概要
トルキエ将国の将軍(パシャ)の中でも大将軍(ビュラク・パシャ)に次いで地位の高い「十三人の将軍(ヴェズイール)」の一人で、第1州管理官。若年ながら将軍会議で大きな影響力を持つ策謀家。
作中では「マフムートがトルキエ将国にとっての希望の星であるなら、ザガノスはバルトライン帝国にとっての絶望の星」と説明され、マフムートに対するもう一人の主人公であることが示唆されている。
「議論もできないお子様はとっとと御退席願いたい」
人物
プロフィール
経歴
トルキエ将国出身ではないことが作中で示唆されているものの、トルキエ暦63年/帝国暦439年(14歳)ごろには十人隊長としてトルキエ将国首都・金色の町(アルトゥン)にいた様子が回想で描かれている。
トルキエ暦67年/帝国暦443年に18歳で将軍(パシャ)に就任し、黒翼のスレイマンを長官(バシュカン)として招いて密偵網「目と耳(ギョズ・クラック)」を整備。その後頭角を現し、「十三人の将軍(ヴェズイール)」の一員、第1州管理官となる。
基本的には金色の町(アルトゥン)に常駐、将軍会議(ディワーン)に出席・発言していることが多いが、内乱鎮圧でしばしば出兵する。
トルキエ暦76年/帝国暦452年の年末から翌年にかけては帝国侵攻軍の総大将として大軍を率い、バルトライン帝国首都・聖ミヒャエルを攻略。バルトライン帝国旧領をトルキエ将国の版図に組み込んだのち、自らは「十九人の将軍(ヴェズイール)」としてバルト州管理官に就任。将軍会議の第一人者として将国の改革を次々と推し進める。
一方で、その急進的かつ専制主義的改革に反対する者たちからは恨みを買っている。
前半生について
本名をアストルフ・カミュといい、もとはバルトライン帝国の新貴族(ヘルマン)で薬草の町(サンブル)領主ウジェーヌ・カミュ侯爵の嫡男として生を享けた人物。
帝国歴439年/トルキエ暦63年、14歳のときに父ウジェーヌが皇帝ゴルドバルト11世より死を賜り、一族にもその累が及ぶことになったため、トルキエ将国への亡命を余儀なくされた。
これらの経緯から、彼は皇帝個人ではなくバルトライン帝国の政体そのものを憎悪しており、トルキエ人として復讐に挑むこととなる。
ザガノス本人は前半生を余人に語ることはしていない様子だが、実力主義のトルキエ将国では出生によって出世が阻まれることはなく、これらのことが暴露されても大きな問題にはなっていない。
性格・信条
冷厳な性格の持ち主で、政事・軍事の双方に卓越した才能を発揮する。
「毒薬のザガノス将軍(ゼヘル・ザガノス・パシャ)」の名の通り、毒薬の扱いに長けているほか、動植物にまつわる化学知識が豊富である。
密偵網「目と耳(ギョズ・クラック)」を活用し、国内外の情報を絶えず収集している。この情報収集活動により、ザガノスはトルキエ将国で唯一ルメリアナ各地の情勢をほぼ正確に把握している。
ザガノスの行動原理は、基本的に「バルトライン帝国を滅ぼすこと」であり、それを阻む者に対しては容赦がない。
物語序盤から対バルトライン帝国過激派(開戦派)としての立場を明確にし、穏健派(非戦派)である大都市のカリル将軍(シェヒル・カリル・パシャ)、四将国との協同を目指す水門のサルジャ将軍(テシサトゥ・サルジャ・パシャ)としばしば対立。その辛辣な言動で相手を閉口させる。
その一方で、利害関係が一致した味方に対しては寛容な態度をとり、最上の礼儀を払う。また敵対した相手であっても、確固たる信念や深い思慮を持った人間には敬意を抱いて接する。
マフムートに対しては、当初は理想に邁進するあまり独善的な行動を取る彼を叱責する役回りになることが多かったが、各地の「耳役」に接触するのに必要な水塔石(ピラミス)を手渡した後、マフムートが功績を挙げるにつれてその実力を認めるようになる。
エピソード
- 水門のサルジャ将軍は内心でザガノスを「成り上がり者」と見下している。
- 大都市のカリル将軍とは政治的には対立しているが、灯油を分けるよう頼まれるなど、険悪な関係ではない。
- 好きな食べ物は葡萄。
- 昔は友人と呼べる相手がいたが、現在はいない。
関わりのある人物
- 配下:飾り帽子のイブラヒム総督(砦の町)、黒翼のスレイマン、蹄鉄のジェミル将軍(第1州)、駱駝のイルカイ将軍(第1州)