「すべての? それは果たして本当か」
「それは夢だ。女王よ」
「この国は楽園などではない。欺瞞の夢がここで終わり、そして世界は生まれ変わる」
CV:榎木淳弥
概要
使徒聖の現第一席。『瞬(またたき)』の騎士の二つ名を持つ細身の長剣を提げ甲冑とコートが一体化した専用の戦闘衣を着こんだ紅の髪の大剣使い。事実上クロスウェルの後任に当たる。
本来は天守府に常在しており、天帝の傍に常に控えていなければならない立場だが、八大使徒の依頼で女王捕獲作戦のメンバーに選ばれている。
人物像
寡黙な人柄で滅多に口を開かない。ただ上記の女王捕獲作戦に並々ならぬ意欲を持ち「女王は俺が狩る」と戦意を滾らせ、対面した女王ミラベアへも全ての星霊使いの楽園など夢に過ぎないと辛辣に斬り捨てるなど皇庁――延いては女王へ尋常ではない敵意を持っている。またミラベアの術のカラクリや皇庁の切り札たるアリスリーゼが王宮にいないことを予め把握しているなど皇庁自体に深い情報網を持っている節がある。
能力
女王の護衛を務める星霊使いを一切の物音なく倒すばかりか、瞬間転移とまで錯覚する足捌きに風の星霊術の結界を突破するほどに速さと力強さが、とてつもなく高い次元で均衡した機動力を体得した剣技を誇り、歴戦の強者であるミラベアをして「とてつもなく鋭い」とまで畏怖させるほど。
同じく剣を使うイスカからも星霊使い特化であり白兵戦の訓練を受けていない自分では、競っても精々一太刀、二太刀目で後れをとって、三の太刀で押し負けるだろうと高い評価を受けている。
関連タグ
キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 天帝ユンメルンゲン
ネタバレ
ここから先は作品の重要なネタバレを含む為、閲覧注意。
フルネームはヨハイム・レオ・アルマデル。
その正体は皇庁出身の星霊使いでありながら帝国に寝返った裏切り者。ミラベアに対しては「自分はあなたを知っていたが、あなたは自分を唯の敵としか見なかった」と哀れみと共に吐き捨てている。
星霊使いであるその特性を生かしてミラベアの「星霊使いを除いた敵を倒せ」と指示した星霊術を掻い潜り、冷徹と哀れみをもってその傲慢を糾弾し止めの刃を振るい、一の太刀で女王の左腕を肩からほぼ皮一枚で断ち、続く二の太刀で途中で割って入ったイリーティアを斬った。
イリーティアが切られたのは彼女の策謀に過ぎず彼はその協力をしたに過ぎなかった。
実はイリーティアとは皇庁時代からの唯一無二の主従。つまりは皇庁の裏切り者で帝国の裏切り者ということになる。
元は星霊を宿しながらも術を発動させるだけのエネルギーがない星霊術欠乏症を患っているため皇庁にあって星霊使い未満というはみ出し者としてその日の食事にも事欠き、寒い中暖に当たることさえ儘ならぬその日雇いで辛うじて暮らす最底辺の生活をしていた青年。
星霊使いの楽園を謡いながら自分のような星霊の弱い者たちがあぶれている現実に常に鬱屈した想いを抱いていた。
そんな日々の中で公園で歌を披露しているイリ―ティアを見かける。彼女もまた星霊に関しては自分と似たり寄ったりで肩身の狭い城で過ごすよりも極寒とはいえ外にいる方がマジだという境遇に思うところはあったが、その時は同情ではなく側近の席がほぼ空いている彼女に取り入るという打算を抱き星霊部隊の試験に臨む切っ掛けとなった。
だが、現実は非情で二度に渡り圧倒的な星霊の力を前に落第するが、それでも星霊という生まれながらの才能だけで自分を見下す星霊使いたちへの敵愾心をばねに星霊術を封殺するための究極の先手必殺という図らずも黒鋼の後継と同一の戦闘理念を目指し、さらに星霊術欠乏症という星霊という自分にとっての異物を敏感に感じる絶対霊感を自分だけのシックスセンスへと昇華させ三度目の試験で現役の星霊部隊をも圧倒する体技と剣技を習得した。
だが、結果は組織としての観点から連携を乱すという理由で再び落第。
改めて星霊使いの楽園たる皇庁に星霊使い足りえぬ自分の居場所などないと悟る。
失意と失望の中、ほぼ衝動的な腹いせに王宮に忍び込み、近衛兵を任された星霊使いを素手と投石で圧倒する。だが湧き上がってきたのは、落第した自分にも容易くたたき伏せられる連中がただ星霊が強いだけでのし上がる現実に対する憤りと諦観だった。
その最中で公園で見かけたイリーティアを再び見つける。だが、その王女の瞳は赤く腫れ、その表情は全てを厭うような翳りがあった。
自分と似たような瞳にヨハイムは声をかけて這い出るが、その際に彼女が数年前に見かけた程度の自分を覚えていたことに驚く。
そして、互いに皇庁への嫌悪を吐露し合い自棄まじりに自分が皇庁も帝国も全部壊そうと吐き捨てると、イリーティアは何時にない真摯な目で本当にそう思ってくれるのかと問いかけ、その揺るがない眼光に彼女はまるで諦めていないと悟り、彼女のそれ故にすべてを破壊する真の魔女になるという決意にも誰も笑えるはずがないと肯定。その場で主従の誓いを交わす。
その翌日にはイリーティアの近衛兵に取り立てられるが、それは表向きの話で来るべき時まですべての時間を己の鍛錬に当てた。何者からもイリーティアを守れるように。
自分に声をかけてくれた同じく皇庁に居場所がないイリーティアに唯一無二の主君として忠誠を誓い、イリーティアも自分の唯一無二の騎士として心からの笑顔と真摯な信頼を寄せている。
星霊至上主義に染まった皇庁のみならず、星霊使いを差別する帝国を破壊することを誓い合う。後に帝国へと渡るイリーティアを追うために災厄の力が凝縮された液体で己の星紋焼き消し、これにより皇庁と完全に決別する。
そして帝国の地で災厄の力に苛まれる彼女を心身ともに支え絆を深めていく。
上記のように皇庁の星霊至上主義により爪弾きにされたことから女王をはじめとした強力な星霊使いたちの謳うすべての星霊使いの楽園に激しい敵愾心と憎悪を抱いており、その欺瞞を壊すために怪物と化したイリーティアを誰より気高い理想を宿した姫と慕い敬愛するとともに一人の女性として愛している。
大星災との完全融合により強大な力を獲得したことで生来の知略に隙ができたイリーティアを補うかのように八大使徒の悪足掻きを看破し、星霊使い特化という主の天敵に等しいイスカの星剣の刃を代わって迎え撃ち、タリスマンの戦術により消耗しミゼルヒビィの追撃から守るなど、その行動と在り方はまさしく最愛の姫を守護する騎士そのものである。