インド亜大陸の北西部で用いられる文字。アブギダの一種で、各文字が上部の横棒(シローレーカー)で繋がれた書法が特徴的。
7~8世紀頃にシッダマートリカー文字(いわゆる梵字)から派生する形で誕生したとされる。サンスクリットでは「デーヴァ(देव)」が「神聖な」、「ナーガリー(नागरी)」は「都市文字」という意味であり、すなわち「デーヴァナーガリー(देवनागरी)」とは「神聖なる都市の(文字)」といった意味となる。
元々はサンスクリットを書き表すための文字のひとつに過ぎなかったものの、11世紀頃よりシッダマートリカー文字に代わってサンスクリットの代表的な表記法として北インドのみならずインド亜大陸全域で使われるようになった。
北インドではこれに留まらず、20世紀の半ば頃までに多くの地方文字に取って代わる形で広まった。現在ではインドの連邦公用語であるヒンディー語をはじめ、ネパール公用語のネパール語、西インドの地方言語であるマラーティー語などがデーヴァナーガリー文字を主に用いている。