概要
ドミートリー・アナトーリエヴィチ・メドヴェージェフ（ロシア語：Дмитрий Анатольевич Медведев、ラテン文字表記の例：Dmitrii Anatolievich Medvedev、1965年9月14日 - ）は、ロシア連邦の政治家。2024年1月現在は安全保障会議副議長・統一ロシア党首・軍産委員会第一副委員長を務めている。2008年5月に大統領に就任した時、当時は自身の前任だったプーチンを首相に指名してタンデム体制を始動させ、この時点で両者は友好関係にあるとの見方が支配的であった。
経歴
1965年9月14日にソビエト連邦のロシア・ソビエト連邦社会主義共和国のレニングラードに誕生した。1987年にレニングラード大学（現在のサンクトペテルブルク大学）の法学部を卒業してここの大学院に進学し、1990年に専門の私法分野で博士号を取得した。その後は1999年までサンクトペテルブルク大学で非常勤講師として勤務し、法律の専門家として私法の教科書を共著で執筆した。
1990年5月にサプチャークがレニングラード市ソビエト議長に就任し、同年6月にその議長参事官に就任した。この時に同じく参事官だったのが同郷にして大学の同窓生でもあるウラジーミル・プーチンで、当時は自身の同僚として勤務しており、1991年1月までこの役職を務めていた。同年6月からプーチンが議長を務めるサンクトペテルブルク市渉外委員会で法律顧問として勤務し、1994年3月にプーチンがここの第一副市長に就任するとその顧問も兼任した。
1999年8月にプーチンが首相に就任すると、所謂サンクト派と呼ばれるサンクトペテルブルク出身者を要職に登用するようになる。自身もその中の1人で同年11月に官房次長に任命され、同年12月にプーチンが大統領代行に就任すると、それに伴って大統領府副長官に就任する。
2000年ロシア連邦大統領選挙では、プーチン陣営の選挙対策本部責任者として大統領の当選に貢献し、ロシアで最も有力な政治家の1人に台頭する。同年6月に大統領府第一副長官に就任し、同月にガスプロムの取締役会議長（会長）・2001年6月に副会長・2002年6月に再びガスプロムの会長を歴任した後、2003年10月にアレクサンドル・ヴォローシンの後を追って大統領府長官を務めた。
2005年11月にプーチンによって第一副首相に任命され、保健・教育・農業・住宅の建設の4つの分野の改革で社会基盤の整備を目指す優先的国家プロジェクトを担当した。第一副首相に就任した事に伴い、同じくこの官職にあったセルゲイ・イワノフと2007年9月に首相に就任したヴィクトル・ズプコフなどと共に、プーチンの最も有力な後継候補の1人と取り沙汰されるようになる。
2008年ロシア連邦大統領選挙に当選して同年5月に大統領に就任し、その思想は前任のプーチンよりもリベラルだと看做されていた。大統領としての課題はロシアの経済と社会を近代化し、石油とガスに対する依存を軽減する事を目的とした広範な近代化プログラムで、在任中の2011年2月にアメリカと新戦略核兵器削減条約を締結した。2008年8月にロシア・グルジア戦争に勝利して大不況から回復し、自身も反汚職キャンペーンを開始したが後に汚職で告発された。
2012年5月に1期4年で大統領を退任し、その後任は2012年ロシア連邦大統領選挙で当選したプーチンに引き継がれた。同月にプーチンから首相に任命され、それによる抜本的な憲法改正を可能にするべく2020年1月に内閣総辞職を表明した。同月にミハイル・ミシュスティン連邦税務局長官が後任の首相に充てられ、自身は新たに創設された安全保障理事会副議長に任命された。
外交
アメリカ合衆国
2008年11月に年次報告演説で南オセチア紛争（同年8月）・世界金融危機（2007年9月）はアメリカの1極支配が原因だと主張し、アメリカの1極支配に強く反発している。南オセチア紛争・ミサイル防衛などでのアメリカに対する強硬姿勢は新冷戦の勃発であると言われる事もあり、「我々は新冷戦を恐れない。」と発言しているが、プーチン首相は新冷戦の勃発を否定している。
日本
2008年7月に北海道の洞爺湖サミットに出席するべく訪日し、福田康夫との首脳会談で「北方領土問題が解決されれば、両国関係が最高水準に引き上げられる事に疑いは無い。」などと述べ、北方領土問題の解決に意欲を示した。同年11月に麻生太郎との会談でも「北方領土問題の解決を次世代に委ねる事は考えていない。」と述べ、解決に前向きな姿勢を示した。
2022年2月ロシア・ウクライナ戦争が開戦し、同年3月に制裁措置の一環で日本から資産凍結の対象者に指定され、同月に北方領土問題を含む日本との平和条約を締結する為の交渉を中断すると発表した。2023年1月に日米首脳会談を巡って岸田首相が恥ずべきアメリカに対する従属に陥っていると非難し、「アメリカの付き添い人でしか無い。恥であり切腹するしか無い。」と発言した。
私生活
- 1993年12月に小学校・中学校時代の同級生であるスヴェトラーナ・メドヴェージェワと結婚し、1995年8月に長男のイリヤが誕生した。
- ドロテウスという名前の猫を飼っている。
- ロシアの大衆紙であるモスコフスキー・コムソモーレツ（2008年3月15日号）で、「この猫はメドヴェージェフの隣人であったミハイル・ゴルバチョフの飼い猫と喧嘩をしたが負けてしまい、その後1ヶ月間抗生物質を投与される治療を受けた事がある。」と報道されている。更に2度とこのような事をしない為に去勢までさせられたという。
- 2008年7月の北海道洞爺湖サミットでは、日本に親しむべく緑茶を毎日飲んでいると報道された。ロシアの大衆紙であるコムソモリスカヤ・プラウダ（2008年4月29日号）のインタビューでは、健康の為に寿司や刺身を食べており、村上春樹の小説である羊をめぐる冒険を最近読んでいると答えている。
- 尊敬する人物はニコライ2世。
- アップル社の携帯電話のiPhoneと同じくアップル社のパーソナルコンピューターであるマッキントッシュを愛用している。2010年6月にアメリカを訪問した際にはアップル社よりiPhone4を贈られ、ツイッター社ではアカウントを開設してツイートした。そう言えばジョブズと話していた映像があったな。
汚職
現職の首相として汚職追放の旗降り役をしていたが、アレクセイ・ナワルニーによって元同級生などが代表を務める団体を悪用し、巨大な邸宅・ワイナリー・ヨットなど莫大な不正蓄財をしている事が明かされた。以降はプーチン大統領に対するロシア国民の支持率が依然として高いものの、メドヴェージェフ首相に対しては不支持率が支持率を上回るようになっている。
関連タグ
ロシア ウラジーミル・プーチン ロシア連邦大統領
