概要
「禁后」とは、2chオカルト板にて紹介された「怖い話」の一つである。
元は2009年に、あるホラー系サイト(現在は閉鎖)に掲載された怪異の体験談であり、それが2chに転載された事から有名になった。
あらすじ
前編(体験談 2009年2月11日投稿)
田舎町に住む投稿者は、複数の友人とともにある場所へ探検に向かう。
ある場所とは、町はずれにたたずむ、玄関の無い「空き家」。この空き家に関しては、大人たちは話題に出す事も許さず、近づくなと言うのみ。
しかし、投稿者たちはまだ子供だった。投稿者の他、A君、B君、C君、D子、Dの妹の、合計6人で向かい、一階の窓ガラスを割り、内部に侵入。
一階内部は代り映えしなかったが、奥に「鏡台」が一つ、そしてその前に「髪の毛」が棒に立てかけられていた。
そして、D子の妹の姿が無い。
妹は二階にいた。そしてそこには、一階と同じ鏡台が。
妹は、鏡台の引き出しに入っていた、「禁后」と書かれた半紙を目にする。が、D子が妹を縛めるも、うっかり鏡台の一番下の引き出しを見てしまう。D子はそのまま硬直、続いて引き出しを閉めると、自分の髪の毛をしゃぶり始めた。
声をかけても一心不乱にしゃぶり続けるため、皆はD子を連れて家から出て、一番近い投稿者の家へ向かう。
叱責され、皆の保護者達が集まり、大騒ぎに。
その後、D子は二度と元に戻らないと告げられ、彼女の家は引っ越してしまった。あの空き家には厳重な侵入対策が為され、投稿者たちはいつもの生活に戻る。
そして、投稿者が大学生になった時、D子の母親から投稿者の母親に手紙が。
内容は教えてもらえなかったが、投稿者の母親は、意味深な事を口にしていた。
後編(伝聞 2010年3月17日投稿)
ある家系が行っていた「母が楽園に向かうための風習」。それは、母親が娘を何人も生み、その娘を生贄のように材料として用いるという、悪辣で残酷なものだった。その教育と風習は、悪習として廃れたものの、一部がわずかに習慣として残るのみに。
その家系に育ち生活していた、八千代という女性の娘・貴子。
彼女が10歳の誕生日に自宅で惨殺されているのを、近隣住人らが発見。居なくなった父親を捜し回る中、八千代が娘の傍で自殺した。
その後、連絡を受けて訪れた八千代の両親が「この家に呪いを施したから誰も近付くな」と言った。後日、行方知らずだった父親が玄関前で死体で発見される。
八千代の両親も老衰で亡くなり、供養として残した家は、老朽化したために移設。その際に、人が入らぬように玄関を作らず、現在に至っている。鏡台の中身に関してだが一階の鏡台は一段目「紫逅」と書かれた半紙と爪、二段目は「紫逅」と書かれた半紙と歯、二階の鏡台の一、二段目には「禁后」と書かれた半紙のみが入っている。そしてD子が開けて発狂した三段目に入っていたのは八千代と貴子の手首だとのこと。隠し名と合わせて見てしまったことで呪いが発動してしまったらしい。そして三段目の引き出しの内側にはそれぞれの読み方がびっしりと書かれているそうだ。
投稿者の友人らの親達の中にも、子供時分にこの家に侵入し、同様の現象に見舞われた事があったらしい。
この記述の後、その家系で行われていた儀式の細部が記されている。
解説
「行ってはいけないと言われた場所に赴き、怪奇体験をした」という系譜の怪談。
禁忌の場所に入り込んで怪奇体験をしたのみならず、それが原因で仲間は呪われ発狂してしまう、という内容である。禁忌の場所に何があるのか、なぜ呪われたのか、そういった原因や由来などは語られぬままに、謎のまま終わる点も特徴である。
後に伝聞として、この呪いの詳細と異様な禁忌の家に関して書き込まれ、原因の説明とも取れるようになっている。
この呪いの元凶となった悪習の目的は、「母親が娘を生み、その娘の身体や精神や生命を呪物として用いる事で、『母親の精神を楽園に』向かわせる」事。娘は「この風習のためにその身を捧げる」「そのためだけに生まれた」と教育し、剥がした爪や抜いた歯、切り落とした指や髪の毛などの身体の一部を呪物として用い捧げるなどして、この儀式を行うとの事。
そして、二階の鏡台の上部の引き出し内に入っていた半紙に書かれていたのは娘の「仮の名前」、下部の引き出しの中には手首が入っていて引き出しの内側に「隠し名の読み方」がびっしり書かれている。この隠し名と手首、隠し名の読み方を見ると発狂する呪いがかけられてしまうらしい。
この話に限って言えば、「禁后」は「娘の仮の名前」であり、「本当の名前」は秘匿され知る由もない。
真偽はともかく、奇譚・怪談としては興味深く魅力的なものであるため、読者となった者たちは様々な考察を行っている。
ちなみに「パンドラ」という読み方は、「開けてはならない存在」として、投稿者たちがこの空き家の事をそのように呼んだだけで、「禁后」の読み方が「パンドラ」というわけではない。
関連作品
ファイル13「隣の部屋のパンドラ」に、この怪異が登場する。
正確には、元ネタとなった「禁后」をモデルとした怪異であり、そのものではない。原典では鏡台を置いていたのが二階建ての一軒家だったのが、本作品内ではアパートの一室に変更されている。
主人公の自宅であるアパートの一室、その隣の部屋に、この話に出てきた鏡台および髪の毛が登場。怪談の再現が試みられていた。
アニメ第10話で、小倉しおんが怪しげな研究をしている「黒魔術研究部」と称するプレハブのラボに置かれていた怪しげな物品の中に、「禁后」と書かれた木箱と毛髪が混じって置かれている。なお、作者の伊藤いづもは、雑誌ムーとのインタビュー記事で、小学校のころ、洒落怖にいくつか怪談話を投稿していたと答えている。
コトリバコに関わる事件の際RINFONEと共にこの単語が出てくるシーンがある。ただし禁后そのものは登場することはなく登場人物からもこの怪異が言及されることはなかった。
TVアニメ『ダンダダン』の主題歌。歌詞内に「誰が開いたか禁(パン)后(ドラ) 後は何があっても知らんがな」というフレーズがある。
この曲は他にも「ヤマノケ」や「お憑かれさまでした」等、洒落怖関連のネタが含まれている。