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ヴェニスの商人

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ゔぇにすのしょうにん

ヴェニスの商人とは、ウィリアム・シェイクスピアの著作による戯曲。 シェイクスピアの初期に制作された喜劇の一作であるが、主に悪役とされたユダヤ人の高利貸しに対するあまりにもひどい扱いから、今でもユダヤ教徒から強い批判を受けている問題作でもあり、『シャイロックの悲劇』ともいわれている。

「肉は切り取っても良いが、契約書にない血を1滴でも流せば、契約違反として全財産を没収する」

概要。

基本となるストーリーは、中世イタリアのヴェネツィア共和国と架空の都市ベルモントを舞台に繰り広げられる商取引と恋の喜劇である。

後述するあらすじの内容から、日本では「人肉抵當裁判」として紹介されたこともある。

タイトルの『ヴェニスの商人』とは有名なユダヤ人の金貸しシャイロックを指すのではなく、主役であるバサーニオの友人の貿易商のアントーニオのことである。

これは原題を見れば分かりやすいが、原題では、『The Merchant of Venice』と書き、merchantというのは小売商のような「商人」ではなく、むしろ「貿易商」を意味する。貿易で栄えたヴェニスが舞台になっているのはそのためである。

物語は高利貸しシャイロックが金を貸す際に取った、人命にかかわる内容の証文が現実になったことによって起こる裁判と、ベルモントの美しい貴婦人を射止めんとする若者の話を基軸とする。

Pixivでは、D-BOYS版の舞台のイラストがほとんどである。(メインイラストも)

あらすじ

ヴェニスに棲む青年のバサーニオは、架空の都市であるベルモントの富豪の娘であるポーシャに結婚を申し込む為に友人のアントーニオに借金をする。

当時、全財産をかけて商売をしていたアントーニオは、バサーニオに金を貸すことができず、仕方なく悪名高い高利貸しであるシャイロックから金を借りることにする。

その際、常々アントーニオに商売を邪魔されていたシャイロックは、契約書の中に「金を払えなかった場合は、アントーニオの肉1ポンド分をシャイロックに渡す」という一文を入れることで金を貸すことを許可する。

1ポンド分の肉を切り落とせば、その生命は無くなることからその契約に反感する二人だったが、結局のところこの契約を了承してアントーニオは金を借りることになる。

その後、バサーニオはポーシャの家の試練を潜り抜けてポーシャと結ばれることになるが、アントーニオの全財産をかけた貿易船は沈み、アントーニオは一文無しになってしまう。

借金返済が不可能になったアントーニオに対して、シャイロックは契約書通りにアントーニオの肉1ポンドを要求するが、アントーニオの窮地を知ったバサーニオは、アントーニオの代わりにシャイロックに金を払うと申し出る。

だが、あくまでもシャイロックはバサーニオの言い分を頑として聞かずに裁判に訴え、契約通りアントーニオの肉1ポンドを要求する。

そんな中、バサーニオの妻となっていたポーシャは、夫の友人であるアントーニオを助ける為にこっそりと若い法学者に変装してこの裁判の裁判官となると、シャイロックの言い分を認めてアントーニオに肉1ポンドを切り取ることを要求する。

しかし、裁判に勝って喜んだシャイロックに対して、ポーシャ扮する裁判官は、「肉は切り取っても良いが、契約書にない血を1滴でも流せば、契約違反として全財産を没収する」と命じて、肉を切り取ることを諦めさせる。

仕方なく肉を切り取る事を諦めたシャイロックは、それならばと金を要求するが一度金を受け取る事を拒否していた事から認められず、しかも、アントーニオの命を奪おうとした罪により財産は没収となる。アントーニオはキリスト教徒としての慈悲を見せ、シャイロックの財産没収を免ずる事、財産の半分をシャイロックの娘ジェシカに与える事を求める。そして、本来死刑になるべきシャイロックは、刑を免除される代わりにキリスト教に改宗させられる事になる。

その後、ベルモントに戻ったポーシャは、バサーニオに裁判の真相をすべて告白し、そしてアントーニオの船も奇跡的に助かり、物語は大団円を迎える。

主な登場人物

アントーニオ

ヴェニスの商人における主役。友誼に厚い交易商であり、親友であるバサーニオの起こしたある騒動により、シャイロックによって命の危機に追いやられることになる。

タイトルであるヴェニスの商人とは、彼のことである。ただし、物語の全体の立ち位置から見ると、これは物語におけるキーとなる人物であり、全体的な印象としては非常に薄い。

また、ユダヤ人、特に対立することの多いシャイロックに対しては非常に扱いが悪く、少なくとも21世紀の日本の倫理観からすると、むしろかなり悪人的に見える人物である。

シャイロック

この物語における悪役。アントーニオとの契約の際に、彼に大金を貸す代わりに、返済が遅れれば1ポンド(約450グラム)の肉を渡す言う証文を取り交わす。

役割としては冷酷非情な高利貸しと言う立場ではあるものの、その立場や名言から、非常に人気が高い。物語においてはむしろ、真の主役とも言うべき存在であり、後述の理由もあって、彼を主役とした悲劇も演じられる。

