概要
タイでは王室が国民に深く敬愛されている為、「国王や王妃の写真」を自宅に飾っている家庭も多い。又、タイでは王と王妃の誕生日が(現在)「父の日(12月5日)」「母の日(8月12日)」になっている。
ちなみに現王朝は、ラーマ1世よって起こされたチャクリー王朝で、同時に前々王朝であるアユタヤ王朝の血筋でもあり、更にアユタヤ王朝には吸収されたスコータイ王朝の血も流れているため、チャクリー王朝は両王族の血を引く非常に歴史ある王室ということになる。
首都がバンコクにあるため『バンコク王朝』、あるいは王宮が運河とチャオプラヤー川に囲まれたラッタナーコーシン島にあることから『ラッタナーコーシン王朝(ラタナコーシン王朝とも表記される)』とも呼ばれている。
先代の国王ラーマ9世は2016年で在位70年を迎えており、この時点で現役では世界最長の在位記録を持つ君主であった(民選元首を含む全ての国家元首の中でも世界最長記録)。ラーマ9世に対する尊敬の念は他の国王と比べても特に高く、歴代でもラーマ1世・ラーマ5世に並ぶ名君として長く国民に親しまれてきた。
しかし近年国王の体調は悪化しており、それから間もない同年10月13日、満88歳で崩御した。
長男のワチラーロンコーン王子と次女のシリントーン王女が王位継承者であり、いずれかが王位を継承する予定だが、父の弔いと決意を固める時間がほしいとのことから、しばらく間を置いて12月1日にワチラーロンコーン王子が宣誓を行い、ラーマ10世として即位。2019年5月に戴冠式が3日間に渡って行われた。
タイの人々は王室・王族をとても大切にしており、タイ王室はタイ人の心のよりどころである。人々が王室に寄せる崇敬と敬愛の念は強い。王室を有する文化圏の多くがそうであるようにタイにおいてもまた王室に対する侮辱は許されない。王室に対する不敬罪も厳格である。
外国であってもタイ王室を侮辱する行為に対してはタイ王国やタイ人から激しい抗議が来ることがあり、2019年にドイツのTV番組がワチラーロンコーン王(ラーマ10世)の結婚式をおちょくった際にはタイ大使館やタイ人からの猛抗議にさらされ謝罪する羽目になっている。
ただ、このタイ王室への国民の支持は、政治的混乱にあっても調停役として70年以上在位してきたラーマ9世個人に対する性格が強く、その治世の末期ではSNSの普及で王室に対する批判が散見するようになり、現国王のラーマ10世は王太子時代からのスキャンダルの数々で人気はすこぶる低い(不敬罪が厳格であるためタイ国内ではほとんどそのよう意見は表に出ないが)。
近年タイで急速にキャッシュレスが進んでいるのも、コスト削減や中国人観光客の取り込みだけではなくすべての紙幣に印刷されていラーマ10世の顔を拝みたくないという感情も少なからずあるらしい。
加えて、2020年から長引く軍政へと腐敗、新型コロナウイルスに端を発する社会不安や、年間を通してほとんどドイツで過ごすラーマ10世の言動などが重なったことで、学生を中心とした反政府デモにおいてラーマ9世をも含めた王政を批判する主張が頻繁に聞こえてくるなど、タイの王室と国民の関係性にも変化が生じ始めている。
歴代国王
アユタヤ王朝
歴代 | 名前 | 西暦 | 仏暦 |
初代 | ラーマーティボーディー1世(ウートン王) | 1350年〜1369年 | 1893年〜1912年 |
---|---|---|---|
第2代 | ラーメースワン | 1369年〜1370年 | 1912年〜1913年 |
第3代 | ボーロマラーチャーティラート1世(パグワ王) | 1370年〜1388年 | 1913年〜1931年 |
第4代 | トーンラン | 1388年 | 1931年 |
第5代 | ラーメースワン(2度目) | 1388年〜1395年 | 1931年〜1938年 |
第6代 | ラーマラーチャーティラート(ラーマラーチャー) | 1395年〜1409年 | 1938年〜1952年 |
第7代 | ナカリンタラーティラート(インタララーチャー1世) | 1409年〜1424年 | 1952年〜1964年 |
第8代 | ボーロマラーチャーティラート2世(サームプラヤー王) | 1424年〜1448年 | 1964年〜1991年 |
第9代 | ボーロマトライローカナート(トライローカナート) | 1448年〜1488年 | 1991年〜2031年 |
第10代 | インタララーチャー2世(ボーロマラーチャーティラート3世) | 1488年〜1491年 | 2031年〜2034年 |
第11代 | ラーマーティボーディー2世 | 1491年〜1529年 | 2034年〜2072年 |
