概要
ブリテン王・リアが長女と次女の甘言に乗せられ、2人を国の後継者と定めるが裏切られて国を追われ、末娘と共に国を取り戻す為戦ったが敗れ末娘共々非業の死を遂げる。
リアに従う道化の辛辣な物言いがリアの陥った境遇の本質を鋭く抉り出しているのが印象的。
あまりにも救いのない結末が大多数の観衆に受けいれられなかったのか、シェイクスピアの死後ネイハム・テイトによって話の筋を大幅に改変されたものが19世紀前半まで上映された。
こちらはリア王とコーデリアが戦いに勝ち、コーデリアと恋人エドガーが結ばれるハッピーエンドとなっている。オリジナル版で重要な役割を担った道化も登場しない。
ちなみにシェイクスピアの完全な創作ではなく、リア(レイア)という王の伝承が現実に残されている。さらにはこのリア(レイア)の伝承を基にした「リア王年代記」という歴史劇が存在し、シェイクスピアはこの歴史劇に着想を得て「リア王」を創作している。
「リア王年代記」もまたリア王とコーデリアが戦いに勝つハッピーエンドであり、上述のテイト版はある意味先祖返りを起こしていたことになる。
ストーリー
ブリテンの王として長年統治を続けてきたリアは、自身が老いてきたことから、国を後継に譲ることを決める。
リアの子どもは三人の娘たちであり、長女のゴネリリ、次女のリーガン、そして三女のコーディリアだった。
リアは三人の娘たちの中でも、殊更に三女のコーディリアを愛しており、コーディリアに国を譲ろうと考え、娘たちに自分のことをどれほど愛しているかを聞き、最も気に入った答えを返したものに国を譲ると伝える。
リアはコーディリアが自分の最も気に入る答えを返してくれるものと思っていたが、長女と次女はリアに気に入られる為に賞賛と愛を口にする一方で、コーディリアは父への誠意から決して快い返事を行わなかった。
コーディリアの返事に激怒したリアは、コーディリアをブリテンから追放し、長女のゴネリリと次女のリーガンに自身の財産を分け与える。
リアの所業に対して、心ある忠臣であるケント伯は彼の行いを咎めるが、これによりリアの怒りを買ってしまい、ケント伯もまた追放してしまう。
こうして二人の娘に財産を与え、自身の忠臣すら追放したリア王は、二人の娘の下に身を寄せて暮らそうとする。
伝説上のリア王
ジェフリー・オヴ・マンモスによる『ブリテン王列伝』には、存在の実在性はともかくとして同名の王の存在が確認されており、アーサー王と並んで、イギリスの伝説的な王として紹介されている。
それによると、リア王はギリシャ神話の英雄であるアイネアスの孫であるブルートがトロイの残党を連れて逃れて、そのブルートの孫の一人がリアとされる。
登場人物
リア王
タイトルにもなっているブリテンの王様。
娘たちに権力や財産を譲り自分は隠居生活を送ろうと計画するが、長女と次女に裏切られ流浪の身に。
ゴネリル
リア王の長女。リーガンと結託してリア王を裏切った。
リーガン
リア王の次女。リア王を裏切った。
コーデリア
リア王の三女。父親想い。
ケント伯
リアの忠臣。
オールバニ公、コーンウォール公
それぞれゴネリル、リーガンの夫。仲が悪い。
フランス王
勘当されたコーデリアを妻に迎える。
道化
リアに仕える道化師。皮肉屋。リア王が転落し始める頃からリア王に付き従い始め、やがてリア王が正気を失うと共に退場する。
この物語の中でも最も印象的な存在である。
余談
- キリスト教がブリテン島に伝わる以前の話という設定の為、作中では「自然の女神」が(キリスト教的な)神の代りになっている。
- 例としては「nature」が「造物主」的な意味に使われていたり、神への呼び掛け的なニュアンスで「Thou, nature, art my goddess」「Hear, nature, hear; dear goddess, hear!」という台詞が使われている。
- グリム童話には似たようなエピソードの一つとして塩の姫(塩のように好き)と言う童話が存在している。
関連作品
関連イラスト
関連タグ
アーマード・コアV:一部登場人物の名前の由来。ただし立ち位置などは異なる。
乙事主:あるシーンで監督の宮崎駿が、声優を務めた森繁久彌に対し「全体的に『リア王』のアレでやってください」とリクエストしている。