また、シェークスピア自身も彼に対しては何かしら思い入れがあったのか、本作における名言・名台詞は彼の口を通して発せられることが多い。

バサーニオ

この物語におけるトリックスター。大金を相続した令嬢であるポーシャへのプロポーズの為にアントーニオに金を借りようとしたことがきっかけで、アントーニオとシャイロックとの間に契約が結ばれる。

そしてその契約により、裁判が発生する。

ポーシャ

この物語におけるデウス・エクス・マキナ。アントーニオとバサーニオに降りかかった全ての問題を解決する存在。

反響と批判

上演当初は、単なる喜劇としてしか演じられなかった本作であるが、あらすじを見てもわかる通り、基本的にユダヤ人に対する偏見と悪意が強く表現された作品である

また、作品中の契約や法律に対する考えもキリスト教にとって有利な様にできており、あからさまに不公平となっている。

このことから、ユダヤ人の中には観劇中に隠れて涙を流した人もいるらしく、『シャイロックの悲劇』とも呼ばれた。

これは、当時のユダヤ人に対するキリスト教側からの偏見とユダヤ人に対する差別を知る必要がある。

シェイクスピアが活躍していた当時のユダヤ人と言うのは、国土を失って欧州各地に散らばって暮らしていた民族である。

キリスト教徒は信仰している宗教が違う事から、定住することもままならず、碌な仕事に就けない彼らができる仕事は、当時キリスト教から卑しい仕事とされ、忌避されていた金融業しかできなかった。

そのため、ユダヤ人の高利貸しとして描かれたこのシャイロックの姿は、一般的なユダヤ人にとってはごく当たり前の人物でしかなかった。

そんなユダヤ人に対して、当時の欧州のキリスト教徒は、金融の知識が足りなかった。キリストの教えとユダヤ教の教えと違ったなど、様々な理由はあるだろうが、概して違法な手段と非合法な金利で儲けている卑怯な連中としか思えなかったのだ

つまり、当時のユダヤ人からすれば、普通に生きているはずの自分たちが謂れもない誹謗中傷を受けた末に、全財産を没収された末にキリスト教への改宗すら強要されたことに等しく、それを喜劇として大勢の観客に笑われることは、耐え難い屈辱であることは現代の人間であっても想像に難くない。

そのため、今でもこの作品に対するユダヤ人からの批判は大きく、今でもアメリカでは教科書の掲載はおろか、舞台演劇として演じられることすら避けられている。

シャイロックの名言

特にこの物語において、シャイロックの名言とされるのは、第三幕第一場における以下のものである。

奴は俺を馬鹿にした。ことごとく俺の邪魔をして、俺の損を嘲笑い、俺の稼ぎを罵った。

俺たちユダヤ人を侮辱し、取引の妨害をし、俺の味方を尻込みさせ、敵を煽った。

何の為だ?俺がユダヤ人だからだ。

俺はユダヤ人だ。ユダヤ人には目が無いかよ?ユダヤ人には手が無いかよ?五臓六腑、四肢五体が無いかよ?感覚、感情、情熱それも無いかよ?

キリスト教徒と同じものを食ってるんだよ、同じ武器で傷つくし、同じ病気にも罹っている。

同じ手当てを受けて、同じ冬の寒さや、同じ夏の暑さを感じている。

ユダヤ人なら刺されても血が出ないとでも?くすぐっても笑わないとでも?毒を飲まされても死なないとでも?キリスト教徒に酷い目に遭わされても、復讐しないとでも言うのか。

上記の名言はまさしく、不当な扱いを受けた人間の悲痛な叫びそのものであり、特に多様な人種や民族との交流が当たり前になった21世紀では、特に強いメッセージ性を持っている。

これを当時の被差別民族であるユダヤ人に言わせた辺りに、シェークスピアの独自性がある。

余談

本作において、ポーシャの裁判での問答から一休さんとの類似性が指摘される。

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コメント

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  • 分かってくれる人はいる。

    酔ってるから出せる本音ってありますよね。 そうやって心を開いたからこそ、理解しあえることも。 カルデアにて、ヴラド三世(狂)とシェイクスピアが語り合う話。Apocryphaアニメのあの場面を見て思いつきました。
  • 転生したらシャイロックだった件

    転生したらシャイロックだった1

    書いちゃった!需要あるのかな☆ アンチ・批判は受け付けておりませんのであしからず🤗
  • Mask, Blind, and Fools

    ヴェニスの商人で、シャイロック×アントーニオの40年越し愛憎。ふたりが若いころの話。 なんでアントーニオがあそこまでバッサーニオのために身を挺するような借金をしたのかって理由としてアントーニオとバッサーニオがデキてたから、というのがわりと通説なら、じゃあなんでシャイロックがあそこまでアントーニオの肉体を傷つける執着と憎悪を燃やしたのか、も愛憎なんじゃない?萌える…という発想でした。 中世ヴェネツィアはこんなんじゃなくてこうだよ、という建設的ツッコミはいつでもどうぞ。

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