ボロボロのエルフさんを幸せにする薬売りさん
ぼろぼろのえるふさんをしあわせにするくすりうりさん
2021年3月。漫画「ミュータントは人間の彼女とキスがしたい」や「四神Vライバー」の作画担当・イラストレーターである「ぎばちゃん」が、↓このイラストをSNSで投稿されたのが始まりだった。
なんやかんやで今は幸せな元奴隷のエルフさん
なお、作者曰く、↑の一枚絵(イラスト)を描くにあたり「正直なお話、大きくしすぎました……」とコメントしている。
その後は、件の画(イラスト)を基にした前日譚みたいな連作を、2021年9月よりWEB漫画で不定期連載された。
作品名(タイトル)は「ボロボロのエルフさんを幸せにする薬売りさん」で、略称は「エル薬」と表記されている。
そして連載がスタートすると・・・
かろうじて生きているレベルの損傷を全身に負っているという最初のホンワカしたイラストの欠片すらないヒロインの凄惨な姿に多くの読者が驚くことになった。そこからどのようにして回復して最初のイラストへつながっていくかというのが見どころとなっている。
pixivだけでなく、Twitterやニコニコ静画でも見られる他、FANBOXで番外絵(スケッチ)や大胆絵(セクシーショット)なども限定公開されている。
因みに、2022年11月までは「リズレさんの過去編」も投稿されていたが、掲載場所の仕様変更で非公開となっている。このため別形式で再掲載を予定している。
参考リンク→エル薬最終話冒頭先行公開と過去編の扱いについて - pixivFANBOX
作品の特徴として―
- 殆どはエルフさんの治療を請け負う薬売りさんの視点で、彼の活動日誌を読むように描写される。
- 通常は一枚絵の周囲に重なる配置で、メインのエルフさんに繋がる小さなコマ割りがされている。重要回では普通のコマ割りで進行する時もある。
- 魔法なんかでぱぱーと治すのではなく、現実世界と同様に薬品を用いて患者の生命力を補いつつ、何日も昼夜付き添って地道な治療が行われる(そもそも、治癒魔法自体が一般的ではない)。
- 使用する薬や医療器具の素材は、スライムやなんか聞き覚えのある素材とかを使い、現実の医術に相当する医薬品として多種多様に登場する(例えるなら、江戸時代にタイムスリップした現代の医師が、その時代にある物で近代医療を実現させるような感じ)。
- ただし、寿命が縮むのと引き換えに体を再生できる「ハイポーション」があることが劇中語られており、魔法薬の類は存在している。
といった、治療・回復の様子を強調した作風で描かれる。
2022年11月26日の投稿で完結(ただし、最終回はやや急ぎ足な展開となっている)。
2022年12月では、Amazonから世界観の解説などを追加した電子書籍版・全2巻が無料配信されている。
参考リンク→「ぎばちゃん」の検索結果 - Amazon
また2022年現在、関連グッズの販売が作者・ぎばちゃんのBOOTH個人スペースで行われている。
参考リンク→エル薬第二集提出&グッズ販売とおまけ - pixivFANBOX
2023年11月11日にダッシュエックス文庫より小説として書籍化。執筆は小説家の綾坂キョウが、監修・表紙や挿絵の描きおろしは当作品の原作であるぎばちゃん氏が担当する事となる。連載版完結までを軸として漫画で描写できなかった場面やリズレさん視点での物語などを加えて再構築されている。
幼少期に攫われ、前の主人から非情な虐待を受け、心身共に酷い傷(ダメージ)を負っている。その後は捨てられる形で質屋に売り払われた所を薬売りさんと出会う。
心も深く傷つけられていたため、話すどころか殆ど無反応の状態で会話が出来なかった。後に精神面は多少回復し会話もできるようになったが、記憶喪失にもなっているため本名など素性は不明。それでも治療を決意している薬売りさんから、ある願いを込められた渾名「リズレ」を与えられた。
静かな村で小さな薬屋を営んでいる男性。年齢や本名は不明。
質屋に売り払われたエルフさんの凄惨な状態・このまま処置と保護をしなかった場合の行く末を考えた結果、購入(救命)を決意。
薬剤だけでなく、文献を基に歯医者などの知識・技能を発揮するといった優秀な腕をもつ。そして善良な精神も併せて、自分の医術を駆使し、何としてでもリズレさんを回復させようと懸命な治療を行っている。
