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奈落の帝王

ならくのていおう

ゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの第32弾。著者はポール・メイソンとスティーブ・ウィリアムズの共著。
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「奈落の帝王」とは、イギリスの出版社「ペンギン・ブックス」から出版されていたゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの第32弾「SLAVE OF THE ABYSS」の日本語版タイトルである。出版社は社会思想社。

作品解説編集

 アランシアの南端に位置する都市、カラメール。

 現在この地は、キャロリーナ男爵夫人が統治していた。過去にあの悪名高き『謎かけ盗賊』に夫、ブルーストーン男爵を殺害された後。

夫人は立ち直り、新たな指導者としてアルケミス国との戦争に突入。海戦で多くの犠牲を出したものの、カラメールは勝利を収めた。

 だが、カラメールの北の国境付近に隣国ベイ・ハンが、侵略を目論んでいるらしい情報が入って来た。ベイ・ハンとは仲が良いわけではなく、しかも国境の山脈地帯は自然の要塞でもある。今ベイ・ハンに侵略されれば、国は損害を被る事に。

 なのでキャロリーナは、全ての軍を北へと進軍させた。


 有名な冒険者=君がカラメールに到着したのは、最後の部隊が出発した直後だった。

 数週間後、伝令が『東から侵略者が来る』と駆けこんできた。キャロリーナは君を含む多くの冒険者を召喚し、君はそれに応じた。

 カラメールの宮殿にて、君は冒険者たちと一緒になった。中には顔見知りもいた。

 そして、拝謁の間にて。キャロリーナをはじめとする、カラメールの最重要人物たちを目の当たりにする君たち。

 キャロリーナは言う。軍は全て北方に駐留しているため、カラメールは現在無防備。この状況下で、東の端の地方から使者が届き、村々から人々が消えていると知らせてくれたのだ。

 軍隊が戻るまで、皆にカラメールを守ってほしいと言うキャロリーナ。

 もしもこの依頼、街の守りを引き受け成功したら。君はこの地方全体から感謝されるだろうと告げられる。

 その依頼を受け、君はどうしたものかと策を練り始めた。


 シリーズ32弾。

 本作は、TRPG用のシナリオ「謎かけ盗賊」と同じ著者たちで、同作の続編的な内容である(舞台と登場する人物が同じ)。

 本作は、新機軸として「時間点」を設定しており、時間と戦いながら都市を襲う脅威を調べ、その正体を知り、それから如何に都市を守らねばならないか……という事を行わねばならないので、この点が非常に難しい要素となっている。

 調査を怠ると何もわからないが、しかし無駄にあちこちを探っていると時間が無駄に過ぎて手遅れになってしまう。この辺りのさじ加減が難しく、無駄な事をして手遅れに……という事も少なくない。

 そして、本作はもう一つ。「謎かけ盗賊」にも見られた、「最初の状況から、予想外の展開になる」という事が、魅力の一つになっている。

 最初は、東から攻めてくるのは蛮族か隣国の軍勢かと思いきや、実はそれらよりももっと恐ろしい「奈落からの軍勢」という意外性がある。

 終盤になると、奈落へと向かう事になり、一介の冒険者が奈落そのものの支配者と対決し、そして……という展開に。

「謎かけ盗賊」も、当初は単に「男爵を殺害した悪漢を追う」ものだったのが、「その悪漢が、世界そのものの命運と善悪のバランスを取る存在」である事が露わになり、最後には「世界そのものを救う戦いに」という展開になる。

 このような展開のある作品は、かつての初期シリーズには無かったもの。いわばファイティングファンタジーの新世代の作家たちが、改めて作品とその世界とを広げ始めたのだ。


 本作においては、タイタン世界の成立の神話……善悪のバランスという点を重視している著者たちらしく、登場する悪の勢力……というか、奈落の勢力と、それを阻むために一介の冒険者が挑むといったテーマが描かれている。

 そして、著者二人が創造した「謎かけ盗賊」本人も、本作にはゲスト的な存在で登場する。それも、中立のバランサーという設定にふさわしく、主人公を助ける存在として。

 難易度はそれなりに高いものの、クリアの暁には、どこか壮大なファンタジー小説を読み終えたような、充実感を覚える一作。

 そして、タイタン世界のゲームブックの邦訳が本作で終了してしまった事は、残念以外の何物でもない。

主な登場人物編集

主人公=君編集

 本作の主人公。各地で名をはせた、有名な冒険者らしい。

 師匠バロロより賜った、ファングセイン鋼の剣を持っている。

キャロリーナ男爵夫人編集

 依頼人。カラメールの統治者。かつて『謎かけ盗賊』に夫を殺害され、その際に色々とひどい目に合っている。

マッドヘリオス編集

 キャロリーナの従兄弟。鼻を神経質そうにひきつらせた、太った男。真夜中に寝室へ、肉料理を召使に運ばせ、こっそり食べる趣味を持つ。

イクチャンのダンヤザード編集

 カラメール地方で、最も裕福と言われる小柄な女性。やや強気で傲慢とも思える態度を取る事があるが、実際はキャロリーナやカラメールの街の事を深く思っている。ただし、彼女の財産がしっかり守られるという実利的な理由もあってのこと。

