「星剣、手放すな」
「その剣が、世界を再星する唯一の希望だ」
概要
CV:鳥海浩輔
『黒鋼の剣奴』の二つ名を持つ、かつての使徒聖筆頭にして帝国最強の剣士。
物語開始の2年前、イスカとジンが第907部隊に配属される際に行方をくらまし現在は消息不明となっている。
人物
長身黒髪に黒のロングコートを羽織った佇まいの男。
かつては天帝直属の護衛である使徒聖の第一席を務めていたが、主君である天帝を呼び捨てにし気まぐれな命令にもぞんざいな対応をするなど単なる主従関係ではないことがうかがえる。
普段は無口、無感情、常にけだるげな雰囲気を持つ掴みどころがない性格。一方で常にあらゆる不都合を想定(シミュレート)する癖をもち、「何をするにも確実に成功する手段で、確実が見込めないなら時を待て」と助言するなど思慮が深い人物でもある。
物語開始の十数年前に使徒聖の座を退き、後継者を探す為に帝国中から見込みのある若者をスカウトし「鳥の巣」と呼ばれる養成機関で鍛え上げた。なおその訓練は苛烈の一語に尽き、最後まで残ったのはイスカとジンのみである。
後継者に選んだイスカのことを今までの後継者候補の中で「一番見込みがなかった」と評しながらも「自分に一番似ていたから」とも評していた。
さらに後継者の条件は「頭が悪いこと」という一見意味不明なものであり、それ故当初は「一番見込みがあった」と評したジンは頭が切れるが故に除外となった。
イスカに「星剣」を託す際に「星剣こそが世界を"再星"する唯一の希望だ」と意味深な言葉を残して消息を絶つ。
何故か百年前の人物である大魔女ネビュリスに存在を認知されている。
関連タグ
キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 イスカ(キミ戦) ジン・シュラルガン
ネタバレ
ここから先は10巻以降の重要なネタバレを含む為、未読の方は閲覧要注意。
実は始祖ネビュリスの弟であり、本来の名はクロスウェル・ゲート・ネビュリス。上記の名前は簡単なアナグラムに過ぎない。
厳密にはエヴ(後の始祖ネビュリス)と彼女の双子の妹のアリスローズ(後のネビュリス1世)の遠縁の義弟にあたる。
つまりネビュリス姉妹と並んでアリスたち王家の遥かに遠い先祖にあたる。
自身もまた姉たちやユンメルンゲン同様に百年前の始原の星脈噴出泉により星霊と大星災に憑依された始まりにして高位の星霊使いである。エヴやユンメルンゲンには及ばないが自身も星霊との融合で二人同様に百年の時を生き続けている。
百年前は、当時の帝都ハーケンヴェルツへ鉱夫として出稼ぎに来た少年で居候することなった親戚のネビュリス姉妹と一緒に貧しいながら楽しく暮らしていた。
天帝であるユンメルンゲンとは百年前、彼が皇太子だった頃からの知的好奇心からスリをされて以来の友人関係であり、天守府へと秘かに通される関係であった。
しかし、その日々も自分たちがそうとは知らずに掘らされていた星脈噴出泉(ボルテックス)による星霊憑依によって一変し崩壊する。
星霊の憑依により人ならざる力を得たことで異端扱いされ、自分たちの生活は以前とは一変し、殊に長姉エヴは最古にして最強の星霊を宿したばかりか星霊との融合を果たしたことで精神面も以前とは別人になりつつあり、次姉アリスローズも憑依された大星災に適応しきれず体調を崩すなど、かつての日常は完全に失われた。
さらにユンメルンゲンも星霊と大星災の憑依により人ならざる姿へと変貌し、その彼からしても事態の悪化は止められないと告げられ、徐々に追い詰められる。
遂には星霊に憑依された仲間の一人が言いがかりで逮捕された挙句、激昂したエヴがその圧倒的な力で力づくで取り戻したことで星霊使いと帝国の関係は取り返しのつかない地点にまで到達し、ユンメルンゲンもその張本人たるエヴも帝国にはもはや星霊使いの居場所はないと判断し、帝国を離れることを決意(ユンメルンゲンはその立場や内部から帝国を変えるため残留を選んだ)。
しかし、天帝の重臣であり星霊使いへの迫害を加速させていた八大長老はこの脱走計画を察知し、狡猾かつ悪辣に仲間の一人を脅して寝返らせ、脱出日に脱出するための列車を爆破し、星霊使いの暴動という言いがかりで鎮圧に乗り出し、帝国軍と星霊使いたちの戦いに発展。その最中に戦いを止めようとしたアリスローズが銃撃され、エヴは赫怒とともに帝国軍を蹂躙し、必死に制止しようとするが、怒りと憎悪に支配された姉には届かなかった。
