屈指のロックマン愛好家、ありがひとしによる独自の世界観・設定が多く盛り込まれているのが特徴的。しかし、原作ゲームソフトによる設定も確実に押さえられている。
ロボットの存在意義や葛藤を描いた、シリアスで重いストーリーが展開される。とりわけ、作中におけるDr.ワイリーの描写は一品。
ある作品をリスペクトしてなにかをつくるということについての、ひとつの究極のかたちであろう。
続編はロックマンギガミックス。
ストーリー
ロックマン誕生
新版で初めて掲載された作品。新版と完全版、新装版第1巻に収録。
ありがひとし氏による第1作目『ロックマン』というべき作品。FC版「ロックマン」をベースにしている。普段のようにライト博士のお手伝いをこなしていたロックとロール。その頃、ライトナンバーズの兄弟達が突如、街中で破壊活動を開始した。
事態を見かねたロックは、ライト博士に自ら戦闘用ロボットへの改造を志願した。ここにスーパーロボット『ロックマン』が誕生したのである。果たしてロックマンは、兄弟達を救う事ができるのか?
ちなみにこの時点でワイリーセカンドナンバーズは50%の完成度でその中でもクイックマンはロックマンの右腕を瞬時に切断しているほどのスペックを誇っている。
破壊指令(厳密にはマニアニックス収録)
ボスキャラクターは『ロックマン』と『ロックマン2』を中心に登場している。
ある日、ライト博士に買い出しを頼まれたロックとロールを、街中で大規模な破壊活動を開始したワイリーのロボット達が強襲した。変身機能を取り外していたためロックマンへの変身が不可能な上、ロールを人質に取られて為す術がないロック。そんな彼の元へ駆けつけたのが、カットマンを始めとするライトナンバーズの兄弟達であった。この話はリミックスに収録された作品で本書に収録される際はリメイクされ、内容がかなり変化している。
R破壊指令
上述した『破壊指令』をフルリメイクした作品。基盤こそ同じだが、ストーリー展開は異なる。新版と完全版、新装版では第1巻に収録。
前作の事件の終了後、ワイリーに操られていたとはいえ、街中を破壊したライトナンバーズのロボット達は廃棄される事が決定してしまった。その決定に納得のいかないロックは単身、廃棄施設へと向かうが、それを阻むかのようにワイリーナンバーズのロボット達が破壊活動を開始し、ロックへと襲い掛かった。
一方、廃棄施設からウッドマンに救出されたエレキマン達は、ワイリー軍の軍門に下る事を要求されるが…。
この話では特にクイックマンの強さが驚異的に描かれ、ありがひとし氏のクイックマンへの愛情が強く表れている。
メタルハート
旧版では『ロックマンリミックス』と第1巻に収録、新版と完全版、新装版では第1巻に収録。
第3代目マザーコンピュータの就任式が中央管理ビルで行われる中、正体不明の謎の巨大ロボットが街を襲撃した。ライト博士と共に就任式に呼ばれていたロックマンは出撃し、事態の鎮圧に挑むが、先に巨大ロボットに攻撃を仕掛けていたのはワイリーの配下である筈のシャドーマンを始めとしたライトとワイリーが共作したロボット達であった。
ロックマンは彼らと手を組み巨大ロボットを追うが、巨大ロボットの目的は意外な所にあり…。
この話は『ロックマン3』の後日談なのだが詳細は『ロックマンギガミックス』の「アステロイド・ブルース」で明かされる。ちなみにブレイクマンは一コマしか登場しない。
復活の死神
旧版と完全版、新装版では第1巻に収録、新版では第2巻に収録。
『ロックマン4』の事件からいくらか月日が経ったある日、Dr.コサックは自らの著書「人間とロボットの未来」が1000万部を超え、テレビ番組へ出演していた。しかしそこへマントを羽織った謎の男が現れ、コサックを連れ去っていく。同じ頃、テレビでそれを見ていたロック達の元へボロボロになったリングマンが現れる。彼の話によると、コサックの研究所が何者かに襲われたのだという。
ロックマンに変身し、急いでコサックの研究所へ向かうロックとロール。果たしてコサックを連れ去った犯人は何者なのか…。
戦士の休日
旧版では第1巻に収録、新版と完全版、新装版では第2巻に収録。
ある日の夕方、仕事を終えたカットマン達は泥棒ロボットを見つける。捕まえようと駆け寄るが、黒いコートの男が先に捕まえたようだった。そこへ謎の黒いロボットが現れ、男へ勝負を仕掛ける。しかし男は戦わずにどこかへ去ってしまった…。
それから数日後、息抜きにと遊園地へ遊びに来たロックマン達。だがそこで働いていたのは『時給戦隊アルバイター』と称したワイリーナンバーズであった。
