概要
望遠鏡(むしろ双眼鏡?)のように前向きについた目が特徴的な魚。トビウオのように下の方が長い尾びれも特徴だが、深海にいるので滑空はしない。
「ボウエンキョウウオ(望遠鏡魚)」でも「ソウガンキョウウオ(双眼鏡魚)」でもなく「ボウエンギョ(望遠魚)」という微妙にうまいお名前がナイスだ。
世界各地の深海に広く生息し、大きさは20~24㎝くらい。一応日本にもいるようで、2006年に高知県近海で採取された。
その後この個体は既存のボウエンギョの亜種「コガシラボウエンギョ」として登録されたが、ボウエンギョ科はボウエンギョ本種とこのコガシラボウエンギョの2種類しかいない珍しい魚である。
主な特徴
望遠鏡みたいな目は伊達ではなくかなりの高感度。ダイオウイカやキンメダイのように「深海だからこそ視力を発達させた」タイプだ。
というわけで元気に泳ぎ回って獲物を探すタイプの魚だが、深海の水圧に耐えるために骨は軟骨、体は柔らかくウロコがない。
またフウセンウナギやオニボウズギスのようにお腹を大きく膨らませることもでき、大きく開く柔軟なあごと合わせて食い溜めだってドンと来い。
出会いの少ない深海なのでなんと雌雄同体で、相手さえ見つかれば問題なく繁殖可能。
深海魚はその出会いのなさゆえに雌雄同体に進化したものが多い。生命の神秘である。
全然似てないボウエンギョJr.
そんな個性派のボウエンギョだが、幼魚のうちは浅い海で暮らす「頭でっかちのカワハギ」みたいな体型で、目も普通に横向きでついている(成長にしたがって変化する仕組み)。
こいつらが「実の親子です」と名乗ったって到底信じられないはず。
なおこうした仰天チェンジは他にも様々なやつらが確認されており、チョウチンハダカやミツマタヤリウオ、マンボウ、ソコギス類などバラエティ豊か。それこそキンチャクダイ科のような「色や模様が違う」なんてのを軽く越えてくるレベルなので、生き物の奥深さを感じられるだろう。
ちなみに
ボウエンギョは食用にならないが、遠縁にあたる「ヒメ」という魚は練り物の素材になることがある。
そのボウエンギョ自体は幼魚がシラスに混じっていることが稀にあるらしいが、食べても問題はない。
シラスにはカタクチイワシだけでなくイカやタコ、別の魚の稚魚が混じっていることも多いので、気になる人は探してみるといい。
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ミズウオ:同じヒメ目の深海魚。こっちも大食い系、雌雄同体、食べられない。
ポリメリクチス:先史時代に生きた絶滅種。ある意味先輩になるであろう魚。