CV:朴璐美
「今度は 私は何も譲らないわ」
概要
本名はアンジェリーナ・ダレス。
その燃えるような赤毛と、社交界で常に真っ赤なドレスを身に纏っていることからマダムレッドと呼ばれるが、あくまで通称である。
年齢は推定30前後(注)で、本人曰く結構モテるとのこと。
本作の主人公であるシエル・ファントムハイヴ(以下シエル)の母方の叔母であり、シエルの従兄妹で婚約者のエリザベス・ミッドフォードにとっては父方の叔母にあたる。
王立ロンドン病院に勤務する女医であり、バーネット男爵夫人としての称号も持つ。
姉であるレイチェル・ファントムハイヴ(以下レイチェル)との姉妹仲は本来非常に良好であり、医者を志したのも喘息気味の姉のためであったらしい。
過去
幼少期は自身の容姿に自信がなく、父親似の赤毛をコンプレックスに感じていたが、15の時にヴィンセント・ファントムハイヴ(以下ヴィセント)から「地に燃えるリコリスの色」と褒めて貰えたことで自信を持つようになる。
ヴィセントに対しては出会った当初から好意を抱いていたようだが、姉のレイチェルとの結婚で失恋した形となり、灼けつくような嫉妬心を覚えながらも「大好きな人たち」として姉や甥であるシエルを愛するというジレンマを抱えていた。
その後夜会でバーネット男爵と出会い、結婚。
「忘れられない人がいる」という自分の気持ちを知りながらも「それでもいい」と言ってくれたバーネット男爵を、燃えるような恋慕はなくとも大切に思うようになり子供も孕った。
しかし馬車の追突事故によってバーネット男爵は死亡、自身も妊娠中の身で内臓破裂という深傷を負い、子供と共に子宮を失ってしまう。
ネタバレ
『黒執事』におけるジャック・ザ・リッパー事件の犯人。
堕胎手術を受ける娼婦達に対し「私がどんなに欲しくても手に入らないものを持っているクセに」と憎しみを募らせ、惨殺して子宮を奪うという強行に走った。
そして数人を殺害したところで死神であるグレル・サトクリフ(以下グリル)に魅入られ、以後は協力して犯行を重ねる。
その後火災事件で死亡したと思われていたシエルが生還し喜ぶも、ヴィセントに対する恋慕と姉に対する嫉妬が呼び起こされ、女王の番犬として自身を捕らえようとするシエルを愛する男を奪った女の息子とみなし「あんたなんか生まれてこなければ良かったのよ!!」と叫んで殺害しようとした。
しかしすんでのところで「やっぱりダメ…私にはこの子は殺せない…っ」と悲しげなシエルの面差しに姉を重ねて踏みとどまり、シエルの殺害を命令するグレルに「でも…でも!!この子は私の…っ!!」と叫んで庇う姿を見せる。
そしてそんな彼女の姿に失望したグレルに「ただの女になったアンタに興味ないわ」という言葉と共に死神の鎌で胸を貫かれ、シエルの目前で絶命した。
まとめ
マダム・レッドは『黒執事』において、その僅かな登場話数にもかかわらず非常に印象の強いキャラクターの一人である。
ジャック・ザ・リッパーとして多くの娼婦達を手にかけたことに弁明に余地はないとはいえ、彼女の葛藤や憎しみに対して多くの読者が共感し、同情したことは間違い無いだろう。
彼女はヴィセントを奪われたことで女としてレイチェルに激しく嫉妬しながらも、優しく美しい姉を妹として同時に深く愛してもいた。
このことは、シエルに重なった姉の顔が、シエルの殺害を最後の最後で彼女に踏みとどまらせたことからも明らかだろう。
彼女の葬式にシエルは真っ赤なドレスを伴いながら参列し、「貴方には白い花も地味な服も似合わない。貴方に似合うのは情熱の赤、地に燃えるリコリスの色だ」と父親と同じ言葉を囁き母親がかつて彼女にしたようにマダム・レッドの髪に花をさし、ドレスをたむけた。
この時シエルが彼女を“マダム・レッド”ではなく“アン叔母さん”と呼んだのは、彼が彼女を甥として愛し、その死を心から悼んでいたからこそだろう。
「僕は迷わない」とセバスチャンに言い放ちながら、けれど苦渋を噛み締めるようなシエルの表情には、マダムが彼に注いだ愛の深さが窺える気がするのである。
注
マダムがヴィセントに初めて出会ったのは彼女が15の時の事である。
そこからヴィセントがレイチェルと結婚しシエルが生まれるまでに2〜3年かかったとして、シエルの年齢(12〜13)を踏まえれば30前後であろうと推察した。