第12代 | ボーロマラーチャーマハープッターンクーン(ボーロマラーチャーティラート4世) | 1529年〜1533年 | 2072年〜2076年 |
第13代 | ラッサダーティラートクマーン(ラッサダー) | 1533年〜1534年 | 2076年〜2077年 |
第14代 | チャイヤラーチャーティラート(チャイラーチャー) | 1534年〜1547年 | 2076年〜2089年 |
第15代 | ヨートファー(ケーオファー) | 1547年〜1548年 | 2089年〜2091年 |
第16代 | シーシン | 1548年 | 2091年 |
第17代 | ウォーラウォンサーティラート(ウォーラウォンサー) | 1548年 | 2091年 |
第18代 | チャクラパット | 1548年〜1569年 | 2091年〜2112年 |
第19代 | マヒンタラーティラート(マヒン) | 1569年 | 2112年 |
第20代 | サンペット1世 マハータンマラーチャーティラート(マハータンマラーチャー) | 1569年〜1590年 | 2112年〜2133年 |
第21代 | サンペット2世 ナレースワン | 1590年〜1605年 | 2133年〜2148年 |
第22代 | サンペット3世 エーカートッサロット | 1605年〜1610年 | 2148年〜2153年 |
第23代 | サンペット4世 シーサオワパーク | 1610年〜1611年 | 2153年〜2154年 |
第24代 | ボーロマラーチャー1世(ソンタム) | 1611年〜1628年 | 2154年〜2171年 |
第25代 | ボーロマラーチャー2世(チェーターティラート) | 1628年〜1629年 | 2171年〜2172年 |
第26代 | アーティッタヤウォン | 1629年 | 2172年 |
第27代 | サンペット5世 プラーサートトーン | 1629年〜1656年 | 2172年〜2173年 |
第28代 | サンペット6世 チャイ | 1656年 | 2173年 |
第29代 | サンペット7世 シースタンマラーチャー(スタンマラーチャー) | 1656年 | 2173年 |
第30代 | ラーマーティボーディー3世(ナーラーイ) | 1656年〜1688年 | 2173年〜2231年 |
第31代 | ペートラーチャー(マハーブルット) | 1688年〜1703年 | 2231年〜2246年 |
第32代 | サンペット8世 スリエーンタラーティボーディー | 1703年〜1709年 | 2246年〜2252年 |
第33代 | サンペット9世 プーミンタラーチャー | 1709年〜1733年 | 2252年〜2276年 |
第34代 | ボーロマラーチャーティラート3世 ボーロマコート | 1733年〜1758年 | 2276年〜2301年 |
第35代 | ボーロマラーチャーティラート4世 ウトゥムポーン | 1758年 | 2301年 |
第36代 | ボーロマラーチャー3世 スリヤートアマリン(エーカタット) | 1758年〜1767年 | 2301年〜2310年 |
チャクリー王朝
歴代 | 名前 | 西暦 | 仏暦 |
初代 | ラーマ1世 プッタヨートファーチュラーローク | 1782年~1809年 | 2325年~2352年 |
---|---|---|---|
第2代 | ラーマ2世 プッタルートラーナパーライ | 1809年~1824年 | 2352年~2367年 |
第3代 | ラーマ3世 ナンクラオ | 1824年~1851年 | 2367年~2394年 |
第4代 | ラーマ4世 チョームクラオ | 1851年~1868年 | 2394年~2411年 |
第5代 | ラーマ5世 チュラチョームクラオ | 1868年~1910年 | 2411年~2453年 |
第6代 | ラーマ6世 モンクットクラオ | 1910年~1925年 | 2453年~2468年 |
第7代 | ラーマ7世 ポッククラオ | 1925年~1934年 | 2468年~2477年 |
第8代 | ラーマ8世 アーナンタ・マヒドン | 1934年~1946年 | 2477年~2489年 |
第9代 | ラーマ9世 プーミポン・アドゥンラヤデート | 1946年~2016年 | 2489年~2559年 |
第10代 | ラーマ10世 ワチラーロンコーン | 2016年~在位中 | 2559年~在位中 |
日本皇室との関係
日本の皇室とタイの王室は、国交が始まった約600年前に遡るほど、古くから非常に親密な交流があり、日本の皇族は伝統的にタイを訪問している。
詳細⇒日泰友好