概要
戸塚慶文の漫画『アンデッドアンラック』で、主人公のアンディに潜む主人格の男・ヴィクトルと組織(ユニオン)の女ボス・ジュイスのカップリング。
数奇な運命に翻弄されている男女である。
2人の会話
ヴィクトルとユニオンの総力戦となった際、UMAバーンの加工物である剣を駆使して戦うジュイスに、ヴィクトルは「やるなジュイス」と声を掛ける。またジュイスもヴィクトルに対して「正義も大志もない者」と口にしており、かつて二人は面識があるかのような口ぶりをしていた。
しかし組織の青年・シェンによれば、アンディはヴィクトルを200年近くまともに外に出していないらしく、年若いはずのジュイスがヴィクトルを知っているのは無理があると指摘していた。また風子がアポカリプスを介して過去の記憶を見た際、ヴィクトルとジュイスが二人で円卓を囲っている姿が映し出されていた。その真相とは…。
関連項目
※以下、重大なネタバレを含みます。閲覧注意。
二人の秘密
第36話において、ジュイスは円卓のメンバーたちに世界がループしている事実を伝える。その証拠を示すため、ジュイスは目の前にいる仲間の一人・アンディへ声を掛ける。
「右耳の裏のつけねに、ホクロがあるだろう?」
傍にいた風子がアンディの耳の裏を確認すると、耳を引っぱっらないと分からない所にホクロがあった。
こんな不明慮な位置にあるホクロを、なぜジュイスが知っているのか……その理由を察した風子は、真っ赤になって慌てふためいた。
一方のアンディは落ち着いた様子で、冷静に「俺の時じゃない」と風子を宥める。
アンディの主人格・ヴィクトルがまだ顕在だった頃にジュイスはホクロを確認したのだと察する。
「…ヴィクトルと随分仲が良かったんだな」
「昔の話だ」
ジュイスは冷静に、嘗て2人は大人の関係を持っていたと仄めかした。その時の表情はどこか寂しく儚さはらんでいた。
ジュイスはアークを使い、そしてヴィクトルは不死の力によってループを繰り返し、途方もない年月を共に戦い抜いてきたのだった。
ヴィクトルの想い
第46話、UMAオータムの能力によって、アンディとヴィクトルの激闘が行われる。
その後、ヴィクトルは己を制した2人・アンディと風子との対話に承諾する。彼は、風子から「ジュイスさんとは どういったご関係で…」と質問を受ける。風子はかつて古代遺物の記憶から、年若いヴィクトルとジュイスが共に協力してUMAと戦ってきた様子を見ていた。
ヴィクトルは、ジュイスの事や、嘗ての仲間たちと神に挑んでいた過去を語り始める。
最初の内は良かった。一歩一歩課題を乗り越えクリアに近づいていた。
しかし何百何千何万何億と年を経て立ち向かっても敗北する不条理な闘いの中、神の命には決して届かないと悟った。
このままでは永遠の神の掌で踊らされるだけ。ヴィクトルは神との闘いから降りようとした。
しかしジュイスは、神との闘いを諦めなかった。
一つ一つ最善手を打てば、いつか神の死に近づくと確固な信念を抱いていたジュイス。
「馬鹿な奴だ… 不死じゃないんだ 死んで楽になればいいものを…」
だからこそ、彼女を殺そうと決めた。
その決意に風子は「なんで そんな…」と問いかけた。
ヴィクトルの答えは―
『 惚れた女が苦しむ様を 見たい男がどこにいる 』
それは独りの男が長い年月の間、真摯に抱き続けた真心であった。
自分のためではなく愛しい女性のため、彼は神に抗うことを諦めたのである。
だが気が変わる。
戦神ともいわれた己を制したアンディと風子がみせた否定能力の進化を目の当たりにして、自身と最愛の女性を苦しめる元凶、「神」を倒す希望を見出した。
神への勝利を目の前にいる2人へ託して、ヴィクトルは一先ず静かに身を引くのだった。
歴戦の戦士であるヴィクトルが、一人の男として本心を告げた一幕。
そして後に、彼の想い人であるジュイスも似たような想いを抱いていた事が判明するのだった。
ジュイスの想い
ジュイスは単身、組織を裏切ったビリーの元へ交渉に赴く。
古代遺物の正体やアークのエネルギーが尽きかけている事実を伝えると「一人で抱え込まなければもっと違う状況もあった」とビリーから糾弾される。ジュイスは「事実を知る者はもう一人いた」「しかしその男は自分の命を奪おうとした」と語る。アーク欲しさにかと返すビリーにジュイスは答える。
「違う 私を想ってだ」
「ヴィクトルだよ 私のループを力づくで止めようとしたんだ」
自分を苦しみから解放するために、一人の男が涙ながらの決断をした過去を思い返す。
ジュイスは微笑みながら、ヴィクトルへの想いを口にするのだった。
「ただ好きな人(アイツ)の 笑った顔が見たくてな」
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