沈黙のシージュ編集

 旧家の血を引く、堂々とした女性。喋る時の声がか細いため、「沈黙」という二つ名が付いた。

アシア・アルブドール編集

 カラメールの司法官。いかめしい顔つきをした女性。公正さを重んじる立場のために、あまり表には出さないが、キャロリーナのことを深く愛している。

無敵のラメデス編集

 キャロリーナが、ある秘宝の探索を依頼した冒険者。南部地方では最も恐れられている戦士である。実は、血筋に秘密があり……。

ブラックサンドのソフィア編集

 女性の冒険者。主人公とは何度か一緒に、危機を潜り抜けた冒険者仲間。

エンシメシス編集

 カラメールから東に離れた地に住む、魔法使い。村に住み、研究の傍ら弟子を取り魔術を教えていた。今回の事件の裏に潜む、奈落からの怪物を防がんとするも、失敗に終わる。

メマ編集

 エンシメシスの弟子で、魔術を教わっている少女。エンシメシスがこの事態を調査する直前に、住んでいる村にスズメバチの群れの襲撃を受ける。その際に緑色のねばねばを全身に塗られ、隠れているようにと言われる。

アレセア編集

 北の山脈の変幻の森に住む、女性の賢人。大蛇の賢い使い魔・カデューサスを有する。

バロロ編集

 隠居した剣士にして冒険者。片足を失い、義足にしている。主人公の剣の師匠。

 剣を投げる奥義「ハエ刺し」を、選択肢次第で教えてくれる。

ターバーダ編集

 詐欺師。自分は死の呪いがかけられているなどと喋りまくり、引っかかった相手から金貨や食料、酒をかすめ取る。

バイソス編集

 奈落の帝王。現世での姿はいかめしい顔の男だが、奈落では巨大な姿をしている。

謎かけ盗賊編集

 善悪のバランスを取るために暗躍する怪人。巨大な飛行船で移動し、だぶだぶの服に道化のような姿をしている。

 主人公が、とある村に捕らわれた際に助けに入った。

 本作では主人公の味方をしてくれるが、前日譚とも言えるTRPGシナリオでは、全編におけるメインの悪漢として登場する。ブルーストーン男爵を殺害し、特殊なアイテム「運命の振り子」を破壊する事で、世の中の善悪の理を破壊、運と偶然が支配する世界に作り替えようと試みていた。

 詳細は当該記事を参照。

舞台、アイテムなど編集

カラメール編集

 主人公が守りの依頼を受けた街。かつてはブルーストーン男爵が治めていたが、『謎かけ盗賊』により殺害されたため、キャロリーナが治めている。港町で、アランシアの南端に位置する。周辺地域の中では最も発展している。

奈落編集

 バイソスが王の座に付いている、別世界。魔界とも、地獄ともまた異なる次元らしい。

 その世界には、名称しがたい怪物たちが蠢いている。

奈落の王のスープ編集

 奈落の王の力の源。タイタン中から集められた魔法の品物を、結晶戦士が集め、ハンマーで金粉にするまで粉々に砕く。その金粉を、奈落の住民の金粉拾いが集め、既に奈落の王専用ゴブレット(巨体に合わせた、巨大なものである)に入れられたスープに加える事で、完成する。これを飲んだ者は、奈落の王としての力を得て、身体が巨大化する。味はあまり良くないらしい。

ポマンダー(匂い袋)編集

 シージュが主人公に渡した、香料入りの袋。ややきつめのこの匂い袋の匂いは、嗅いだ人間の眠りを奪う性質がある。そのため、徹夜して見張るなどの作業には丁度いいが、睡眠不足になってしまうので、疲労は貯まってしまう。

 実は、非常に重要なアイテム。

変幻の森編集

 賢人アレセアの住む森。キツネノテブクロという植物が多く自生しており、気を付けないと森から出られず、さまよい続けるはめになる。ジェーラという特殊な灌木が自生している。

ジェーラ編集

 小さな灌木。その葉を集め、松明にして燃やす事で、刺すような香りの煙を放つ事が出来る。この煙を用いれば、人の魂を奪い取る奈落のスズメバチの大群を倒す事が出来る。

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