概要
『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』に登場する天帝国使徒聖第一席であるヨハイムとネビュリス皇庁の第1王女イリーティアのカップリング。
イスカとアリスと同じく敵同士の禁断系カップリングに見えるが、接点と言えば6巻でイリーティアがイスカへ戯れに同じく剣を使う使徒聖一席のヨハイムの名を挙げ、どちらが強いのかと問うたくらいで両者にこれといった接点はない。
というより次巻7巻では最悪中の最悪の接点ができる。
皇庁襲撃においてヨハイムが女王ミラベアを追い詰めた際、母の身代わりとして躍り出たイリーティアを斬って瀕死の重傷を負わせた挙句にその場に居合わせ激昂したアリスへ盾代わりとし、挙句に王家の血と星霊に反応する王宮のセキュリティをクリアするためのセキュリティーキー扱いするなど外道な振る舞いをしている。
ネタバレ
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しかし、これは帝国との内通の容疑を晴らし、自然な形で皇庁を離れるためにイリーティア自身が企てた姦計に過ぎなかった。
そもそも『人と星霊の統合』を完成させつつあった彼女にとって斬撃など物の数ではなくヨハイムの剣に斬られ連れ去られることは始めから織り込み済みであった。
取引をした八大使徒と改めて共謀関係を結ぶと、ひとまずの部屋へと案内する役割を自らを斬ったヨハイムが買って出てイリーティアは従順に従った。
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あなたが世界最後の魔女ならば、俺は世界最後の騎士になる
実は二人は皇庁時代からの唯一無二の最愛の主従である。
ヨハイムは生まれ持った星霊が弱かったために星霊部隊に入れず落第するという挫折を味わっていた。
夢破れ、皇庁という星霊至上主義の国でただ一人だったヨハイムに声をかけてくれたのが、王家に生まれながら同じく生まれ持った星霊の弱さで苦しめられたイリーティアだった。
『私たち似た者同士ね』
そう笑って手を差し伸べたただ一人の王女に皇庁のノケモノであった騎士は唯一無二の忠誠を捧げた。
それ故にたとえ演技で自分の斬撃などものともしないとしても、その最愛の主を斬ったことはヨハイムにとって想像を絶する苦悶であり、直接本人にもう二度とあんな命令は聞かないというほど。
星霊と大星災の融合が進み、どんなバケモノになっても怖がらないで欲しいといつになく震えるイリーティアをヨハイムは固く抱きしめる。
「イリーティア様」
「俺があなたの盾だ。あなたが世界最後の魔女ならば、俺は、その魔女を守る世界最後の騎士になると約束しよう」
それが唯一の理解者となってくれた王女への答えだった。だからこそ自分はあなたのために戦うのだと告げる。
「俺を疑うな。俺を信じろ。俺を使え。俺に命じろ。あなたがあなたで在るかぎり、俺は、あなたの騎士で居続ける」
どこまでも頑固な騎士に美しき魔女は涙を堪えるように瞑目する。
そして世界最後の魔女と世界最後の騎士は改めて誓い合う。
「ヨハイム」
「はい」
「一緒に世界を壊しましょう。そして一緒に、この星に真の楽園を育みましょう。どんなに弱い人間も星霊使いも差別されない楽園を創るの」
「はい」
「帝国は邪魔ね。だって星霊使いを迫害するもの」
「皇庁もです。強い星霊使いが、弱い星霊使いを支配します。弱い星霊使いが、星霊をもたない人間を見下します」
「天帝も」
「始祖も」
「星(ルゥ)も――」
「月(ゾア)も――」
「太陽(ヒュドラ)も――」
「八大使徒も――」
「ネビュリス王家も――」
「星霊さえも――」
「みんな私が壊してみせるわ。私は、そのための世界最後の魔女になる」
こうして世界から弾かれた魔女の姫と裏切りの騎士は、復讐(かくめい)のための共犯者となった。