解説
Infanterikanonvagn(略:Ikv)は、スウェーデン語から直訳すると『歩兵砲車』といったところだが、スウェーデンにおける実際の用法からして他国での『突撃砲』に相当する語。
スウェーデン軍の制式兵器の呼称としても用いられており、本記事では該当について解説する。
Infanterikanonvagn 72/102/103
冷戦初期のスウェーデン製突撃砲。4人乗り。
1940年代後半より、駆逐戦車や自走砲など各種の装甲戦闘車両で共通の車台を流用するスウェーデン軍の構想に基づいて開発された。
装甲は非常に薄い(最大20mm)ものの、これにより車重が非常に軽く抑えられており、ここに出力145馬力のガソリンエンジンが組み合わさった結果、山がちなスウェーデンでの運用に際して役立つ優秀な機動力が確保されている。
Ikv.72
1953年~54年にかけて軍へ納入された。車重8トン、最高速度50km/h、総数36輌。
主武装の75mm砲は搭載が構想された3種の砲(75,84,105)の中で最も貧弱だったが、既存で即座に供給できることから選定されたという。
戦闘室上部には天板がなく(オープントップ)、視界こそよかったものの至近距離の着弾・爆発に弱かった。
Ikv.102
1956年~58年、Ikv.72の主武装は105mm榴弾砲へ換装、天板が追加され、これに伴いIkv.102に改称された。車重8.8トン、最高速度47km/h。
Ikv.103
Ikv.102の改修型。エンジンが換装され出力は150馬力へ微増、エンジンルーム上面のグリルが形状変更されている。総数81輌。
Ikv.102も含めて1980年代ごろまで運用された。
それ以降、Ikv.102/103の車台は対戦車ミサイル搭載のpvrbv 551駆逐戦車や地対空ミサイル搭載のlvrbv 701自走対空砲へ流用されている。
Infanterikanonvagn 91
メイン画像の車輌はこちら。
冷戦中期の1975年に実用化したスウェーデン製突撃砲...というより軽戦車。4人乗り。
湖や河川の多いスウェーデンにおける運用を考慮、水陸両用戦車としての機能も持ち合わせている。
車重は16.3トンで、これは同時期の戦車が概ね40トン程度に達していたのと比べて非常に軽く、330馬力のディーゼルエンジンでもって最高速度は65km/hに達した。
主武装は成形炸薬弾を用いれば第2世代主力戦車の正面装甲を射貫できる90mm低圧砲で、副武装として71mm照明弾発射機×2挺と7.62mm機銃×2挺も搭載する。
なお、防御力に関しては機密事項だが、対20mm機関砲を想定したものとされている。
212輌が生産され、2002年まで運用された。