ロックマンを作った男たち_ロックマン誕生伝説
ろっくまんをつくったおとこたちろっくまんたんじょうでんせつ
ありがひとし氏により実話をもとに書かれた「ロックマン」「ロックマン2」の発売までの経緯を描いたフィクション漫画。当初の企画では「初代ロックマン」から「ロックマン6」の開発秘話、SFC版「ロックマンX」の開発秘話の二部構成で描かれる予定であったが情報量が膨大過ぎて収まらなくなったため、変更となった。この時の取材には当時まだCAPCOMのスタッフだった稲船敬二氏が応じており、この時にボンドマンの存在が明かされた。
実は『ロックマンリミックス』連載前の作品である。
「ロックマン」「ロックマン2」の開発までの経緯とそれにまつわるエピソードをフィクションを交えながら描いたものでロックマンのゲームシステム、ボスの弱点・武器入手に関する理由などが短いながらまとめられている。本作は「コミックボンボン」に掲載されて以降、単行本での収録がなかったが新装版『ロックマンメガミックス』に収録される形で安易に読めるようになった。
みなさんおなじみのロックマン・・・・ファミコンはもちろん、ゲームボーイやスーファミ、メガドライブでも会うことができます。でも、決して最初っからこうだったわけではありません。今や世界に飛び出し、とどまるところを知らぬロックマンパワー・・・・その誕生には知られざる苦労があったのです。
泉建二
本作の主人公に当たるCAPCOMの新入社員のグラフィッカー。主にロックマンの敵キャラクターのデザインなどを担当する。監修の稲船敬二氏がモデル。
神明
企画担当。ロックマンの生みの親であるA.K氏がモデル。「ロックマン」の開発の許可を得るべく上司に直談判し、承認してもらう。自分が面白いと思った場面を何度も何度も繰り返しプレイして、何が面白いのかを研究するなど仕事に熱心な一面がある。
本多
プログラマー担当。ゲームの容量の都合上で神明と衝突しながらも彼の熱意を熟知しており、試行錯誤を繰り返しながら「ロックマン」の開発に挑む。神明に渡されたロックマンのパターンが多いため「これじゃあ敵が全然出せない!(汗)」と困ったとか。ロックマン特有のステージ選択は彼のアイディア。これはゲームセンターで最初のステージを何度も失敗して飽きて投げ出してしまった客の様子を見たからだという。モデルはH.M.Dこと松嶋延之氏だと思われる。
桃内
音楽担当。本作では唯一の女性。ロックマンの行動パターンで容量が圧迫してしまったため、曲の収録ができないと神明に抗議していた。「ロックマン2」のオープニングやワイリーステージ終盤の水滴が落ちる音などは彼女のアイディアという扱いになっている。おそらく「ロックマン」「ロックマン2」のサウンドスタッフだった松前真奈美がモデル。
本作ではロックマンは当初他のシリーズ同様に8ボスを出す予定だったことが明かされているが容量の都合上で神明が2体減らすという選択を取った。そんな彼に対して本多はロックマンの行動パターンをむしろ減らすべきだと抗議したが聞き入れてもらえず、デザインが捨てに出来上がっていたボンドマンはあえなく没となった。
ちなみにありがひとし氏のオマケ漫画では稲船氏がその存在を明かしている。ただ、取材当時は既にデザイン画が現存しておらず、ありがひとし氏が特徴を聞きながら書いたのだという(この絵に対して稲船氏は「こんな感じだった」と述べている)。おそらく「クラシックスコレクション」に開発中のボス案ラフイラストにボンドマンのイラストが収録されていなかったのもこれが一因だと思われる。
初代ロックマンをプレイしてくれた一人のファンから送られた一通の手紙に書いてあったロックマンを倒すボスキャラがキッカケとなり『ロックマン2のボスキャラを大募集!』という方針となった。(応募作品の中には、色んなアイディアが盛り込まれたボスキャラがデザインされていて決定には難航しめしたという。)
しかし、運悪くスタッフ一同はそれぞれ3か月後に別のプロジェクトを控えていた。
そんな中、神明は、「なら、次のプロジェクトが始まるまでに作らせてほしい!」と上司を説得。その甲斐あって通常のアクションゲームを製作するのにかかる期間の半分で「ロックマン2」を作ることになった。
だが、作業が急ピッチだったこととあるキャラの設定中に睡魔や締切の時間が迫っていることもあり半分寝ぼけかけた泉の作業を見て神明は『おいおい、俺達は今【ロックマン2】を作っているんだぞ? 初代の焼き直しじゃあない!』と衝突してしまう。
(が、調整していたあるキャラの誕生と「初代で出してあげられなかったから、2で出してあげたかったんです」という理由を知ることになった)
製作も順調に進むが、バグが発生してワイリーが倒せないという驚異が立ちはだかる。
ロックマン&スタッフVSワイリーのロックマン2販売をかけた戦いとなり、トライアル&エラーを繰り返しながらロックマンと共にワイリーを倒すことができたため無事にロックマン2が販売された。
本作ではスタッフのロックマンを製作するの当たる強い熱意が込められており、それは「ロックマン」「ロックマン2」においても強く表れている。
「ロックマン」
- 敵はアメコミ風に⇒アメコミの真似ではなくそのエッセンスを抽出して、子供が飲み込みやすいように作り変える。
- ステージの選択⇒どんな腕前でも様々なステージを楽しむことができる。
- 子供の心を刺激するような仕掛け⇒メンコをヒントにボスの武器を使えるようにし、ロックマンが真の意味で一段強くなるということを表す。
- ボスの弱点⇒ジャンケン(遊び道具が変わっても子供が遊びに求める興奮の質は同じはずで昔ながらのルールを現代風にアレンジさせて復活させた。)
- ロックマンのパターン⇒ただは突っ立ったり、走ったりするだけの球出し機械じゃない。だから、ダメージを受ければのけぞるし、バスターを撃つ際は構える。
「ロックマン2」
- 容量が初代の時の倍になったためやれる幅が広がった。
- スコアボードの撤去⇒出すキャラを増やすために外した。
- オープニングデモ⇒映画風に字幕を出すことで世界観や見栄えが良くなる。
- ステージセレクト⇒ボスの顔アップに。
- パスワード画面⇒字だけではかっこ悪いためデザイン的に変更。
- クオリティは前回の倍のつもり⇒一作目をプレイしてくれた子供たちが成長しているのにゲーム自体が成長しなければ意味がない。
- メカドラゴン⇒キャラデータとしては無理でも背景画面として書き、キャラデータ自体は頭部と尾のみに絞る。
- 足場の強制移動⇒キャラで作ったブロックを移動することによってドラゴンが問題なく飛べる。
これによってロックマンシリーズの足場が完成した。
- ロックマンの生みの親であるA.K氏であるが彼は「ロックマン3」の開発の前にCAPCOMを退社してしまった。
- 本作では2の終盤のエイリアン戦の調整が大変だったように描かれているがこれは編集担当が「終盤の達成感をもっと伝えやすく」するために加えたらしく、実際はそこまで苦労していなかったらしい。
- ありがひとし氏が最初に書いたロックマン漫画であるがこの当時はまだ原作のロックマンに合わせたデザインで描かれている。