこかへと姿を消した。
AA自身が術師なのか、術師から作り方を教わっただけなのかは不明。
参考・注意
箱の発祥・伝承について、本編内で島根県の隠岐、中国山地の山間部と表現されているが、該当の地域にコトリバコの伝承はない。隠岐騒動に関する解釈にも若干難がある。
昨今では『コトリバコ』の名前が独り歩きしているが、『コトリバコ』と言う名称自体が2ちゃんねる・オカルト超常現象板の書き込みが初出である。
オカルトと科学が分離していなかった時代には日本全土にこう言った呪物信仰があってもおかしくはなく、呪物としてであれば『人体の一部や血を木製の箱に詰めて呪いとする』という発想は珍しくもないだろう。
元の投稿はあくまで読み物であり、あくまでフィクションであるということを忘れてはいけないだろう。
関連項目
Occultic;Nine:本編内に登場。
裏世界ピクニック:本編内に登場。ファイル8「箱の中の小鳥」にて、呪物としてのコトリバコが登場した。強力な呪物であると同時に、「子取り」と「小鳥」の両方の意味が込められた存在になっている。
樹海村:劇中に登場。本作のキーアイテムとなっている。
呪術廻戦:ノベル版に登場した居酒屋の名前。縁起が悪いと作中でも言及されていた。なお、劇中には『獄門疆』というコトリバコを元にしたと思われる箱型の呪物が登場する。
外部リンク
コミックパンダ:この話を題材とした漫画動画の前編と後編、そのルーツと思しき話やイタズラのつもりで偽コトリバコを作ったらえらい事になっちゃった話の漫画動画がある。