概要
漫画『ドラえもん』のエピソードの1つ。
小学六年生1985年2月号に初掲載された時のタイトルは「ジャイアン歌手になる!?」であり、TC39巻に収録されるにあたってこのタイトルに改題された。
タイトルに反してジャイアンが殺されるわけではない。
あくまで「ジャイアンにより間接的に殺人事件が起こる」という意味。
あらすじ
ある陽気な一日、散歩していたドラえもんとのび太は突如異様な気配で足を止めた。歩いていた野良犬も吠えながら逃げ出し、只事じゃない事に気づく二人。
慎重に近づいて進んでいくと、空き地からジャイアンの歌が聞こえた。
逃げようと逆の方向へ行こうとするドラえもん達だが遠回りになるため、耳を押さえて駆け抜けようとするが体が勝手にに空き地の方へ行ってしまい、結局ジャイアンの歌を聞かされる羽目に…。
「いつも不思議でしょうがないんだけど…ジャイアン本人はどうしてあのすさまじい歌にケロッとしていられるんだろ。」
「あたりまえだろ、フグが自分の毒で死ぬか!?」
ドラえもんが至極ごもっともな感想を言いながらジャイアンの歌を聴いていると、
「すばらしい!!」
といって一人の男がジャイアンを褒めた。男はジャイアンに何曲かテープに吹き込んでほしいと頼み込み、ジャイアンの歌を堪能して車で帰っていった。
その男はプロの歌手を育成する音楽教室「グランプリミュージックスクール」の教頭で、校長にこの歌を聴かせたいと言ってきた。
ついに実力が認められたと大喜びのジャイアンは自宅に戻って行った。しかし男にうさん臭さを感じたのび太とドラえもんはしずかとスネ夫に相談する。すると
「犯罪のにおいがする!!」
スネ夫は恐ろしい完全犯罪を予見し、次のように推理した。
「教頭はそのテープを、寝静まった校長の耳にひそかに聞かせるんだ。」
「すぐには効き目が現れない。しかし毎晩繰り返すうちに……、次第に歌の毒がまわり……、」
「校長は日に日に衰え……、やがて命を落とす。そして教頭が学校を乗っ取るんだ!!しかも後には何の証拠も残らない!!」
「名付けてジャイアン殺人事件!!」
するとそこにジャイアンがやってきた。
ドラえもんとのび太は、スネ夫が言ったことをつい口走りそうになるも、この場で別件の殺人事件が起こることを危惧したスネ夫に慌てて止められる。
するとスネ夫は、ジャイアンが手に持っているローラーのようなものに気が付いた。
これは「スリムローラー」といい、これでマッサージすると痩せるという代物。ルックスをよくするために買ってきた新商品だという。効果を疑うドラえもんに、広告を見せるジャイアン。写真の女性は、使用前と使用後で体系がまるっきり変化していた。
スネ夫は「ジャイアンがスマートになったら女の子にもてる」「そろそろテープを聞いた校長がすっ飛んでくる」と、先ほどとは打って変わって無責任な事を言う。
本当にスネ夫の推理は当たっているのか疑問に思ったドラえもんは、「警察犬つけ鼻」を使い教頭の後を追いかけた。そのグランプリミュージックスクールは何故か町の路地裏にあり、ますますうさん臭さを感じる。するとジャイアンの歌が聞こえてきた。例のテープを教頭は校長先生に聞かせ、これを使って宣伝テープを作ろうと進言していた。
「これに似た声で少しは歌える男に、同じ歌を歌わせるんだ。二つのテープをつないで……、」
「「本校ご入学前とご入学後。どんなオンチな生徒さんでもこんなに上手になれます」と……。」
結局殺人事件ではなかったと安堵するドラえもん。しかし空き地で来るはずもない校長の迎えを待つジャイアンに素直に言うべきか、このまま黙っておくべきかと悩んでしまうのだった。
余談
ビッグコロタン「決定版 ドラえもん大事典」(いそほゆうすけ作画)では今作の日談が描かれており、校長と教頭はジャイアンの歌の聞きすぎで体調を崩して入院し、「グランプリミュージックスクール」は潰れてしまったとの事。代わりには入って来たのはプリプリダンススクールだったようだ。