解説
Stormartillerivagn(略:Sav)は、スウェーデン語で『突撃砲』の意。
スウェーデン軍における制式兵器の呼称にも用いられており、本記事ではその対象について解説する。
Stormartillerivagn m/43
Sav.m/43は、第二次世界大戦後期の1944年に実用化したスウェーデン製突撃砲。
榴弾(=炸裂弾)の主用による歩兵支援を目的として開発された。総生産数は36輌と非常に少ない。
原型・形態
原型の原型・38(t) | 原型・Strv.m/41 |
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開発に際して原型となったのは、チェコスロバキア製38(t)戦車のスウェーデンにおけるライセンス生産型・Strv.m/41。
37mm砲の砲塔を廃して車体上部に大型の戦闘室を設け、その正面に短砲身75mm砲を半固定形式で搭載するものとなっていた。
性能
最大装甲厚は50mmで、これは当時の一般的な戦車砲・対戦車砲(口径75mm級)で撃たれれば容易に射貫される程度のものだった。
一方、軽装甲でもって軽量に抑えられた車重(12トン)により、160馬力という低めのエンジン出力でも最高速度45km/hに達する機動力を発揮可能としている。
なお、当初搭載された16輌が搭載する短砲身75mm砲は火力不足が指摘され、1946年以降の生産型ではより強力な105mm砲へと更新されたほか、既存の16輌についてもこれに換装された。
運用
戦後、Sav.m/43のように限られた用途にしか使えない装甲戦闘車両は、柔軟に状況へ対応できる主力戦車へと置き換えられるのが一般的だった。
しかし、スウェーデンは主力戦車の導入開始が1953年と遅かったほか、国力に乏しいことから新規兵器よりも既存のものを可能な限り維持したいというような思惑もあったのか、Sav.m/43の運用は冷戦期に入ってからもしばらく継続。
最終的な退役はStrv.74の導入により完全代替される1973年となった。
なお、スウェーデンは中立国としての立場が功を奏し、20世紀には一度も武力衝突に巻き込まれていない。このため、Sav.m/43もまた実戦投入の無いままに退役を迎えている。
余談
- 割と凶悪な対装甲火力
貧弱な75mm砲から一転して搭載された短砲身105mm砲は数種類の対戦車榴弾(成形炸薬弾)を発射可能としていたが、その射貫装甲厚は大口径だけあってかなりのもの。数値だけならあのドイツ重戦車ティーガーIIが有する200mm級の正面装甲を貫くことが可能とも評せる。
弾名 | 弾種 | 射貫装甲厚(条件不明) |
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Spårljuspansargranat m/39 | 曳光徹甲弾 | 90mm |
Spårljuspansarspränggranat m/49 | 曳光対戦車榴弾 | 240mm |
Spårljuspansarspränggranat m/60 | 曳光対戦車榴弾 | 300mm |
Spårljuspansarspränggranat m/65 | 曳光対戦車榴弾 | 350mm |
ただし、制式呼称中の数字から察せられるように、これらの対戦車榴弾はいずれも戦後に実用化したものらしい。
また、短砲身ゆえ発射時の初速が低く目標と十分に接近しなければ命中弾を得ることは困難と考えられる。
さらに、成形炸薬弾頭は命中時の状況が最適でなければ最大限の威力が発揮できないため、これはあくまでも参考値だろう。
(参考:Stormartillerivagn m/43 - wikipedia.sv)
- ドイツの兄弟
Sav.m/43の原型の原型となった38(t)戦車だが、それを原型としてより大型の砲を載せるための改設計が同時期のドイツでも実施されていた。(正確には38(t)ではなく38(t)n.A.だが)
Sav.m/43とは異なり戦車戦での運用を想定しているため、強力な長砲身7.5cm砲や全面に渡る傾斜装甲、待ち伏せ戦法に適し被弾面積も抑えられる低車高などの特徴を有し、非常に実戦的な車輌となっている。
登場作品
スウェーデンの駆逐戦車として75mm砲搭載の1944年型、105mm砲搭載の1946年型が登場。
装甲が貧弱なため最前線での運用には適さないが、1946年型の対戦車榴弾は格上戦車の重装甲を容易く貫く圧倒的な装甲射貫を発揮する。