概要
カトウコトノによる長編漫画作品。第41回講談社漫画賞少年部門を受賞。
『月刊少年シリウス』(講談社)で2007年9月号から17年間にわたって連載され、2024年1月号掲載の第162話で完結した。単行本は25巻まで刊行中(2024年1月現在)。
特徴
トルコ史・ヨーロッパ史に取材した重厚な世界観
作者が大学在学中にトルコ史を学んでいたことから、作中に登場する人物・国家群・事件は、オスマン帝国、神聖ローマ帝国、ローマ帝国、ヴェネツィア共和国等、地中海周辺諸国の歴史から着想を得たものが多い。
宗教的要素の省略
物語の舞台となるルメリアナ大陸では、キリスト教・イスラム教やそれに準ずる宗教は存在せず、代わりに五首信仰(エルミズム)という架空の宗教が広く信仰されている。五首信仰は五種類の精霊を信仰対象としているが、深刻な宗教対立を引き起こすほどのものではない緩やかなものである。そのため、個人や国家の行動原理が宗教に依拠せず、純粋な政治・経済的動機に基づくのも本作の特徴の一つである。
フルアナログ作画
近年では珍しいフルアナログによる作画も特徴として挙げられる。特に作中に登場する重要な建築物やランドマークは、実在の史跡や自然景観を模して緻密に描かれている。
あらすじ
架空の世界・ルメリアナ大陸にあるふたつの大国――トルキエ将国とバルトライン帝国。
緊張状態にあった両国は、やがて大陸全土を巻き込み戦乱の渦に呑み込まれていく。
平和を願ってトルキエ将国の将軍(パシャ)となった主人公・犬鷲のマフムートは、国家間に渦巻く陰謀と策略に立ち向かう。
主な登場人物
年齢は1話(トルキエ暦75年4月3日)時点。
- 犬鷲のマフムート将軍(トゥグリル・マフムート・パシャ) CV:村瀬歩
史上最年少の17歳でトルキエ将国の将軍となった天才少年。12年前のバルトライン帝国との戦争で母と一族を失い、平和を強く願う。鷲のイスカンダルを相棒とし、ルメリアナ大陸各地を奔走する。
央海(セントロ)に面した小都市国家ポイニキア市長アポロドロスの息子。17歳。権力におもねる父を嫌っている。スレイマンの誘いを受け、ポイニキアの「耳役(クラック)」を務める。マフムートと行動を共にする。
央海有数の商業都市国家・海の都(ヴェネディック)のブレガ商会私兵隊長。28歳。物腰は柔らかいが、海の都ではその名を知らぬ者はない武人。マフムートと行動を共にする。
トルキエ将国の密偵網「目と耳(ギョズ・クラック)」を整備・統括する長官。33歳。マフムートと同じトゥグリル村出身で、カテリーナという名の鷲を相棒としている。
トルキエ将国
「将軍(パシャ)」と呼ばれる為政者たちによって統治される遊牧民族国家。徹底した能力主義社会。「大将軍(ビュラク・パシャ)」を筆頭に、軍事・政治を司る中心となる「十三人の将軍(ヴェズイール)」は特に功績と人格の高潔さを要求される。
交易が盛んな商業国家であり、ルメリアナ大陸のなかでも指折りの経済大国である。拡張政策をとるバルトライン帝国は不倶戴天の敵であり、幾度も戦火を交えている。
トルキエ将国の「十三人の将軍」の一人で、将軍会議(ディワーン)の実力者。26歳。対バルトライン帝国強硬派。冷厳な性格で政治・策謀に長けており、内外から恐れられている。
トルキエ将国の「十三人の将軍」の一人で、マフムートの養い親。68歳。穏健派で多くの人々から慕われている。
バルトライン帝国
皇帝ゴルドバルト11世を統治者とする帝国主義国家。歴史上何度も領土拡張政策を繰り返しており、そのたびに多くの小国家を併呑してきた。近年、ルイが筆頭大臣に就任してからさらなる領土拡張の動きが目立っている。
広大な国土と多くの人口を有するルメリアナ大陸屈指の大国だが、戦争に明け暮れたために財政は逼迫しており、その貧しさを打開するために更に侵略を繰り返す悪循環に陥っている。
バルトライン帝国筆頭宰相。帝国の勢力拡大を狙い、周辺諸国に様々な謀略を仕掛ける。
バルトライン帝国エルルバルデスブルクを統治する女傑。26歳。皇帝ゴルドバルト11世の姪であり、皇位継承権は第3位。
- グララット・ベルルリック CV:櫻井孝宏
レレデリクの側近。25歳。
その他
- 紅虎のバラバン(CV:中井和哉) - トルキエの衛星国であるムズラク将国第3代将王。威風堂々とした野心家。
- 聖官のバヤジット(CV:内山昂輝) - バラバンの将弟。ムズラク将国港の町(リマン)の耳役。
- 洋梨のアイシェ(CV:茅野愛衣) - トルキエの衛星国であるバルタ将国将姫。バラバンとバヤジットの姪。物憂げな雰囲気の美女。
- 剣のオルハン(CV:島﨑信長) - トルキエの衛星国であるクルチュ将国将太子。アイシェの婚約者。気弱な性格。
- 武器商のイスマイル(CV:岡本信彦) - トルキエの衛星国であるブチャク将国第45将子。抜け目なく、商才に優れる。
- アントニオ・ルチオ(CV:小野大輔) - 海の都(ヴェネディック)共和国元首。優れた政治能力を持つ合理主義者。
テレビアニメ
2017年7月から12月まで連続2クールでMBS、TBS、BS-TBSのアニメイズム枠とBSNにて放送された。
8月には世界陸上の関係で休止が多かった(アニメイズムは3週分休止)が、世界陸上が終了した翌週に第6話・第7話を1時間枠扱いで連続放送、その後には通常スケジュールに戻った。
余談だが、アニメイズム枠においてアニプレックスが製作に関与した作品は本作が最後となっている。
スピンオフ作品
『小国のアルタイルさん』
漫画:ソガシイナ。全1巻。小さくなったマフムートたちが『月刊少年シリウス』編集部に住み着いたという設定で繰り広げられる、ゆるふわスピンオフ。
『将国のアルタイル嵬伝 嶌国のスバル』
『将国のアルタイル』のスピンオフ作品。『月刊少年シリウス』(講談社)2016年3月号~2019年6月号にかけて連載、完結済。単行本全7巻。
『将国~』本編において、ルメリアナ大陸東端の小国「日薙嶌国」は大国「大秦(チニリ)」によって征服されたと語られている。しかし10年の時を経た後、日薙嶌国皇位継承者・楠昴皇子(くすのきすばるのみこ)と彼を支える近衛府大将・明浪速布叉(あけなみのはやぶさ)を中心とした反乱軍が決起し、祖国を奪還すべく大秦の支配に立ち向かっていく。
『将国~』本編で起こった歴史的事実が展開に影響を与えるほか、『将国~』キャラクターの関係者が登場する。
モデルになった時代
上記のようにオスマン帝国などを時代背景にしており、世界史を知っている状態で見ると、さらに面白い。オスマン帝国が台頭してくるのが14世紀ごろ、中世ヨーロッパが近代へ移行するタイミングである。本作はおそらくその時代を元にしていると考えられる。
関連動画
関連タグ
アニメイズムB2
ベルセルク 次篇(2017年春)→本作(2017年夏秋)→キリングバイツ(2018年冬)