物語が進むにつれ、世界観が中世ファンタジーとはいえど、”薬売り”だけでは説明しきれないような高度な戦闘(狩猟)技術、どことなく影が差す顔(過労?)、上記のように誠心誠意の治療はしているもののあくまで”一時的な患者と医者の関係”としてリズレさんとは一線を引いているなど、ただの”薬売り”ではなさそうだが・・・
薬売りさんの集落の馴染みである「アネ」の娘。
薬売りさんの事を信頼している他、患者であるリズレさんに花冠をプレゼントしていた(モネからすれば「薬売りさんのお嫁さん」のようだ)。
そのリズレさんが神経毒を盛られた時はアネと一緒に看病をしていた。
薬売りさんの集落の馴染みである女性。一人娘の「モネ」がいる。
彼女もまた薬売りさんの事を信頼しており、神経毒を盛られたリズレさんの特効薬を作る素材を探すために家を空けた時に看病と様子見を快諾した。
夫は劇中未登場で、リズレさんも彼女を未亡人と思っていたらしく、「薬売りさんとお付き合いしているのでは?」と勘違いしたこともあったが、仕事で長期間留守にしているだけでちゃんと健在である。
- 質屋
物語の始まりの場所。
・・・とだけ書けば綺麗だが、実際は『お偉いさんからやっかいなモン(リズレさん)を押し付けられて困っていたのを薬売りさんに購入ないし処分』してもらおうとした人。
この世界において『エルフの肉体を素材とした万能薬』なる眉唾ものな話(薬売りさんは存在しないと断言)が世間一般にまで流布しているらしく、さらに『前の持ち主』に"弄ばれて捨てられた”と薬売りさんに伝える。
彼としてはあくまで取引だったからか、薬売りさんも内密に済ませるためとはいえ、深く追求をしていない辺り、そこまでの悪人とまでは言い切れない模様。(というより、諸々の会話を考えるにこの世界におけるエルフ種族の社会的地位そのものに問題があるように見える)
肉体の研究のために「デミ・リッチ」という魔族になった元人間で、"不死の闇医者(しなずのもぐり)”の異名を持つ。
通称アダム。
体は少女だが、元は男性。
薬売りさんとは彼が幼いころ、知り合いの魔族に保護された頃からの付き合い。その時、彼の目を見て何かを感じ取っている。彼を「黒スケ」と呼ぶ。
変人ではあるが腕は確か。
- ゴーシュ
アダムの従者。顔にツギハギのある巨漢。
- 魔族の男
薬売りさんの回想に登場する魔族の男性。天涯孤独で飢えに苦しんでいた少年(後の薬売りさん)を助けた。アダムとは古い馴染みの模様。
ドワーフ領の工業都市「ヴォルスティン」に住むドワーフの鍛造師。女性。
薬売りさんとは古い知り合い。
回復してきたリズレさんの義肢を作るために薬売りさんは彼女の元を訪ねたのだが、大のエルフ嫌いであるため初めは断る。しかし、一緒に来たリズレさんの素直な人柄に触れたことで反省し、彼女の義肢を作る。
突然、薬売りさんの工房を襲撃してきたエルフの女性。
その正体はリズレさんこと「ルミレア・シェラ・アゥスプルス」の実妹。
リズレさんが良かれと思って自分の持つ力を込めて作った「歌唱石」の存在を知り、イルダ人(人間)に秘術を売り渡した咎人がいると探っていたところ、姉と再会。
姉が記憶を失っていることにショックを受けながらも、故意でないとはいえ秘術を外に出してしまったことで裁定を受けなければいけないリズレさんと、彼女の弁護を買って出た薬売りさんを止むを得ず里に連行する。
リズレさん(ルミレア)の実母。夫であるベルディスとはすでに死別している。エルフであるため見た目は非常に若い。
里でルミレアと再会し、彼女の体の状態から何かを察し、あるものを渡そうとする。一度は刑務局に阻まれてしまうが、最終的にそのあるもの=ベルディスの形見でもあるエルフの体内結晶を託す。この結晶はリズレさんを完治させるための秘薬「ハイポーション」の材料であり、見事彼女の体を治すことができた。
- シャクナ
エルフの警兵長でイドリアの上司。
厳格な性格で、里に連行されたリズレさんと薬売りさんに問答無用で死刑を言い渡し拘束する。
しかし、程なくして自分とエルフに恨みを持つイルダ人に里が襲撃され(本人の独白から、昔イルダ人の村を焼き討ちしたことがあり、襲撃者はその生き残りだった模様)、殺されそうになるが九死に一生を得る。
その後はリズレさんと薬売りさんに恩赦を与え、自分の過去の行いを悔い、贖罪の日々を送っている。
作品リンク
第1話リンク - pixiv・twitter・ニコニコ・pixivFANBOX
作者リンク
ぎばちゃん (Gibachan) - pixiv・twitter・ニコニコ・pixivFANBOX