ホプキンスが「魔女狩り将軍」として活動していたのは1644年から1646年の二年間であり、セイレム魔女裁判とは実に50年近い隔たりがある。彼がイギリス政府から権威を得て活動できたのはわずか二年前後と短く、しかも判事自身の生涯は失脚以降何も残っておらず、正確な没年や死因は不明となっている。さらにイギリスの人間なので、独立後のアメリカに派遣されるのもやや不自然。

特異点成立当時から半世紀も前に権力を逸した人物が、権威を得たままセイレムに出現していること自体が不可解であり、判事自身も自分がセイレムに派遣されたことを訝しんでいる。

その正体

アビゲイルが「自分と同じような罪ある魂たちに贖罪の場を（要約）」と魔神柱ラウムに願ったために、セイレムに招かれた存在。つまり幻霊サーヴァントとして召喚されたマシュー・ホプキンスである（若い頃の姿ではないのもそれが理由である。また、自分がサーヴァントという自覚はない）。

そういった経緯で召喚されているため、生前の行いに罪の意識を感じていたのは本当なのだが、その贖罪の在り方というのが今度こそ本物の魔女を吊るすというあたり、やはり歪んでいる。

しかしその贖罪意識は良くも悪くも本物で、毎日一睡もせずに容疑者に尋問・拷問しており、たとえ自分の命が危うくなるような脅威に襲われても、一貫して贖罪の為の行動を優先しており、その行動はブレることがない。彼に処刑を依頼した村人にすら「石頭め！」と言われた程である。

最終的に祖父を彼によって死刑にされたラヴィニア・ウェイトリーに襲撃され、急所を一突きにされた上に滅多刺しにされて死亡し、物語から退場している。ただ彼の死は、真っ先にその場に駆けつけたサンソンによって欺瞞されており、サンソンがラヴィニアに代わって罪を被ったことで、ラヴィニアの生存を確保し、最終決戦における逆転の一手まで漕ぎつけるに至ったのだった。

余談だが、セイレムで未練を残したまま死ぬと食屍鬼（グール）になっても贖罪を欲して動き出す仕組みになっているのに、サンソンと同様に食屍鬼にならずに死んだまま退場したということは、被害者に殺されるという因果応報の死が、彼にとって自分を赦せる理由になったのかもしれない。

また、本作のコミカライズ版では少年時代に「本物の魔女」たる女性に運命を狂わされたらしいことが語られており、魔女狩り将軍になったのもその影響であることが明かされた。己の使命を悟るとアビゲイルが事件の鍵を握る「真の魔女」であると暴くが、原作同様の末路を辿った。