概要
漫画『鬼滅の刃』に登場する我妻善逸×竈門炭治郎のBLカップリング。
二人の出会い
出会いは1巻第6話「山ほどの手が」の最終選別回だが、当人たちに特別な会話等は無い。
むしろ最終選別のプレッシャーのためか炭治郎は善逸と同じ会場だったことをすっかり忘れていた。
しかし善逸の方は炭治郎の顔を覚えている。
炭治郎はこの時、乱暴する玄弥から女の子を助けてる程度胸があるように見えるが他の参加者の顔をすっかり忘れており、逆に追い詰められた表情の善逸の方が周囲を観察し最終選抜者の顔を覚えていた。
ここからすでに『何もかもが正反対な二人』が始まっている。
互いをしっかりと認識したのは3巻第19話「ずっと一緒にいる」第20話「我妻善逸」から。
表紙も二人(と禰豆子の箱)が飾っている。
善逸は遂に最後まで鬼滅の刃で単体表紙を飾らなかったが、二人は一心同体ということかもしれない。
しかしカバーをめくると善逸は上から降ってきた伊之助に沈められ場所を奪われていた。
二人が互いを認識する出会いは女の子に無理矢理結婚を迫るのと止めるという最悪の形になっている。
炭治郎は基本的に寛大で心優しい性格だが、この出会いのためか善逸に対しては非常にドライで内心を隠さず、言い方も正確ではあるがひどい(例「なんでそんなに恥をさらすんだ」)。
炭治郎が顔を歪めて別の生き物を見るような目をするのは作中でも善逸くらいである(鬼は除外)。
それは裏を返せば、炭治郎が善逸に対して心を許しているという証拠なのかもしれない。
畑の中を二人で歩く時には、よほどうるさかったのか炭治郎からおにぎりを与えられていた。
完全に子供扱い、弟たちとレベルが同じである。
アニメでは、そのおにぎりを善逸が綺麗に半分割って炭治郎にあげていた。
鼓屋敷の前では、本人は無意識なのか気持ちの悪い音がしている、と炭治郎に話しだしている。
善逸は己の聴覚が普通ではないことに気づいているため、基本的には他人に言わないのだが、炭治郎になら話してもいいと判断したのだろう。
既にこの時点で出会ったばかりなのに、心を許し合っていることが細かな描写で明かされているが善炭の真骨頂はここからである。
初めての共同任務
3巻第21話「鼓屋敷」では一緒に屋敷の中に行こうとする炭治郎の言葉に怯えて首を振って断るので般若のようか顔で怒られている上に、置いていかれかける。
繰り返すが基本的に心優しい炭治郎がこんな態度を取るのは善逸相手にだけである。
この時も泣き喚く善逸に「違うんだ俺にはわかる善逸は…」と、炭治郎は善逸が強いことを気づいている描写がある。
善逸は強いので連れて行けば戦力になると分かっていても、炭治郎は善逸の怯える意志の方を一応は尊重している(般若の顔だが)。
しかもこの時の善逸は駄々っ子のように泣き喚いて「折れてる炭治郎じゃ俺を守りきれないぜ」等と失礼な事を言い、とても人の話を真面目に聞いているような状態には見えない。
炭治郎の置いてきた箱から音がすると追いかけてきてしまった兄妹に「あれは俺の命より大切なものなのに…」という言葉を聞いている場面もコマの隅に僅かに描かれているだけだ。
命より大切なもの
3巻第25話「己を鼓舞せよ」で炭治郎と正一くんの兄妹達で脱出すると、善逸は同じ鬼殺隊らしい日輪刀を持った猪の被り物をした男から禰豆子の入った箱を守っていた。
「あれは俺の命より大切なものなのに…」という言葉を耳の良い善逸はその感情も正確に聞き取り、己の身を呈してどんな暴力を受けても守りきったのである。
炭治郎はこれ以降、誰かを頼るとき真っ先に善逸の名前を呼ぶことが増える。
家族を亡くし、鬼になった妹を一人で守らなければならない精神状態である炭治郎だが、ここで禰豆子を預けることができる唯一の拠り所を得たのだ。
余談だが、アニメは尺の問題なのか善逸が暴行を受けるシーンをやけにたっぷり引っ張ってしまったため、中の人達にラヂヲで話題にされていた。
「炭治郎からは泣きたくなるような優しい音がする」
4巻第26話「素手喧嘩(ステゴロ)」では猪頭の男から箱をかばいながら言い合う。
そこで善逸は最初から箱の中に入っているのは鬼で、それを知っていて共に行動していたことが明かされる。
その理由こそが「炭治郎からは泣きたくなるような優しい音がする」というものである。
聴覚の優れている善逸は、呼吸音・心音・血の巡る音、などを注意深く聞くと相手の考えていることもわかる。
これは炭治郎の嗅覚と同等の能力であり、人間の思考や善悪の感情を聞き取ることさえできる。
それでも善逸は自分の能力で得た情報よりも、自分が信じたい方を選んだ。
炭治郎の命よりも大切なものという言葉や感情から、それが切実な願いであることを汲み取り炭治郎のいない間に守りきったのである。
鬼殺隊でありながら鬼を連れた炭治郎には必ず事情がある、何故なら炭治郎は優しいから、という考えから「俺が…直接炭治郎に話を聞く。だからお前は……引っこんでろ!!!」と啖呵を切る。
炭治郎にとって今まで一人で背負っていたものを、一緒に背負ってくれた掛け替えのない人になった瞬間である。
箱を抱いて蹴られた善逸が炭治郎には弟を守って倒れていた禰豆子の姿に重なる。
おそらくこの瞬間、善逸は炭治郎の中で家族と同等の存在になったのだ。
ちなみにアニメでは挿入歌「竈門炭治郎のうた」の歌詞として「泣きたくなるような優しい音」という部分が登場する。
この言葉を思う善逸の背後には青空が描かれていた。
善逸の聴覚は炭治郎の無意識領域の澄みきった青空が音として正確に認識されていたということだろう。