だが、そこへユンメルンゲンが介入し、この戦いのカラクリと真に倒すべき星の災厄の存在を伝えるが、最愛の妹を撃たれたエヴは聞かず、ユンメルンゲンも帝都の民を守るため応戦の構えを取ろうとするが、そこへ割って入り、自身が帝国へ残ってユンメルンゲンを手伝い帝国を変えると宣言し姉を説得し、どうにか思いとどまらせる。
その後、姉たちが皇庁を築く一方で、自身は上記の宣言通り、使徒聖筆頭として天帝の座に就いたユンメルンゲンを支える為に帝国に残るが、数年後にアリスローズが死去したことで再び憎悪のタガが外れたエヴが帝国を滅ぼすべく帝都に侵攻し、次姉が望んだのは復讐ではないと下記の星剣を手に対立し決別することになる。
大陸の限界領域に住む『星の民』に掛け合い、星の中枢に眠る災厄である『大星災』を倒すことができる「星剣」を手に入れるものの、星霊使いである自分では星霊を超える大星災を倒すことができないと悟り、大星災に挑むことができる普通の人間に星剣を託すことを決める。
自信の後継を選ぶ条件として身体をはって戦いを止めようとした次姉アリスローズなら誰を選べば一番喜んでくれるかという基準があり、それはたとえば――
『帝国と皇庁の和平が実現できると本気で信じ込めるほどの、底なしの楽天家』
『帝国人でありながら、監獄に囚われた魔女を見かねて脱獄させるほどの平和惚け』
姉の叫びに応えてくれる頭が悪い帝国兵というのが、クロスウェルが後継者に求める資質であったのだ。
そして、幾多の後継者候補の中で唯一その資質を持ち得る者こそが、一番見込みがない馬鹿弟子であるイスカであった。
だからこそ、その馬鹿な後継が後先考えない脱獄事件を起こした時も――
それでいい。
お前は、それくらい後先考えない奴でいい。
お前の後ろにはジンがいるだろう?
音々がいて、大人の隊長(ボス)がいるだろう? お前を後ろで支える奴はちゃんといる。
だから――
「イスカ」
「忘れるな。その剣が、世界を再星する唯一の希望だ」
その後、イスカたちがユンメルンゲンとともに百年前の真実を知ろうとする中、自身は星剣のレプリカを手に再び帝都を焼き尽くさんとする義姉と対峙し帝国を変えると言うおまえとユンメルンゲンは間違っていたと糾弾され自身もそれを否定しなかったが、今を生きる帝国人であり自らが後継に定めたイスカと戦ったことを言及し、弟子は今までの帝国兵とは違ったはずと再度矛を収めるよう説得するも姉を激昂させる結果に終わり再び激突するが、災厄と一体化した魔女の気配を感じて休戦し共に対峙するも災厄の力の前に無力化される。
人間関係
イスカ 弟子で後継者。一番見込みがない弟子で姉の助けに応えてくれる頭の悪い後継者。
ジン・シュラルガン 弟子であり後継者のストッパー。一番見込みがある弟子であったが、頭が切れるが故に後継にはなり得なかった。
天帝ユンメルンゲン 親友で主君。世界を再星するための戦いに身を投ずる主従を超えた百年前からの同志。今なお、お互いにぞんざいかつ気安く接している。
エヴ・ソフィ・ネビュリス 始祖となり袂を分かってしまった最愛の長姉。仲違いはかなり堪え、口数が少なくなった。
アリスローズ・ソフィ・ネビュリス 皇庁の初代女王となった最愛の次姉。帝国に撃たれ皇庁を築き女王となってからも決して怨まず、むしろ最後まで戦争を止めるため力を尽した。自身の後継者の条件は、彼女の願いが根本にある。
八大使徒 かつての八大長老。イスカとジン曰く皇庁よりも毛嫌いし警戒している存在だが、それも星霊に憑かれた多くの仲間を己らの私欲のために迫害し、次姉を死に追いやり、長姉を復讐鬼へと駆り立てた、不俱戴天の怨敵に他ならない存在なのだから至極当然である。
クロスウェルが星剣を作らせた大陸の限界領域に住む種族。未だに詳細こそ不明だが、星霊と密接な関わりをもち、星の中枢にある星霊エネルギーを蓄えながらもとても脆い石『星晶』を十分な強度にする加工技術を持つ。星剣を作った後もクロスウェルから何事か依頼されている模様。しかし、彼曰くひどく気まぐれらしい。