概要
地震や火山噴火などが発生して地盤が振動すると、短周期の地震波動が空気中を伝播して音響(音波)となり、「ゴォー」という低い音が聞こえることがある。これが地鳴りである。鳴動ともいう。基本的に、振動の周波数が20ヘルツを超えると地鳴り音が聞こえる。
地鳴りは震源の浅い地震(浅発地震)や群発地震などの際に発生することが多い。たとえば松代群発地震では顕著な地鳴り音が記録されており、当時録音された音は気象庁のホームページで聞くことができる。人が揺れを感じない微小な地震であっても地鳴りだけが観測される場合がある。実は松代地震のときもそうだった。
また、地鳴りが聞こえるか聞こえないかはその土地の性質にもよる。堅い地盤の場合は音波が減衰しにくいため鳴動音が聞こえやすい。たとえば、地鳴りの名所として有名な茨城県の筑波山付近ではよく鳴動音が聞かれるが、これは基盤岩が露出していて短周期の振動が伝わりやすいためではないかと考えられている。
非常に大まかにいえば、「軟弱地盤=地鳴りは聞こえないが地震動は大きくなる」と考えられ、逆に「強固な地盤=地震動は減衰するが地鳴りはよく聞こえる」ということもできるが、地鳴りのメカニズムについては前述の通り震源からの距離や地下構造など複雑な要素も多く含むので、一概には何ともいえないであろう。
昔から大地震が多い北海道・東北地方においては、1933年の昭和三陸地震や1952年の十勝沖地震では広範囲で地鳴りを伴ったが、1896年の明治三陸地震や1968年の十勝沖地震ではあまり地鳴りは観測されなかった。このことは、地鳴りの有無が震源の性質にもよることを意味していると考えられている。
なお、地震の時には様々なものが激しく音を立てるので、聴覚のみで地鳴りかそうでない音かを区別するのは容易ではない。特に都市部での大地震の際には、建物が倒壊したりする音を地鳴り音と勘違いする人も少なくない。