「歩兵戦車Mk.I マチルダI」と「歩兵戦車Mk.II マチルダII」が存在するが、この項目では後者を解説する。
概要
周囲の歩兵を蟻、戦車を蜂に見立てて「戦場の女王」と称されたマチルダは、歩兵支援を目的に26tの重量で75mmの重装甲を持つ事を優先的に開発され、1939年に本格的な運用が始まった。
攻撃力は2ポンド砲で少々見劣りするものの、軍事機密ともされた特殊な工法による車体前面75mmから78mm、砲塔全周75mm、側面75mmから45mmの垂直装甲を持ち、高い防御力を備えたマチルダ戦車は当時のドイツ軍戦車の砲、対戦車砲では貫通する事は出来ず、フランスのアラヌ、北アフリカ戦線などで一時的にドイツ軍を危機に陥れた。
しかし、それに劣らずドイツ軍を驚かせたことがある。
その頃、イギリス軍の主力対戦車砲であったオードナンスQF 2ポンド砲は、各国の対戦車砲と比較して優秀な対装甲能力を持っていたが、歩兵や対戦車砲の様な軟目標に有効な榴弾が存在しなかったのである。
『歩兵戦車』という名称にもかかわらず、榴弾が装備されていないと言う致命的な欠陥から、しばしばドイツ軍の88mm高射砲の餌食となった。
この為に北アフリカでは戦車戦では太刀打ちできないドイツ戦車により時速24㎞の鈍足を突かれ速度で翻弄され、偽装後退する相手戦車を追っては88㎜高射砲陣地におびき寄せられた末にそれに撃破されており、実情を知らないイギリス側はドイツ戦車の性能を過大評価したという。
対策も用意されていなかったわけではなくマチルダIIのCS型(近接支援型)では主砲に25口径76mm榴弾砲を搭載しており、榴弾や煙幕弾を使用可能だった(ただしこちらは徹甲弾を使用不能)が、CS型は少数しか配備されておらず、部隊内での連携も悪かったため、CS型抜きで対戦車砲陣地に突っ込んで大損害を何度も被る羽目になっている。
この欠陥について、ドイツアフリカ軍団を指揮していたロンメルは、「マチルダは『歩兵戦車』と呼ばれているのに、敵歩兵に撃つべき榴弾が用意されていないのは何故だろうか。」との回想を残している。
さらに、戦況が進むにつれて火力と装甲を増し続けるドイツ戦車に対してマチルダの優位性は消え失せていき、またその製造コストの高さもネックとなってマチルダより薄い装甲で武装・速度も同じながらもコストの低いバレンタイン歩兵戦車にその座を奪われていったが、戦前に開発されたイギリス戦車の中では唯一、大戦を通じて使われ続けた戦車である点だけは称賛に値する。
レンドリース車両としてソ連軍にも供与されたが、速度が遅く足回りが寒冷地向きではない(特にスカートが誘導輪を支える構造材を兼ねていたため取り外せず、泥が詰まりやすかったことと泥濘で頻繁にスリップしたり横転することが問題視された)など不評極まりなかったという。
とはいえ戦車不足に陥っていた大戦初期のソ連軍にとっては貴重な機甲戦力であり、本車の総生産数の約1/3がソ連軍に供与されたといわれている。
ちなみにソ連軍でも榴弾が撃てないことは問題視され、KV-1に搭載された76mm戦車砲に換装した車両も作られたが砲塔内部が狭くなりすぎたため1両が試作されただけで終わった。
オーストラリア軍にも配備され、東部ニューギニア戦線で大日本帝国陸軍相手に猛威を振るった。
オーストラリア軍では主砲を火炎放射器に換装したマチルダ・フロッグも運用され、日本軍のトーチカ相手に活躍した。
さらに陣地攻略用に対潜迫撃砲ヘッジホッグを搭載したマチルダ・ヘッジホッグも製造されたが本格的な運用に入る前に終戦を迎えた。
性能
全長:5.6m
全幅:2.6m
重量:27t
発動機:液冷ディーゼル174馬力×2
速度:24km
装甲:75mm~45mm
武装:52口径2ポンド戦車砲×1 7.92mm機銃×1
登場作品
イギリス軍仕様とソ連軍仕様が登場する。
聖グロリアーナ女学院の使用車両として早期から登場。当初は全乗員が名無しのモブキャラだったが、劇場版からは1両の車長にルクリリという名前が付いた。
初代PS「コンバットチョロQ」とPS2「新コンバットチョロQ」に登場。
「コンバットチョロQ」では敵タンクとしては登場せず、訓練(チュートリアル)の標的としてのみの登場。ステータスもあまり高くない。
「新コンバットチョロQ」では初期選択可能な戦車として登場。初期選択しなかった場合は「ハスカラザ解放」をクリアすると使用可能となる。
敵タンクとしては登場せず、街中に駐留するプロトン王国軍兵士として登場する。同軸機関銃タイプ「T」カテゴリーの武装を装備できる。