なお、作中ライト博士が遊園地に行かなかった理由として、カットマンが「未来に残す遺産がどうとか」というシーンがあり、ロックマンの後継者の開発を始めたのはこの頃と解釈されている。
パワーバトル/戦士の宿命
旧版では第1巻に収録、新版と完全版、新装版では第2巻に収録。
すっかり日の暮れた電気街、そこでロール達は買出しをしていた。ある店へ入るとそこで店番をしていたのはダークマン達で、ロールを見つけた彼らは人質にしようと企む。が、そこにフォルテが現れ何故かロール達を助ける。
しかし人質というアイデア自体は良いと思ったのか今度はフォルテが彼女を誘拐し、ロックマンをおびき寄せる。
なお、新装版にて題名が右記に改題されている。
史上最強の敵
旧版と完全版、新装版では第2巻に収録、新版では第3巻に収録。
『ロックマン6』をモチーフにした1冊分に及ぶ初の長編作品。
世界ロボット連盟が発足してから1年。連盟は世界平和の為に世界中の科学者にロボットの開発を依頼、そのロボット達を戦わせる「世界ロボット選手権」を開催した。
しかし会長のミスターXは突如そのロボット達を操り我が物とし、世界征服を宣言。が、またもミスターX=ワイリーはロックマンに征服を阻止されてしまう。ワイリーを追い詰めたロックマンは彼に向かって躊躇無くバスターを打ち込むが、そのワイリーは影武者であった。その様子を見ていたワイリーは何か分かった様子で不敵に笑う。
そして帰ってきたロックマンは人間の排除を全世界に向け宣言していた。ロックマンに一体何があったのだろうか?
誰が為に
ロックマン9アレンジサウンドトラックのライナーノートに収録。『ロックマン9』のプロローグにあたる物語。
世界ロボット連盟が提案した「ロボット新法」。使用年数が過ぎれば、初期生産された特殊なロボット以外の個体は廃棄処分という案はライト博士の反対も空しく可決されてしまう。
法律が適用され日々数千体のロボットが期限切れで廃棄されるようになった中、町では突如8体のロボット達による反乱が勃発。その8体全てがライト博士が作り上げたロボット達という事が判明し、彼は警察に連行されてしまう。その際、「戦わないようにしてくれ」とロックに言うライト博士。
一方、独断で兄弟達を止める為に立ち向かうカットマン達。廃棄されるロボット達の悲哀を語り、6体を迎え撃つスプラッシュウーマン達。街中で繰り広げられるライトナンバーズ同士の死闘の末、8体の悲哀を感じつつもついに倒れてしまうカットマン達。
深刻化する事態を前に、ついに戦う事を決意するロック。果たしてロックマンは新たな兄弟達の反乱を食い止める事が出来るのか?
この話は「ロックマンマニアックス」または「新装版ロックマンマニアックス下巻」にも収録されている。
ロックマンナノミックス
2021年5月5日にありがひとし先生のTwitterに投稿されたショートストーリー。
ロックマンギガミックスの後に用意されていた企画だったが諸事情でお蔵入りになった。
現在、ダストマンが主人公の「When the DUST settles.」のACT1~ACT3が公開されている。
余談
- 本作のロックマンとロールは原作ゲームと比べて大きく頭身が伸びて違和感を感じるかもしれないがこれは池原しげと先生版のロックマンで既にゲーム準拠のロックマンが描かれたため、作品としての差別化のためだという。
- 原作ゲームではクロスオーバーを除いて登場することのなかったカリンカであったが本シリーズではコサック博士と共に数回登場し、そのたびに成長している。
- 時給戦隊アルバイターは本作オリジナルの設定で次回作の『ロックマンギガミックス』でも度々登場している。間違っても地球戦隊でも宇宙戦隊でもない。
- 原作では『ロックボード』、『ロックマンズサッカー』、『ロックマン7』のパスワード画面などと地味な所にしか出てこないレゲェが本作では頻繁に登場している。
- ロックマンシリーズでのコミカライズ作品ではゲスト含め、オリジナルキャラが登場しているが、本作では採用されていない。また一般市民はコミカライズ作品と比べの物にならないほどのタチが悪い。
- 現在、ありがひとし氏はロックマンシリーズのコミカライズから手を引いており、最新作である『ロックマン11』はコミカライズしていない。
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ロックマンギガミックス …再刊行された「メガミックス」の続編にして完結編。