概要
1998年頃に、ドラえもんファンの1人が創作しインターネット上で広まっていた、「電池切れで動かなくなったドラえもんを、ロボット工学者となったのび太が甦らせる」という内容の「最終話」をもとに、男性漫画家・田嶋安恵先生が「田嶋・T・安恵」のペンネームで2005年秋に漫画を執筆し、20頁の冊子にして販売した。
その結果、藤子・F・不二雄先生のタッチに酷似した絵柄や最終話らしい展開、感動的な結末がインターネットなどを通じて評判となり、同人誌としては異例の15,500部が出荷され、約13,000部を売り上げた。販売終了後も、ネットオークションで5,000円~8000円ほどの価格で売買され、時には数万円の値が付くこともあった。さらにコピーされたものが、インターネット上で自由に見られる状態となった。
しかし、問題はここからであった…。
小学館の対応とそれによる作者の対応
絵柄が原作と酷似しているため「藤子・F・不二雄の真作」であると勘違いし小学館に問い合わせる者が出るなど、あまりに広まりすぎたために、著作権者である小学館および藤子プロ側も「想像していた以上に深刻な事態」と受け止め、2006年に同人誌作者に著作権侵害を通告する事態となった。
これを受け、同人誌作者の田嶋先生は著作権侵害を認めて謝罪し、在庫が全て破棄されることになった。あわせて、Webで公開(無断転載)していたサイトについても削除を依頼した。
2007年5月、田嶋先生は謝罪文および二度としないという誓約書を提出し、数百万に及ぶ売上金の一部を藤子プロに支払った。
何が問題だったのか
小学館が公的に問題視したのは
- あまりに絵柄が似すぎており、クオリティーが高かった(高すぎた)こと。
- 同人誌の装丁が、オリジナルの単行本と酷似していたこと。
- 同人誌の内容が「最終回のストーリー」であり、本当の最終回であると勘違いする人がいたこと。(これは元ネタの方でも発生していたが、あくまで「都市伝説」の一種として囁かれていた。本作が元ネタ以上にそれを助長してしまったことが原因と思われる)
- あまりに売れすぎて、同人誌の範疇を超えてしまったこと。
- 第三者によって無断転載されてWEB上で公開されており、コントロール不可能な状態のまま、不特定多数に見られる状態であったこと。
と、いう部分である。
関連タグ
ジュブナイル(映画):元ネタが同じ作品繋がり。こちらは山崎貴監督が、ストーリー(元ネタ)を考えた別の同人作品(今でいうところの「個人のプライベートサイトへ身内(内輪)向けに乗せた二次創作のネット小説」)の作者(要は元ネタを考えた方)と、きちんと交渉を行った上で藤子プロと小学館の許諾も得て、作品のストーリーに取り入れており、きちんとエンドロールに元ネタ作者の方と、その源流として藤子先生の名前をクレジットしている。今回の事件は(意図的では無いとはいえ)結果的にその努力に泥を塗る行為となってしまった。