解説
BT-42は、第二次世界大戦・継続戦争期のフィンランド製突撃砲。正確には戦車ではない。
敵のソ連赤軍から鹵獲したBT-7快速戦車を改造、冬戦争中に供与を受けていたイギリス製の114mm榴弾砲と大型化された砲塔を搭載した車輌で、小柄な車体に大型砲塔というアンバランスな姿は「英露混血のミニKV-2」とも形容できる。
これでもBT-7の持ち味だった快速性はほとんど維持されており、履帯を装着した状態の最高速度は53km/h 、履帯を外した装輪状態では73km/h にも達したという。(履帯装着状態は不整地、装輪状態は整地での運用に適する)
BT-7 | BT-42 |
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一方、砲弾が16kgと重く装填に時間がかかることや、BT-7のただでさえ薄い装甲が全く強化されていないなど問題は多く、その性能はとても戦車戦に耐えるようなものではなかった。
もっとも、BT-42が開発段階で想定していた運用方針は歩兵の火力支援であって戦車戦ではなく、上記の問題は必ずしも『問題』とはいえないだろう。しかし...
運用・戦史
III号突撃砲 | T-34 |
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1943年、BT-42は戦中に新設された突撃砲大隊に配備されたものの、ドイツからより強力で使い勝手の良いIII号突撃砲が供給されるとこれに取って代わられてしまった。
とはいえ、フィンランド軍は開戦以来常に戦車不足で、悠長にBT-42を退役させるような余裕は無く、同年12月には新設された独立戦車中隊に転換配備。それが最悪の想定外を招いた。
1944年6月、カレリアにてソ連赤軍の大攻勢が始まると、独立戦車中隊はこれを迎え撃つべく中枢都市のヴィープリに投入され、T-34やKV-1など強力な赤軍戦車との戦車戦を余儀なくされた。
戦車戦に向かないBT-42にとってこれは致命的な運用法で、この戦いで18輌の内8輌が失われている。
残る10輌は先の大損害もあってか、その後実戦投入されなかったらしい。
現在、その内の1輌はフィンランドのパロラ戦車博物館にて保存・展示されている。
余談
- マイナーから有名へ
BT-42は非常にマイナーな戦車...だった。
そのはずは、2016年公開のアニメ映画『ガールズ&パンツァー劇場版』でフィンランドモチーフの継続高校所属戦車として登場したことにより大きく覆されたのだ。
作品自体の人気に加え、作中でのアクロバティックな躍動により、その知名度は一躍向上。以降のガールズ&パンツァー最終章でもIV号戦車やT-34、M4シャーマンなど名だたる有名戦車と肩を並べて活躍している。
ただ、その活躍の弊害で、実はすごい戦車なのでは?というような誤解が生まれたとか。実際の性能や史実での戦歴は上記の通りで、決して輝かしいものではなかった。
このようなガルパンでの活躍に起因して、pixiv内のBT-42タグ付き作品は継続高校仕様のイラストが大半を占めている。
なお、タミヤからBT-7のバリエーションとしてプラモデル化されており、映画の公開と共にあっという間に店頭から消えてしまうという珍現象も発生した。
- パーシングを撃破できる?
上記のガールズ&パンツァー劇場版にて、大学選抜チームのM26パーシングを撃破するシーンで有名なBT-42。
これが実際にできるのかというと、おそらく可能らしい。
フィンランド軍はBT-42の搭載する114mm榴弾砲のために、ドイツ製10.5cm砲弾を参考とした対戦車榴弾(成形炸薬弾)を用意しており、その射貫装甲厚は+20度の傾斜装甲で100~115mm。
対して、該当シーンでパーシングの被弾箇所となっている砲塔側面装甲は76mm厚。十分に射貫可能なのだ。
(参考:えすだぶ@C105月曜日 東5マ46ab on X: "確かに元々の英4.5インチ榴弾砲には成形炸薬弾は無いのですが、フィンランドではBT-42用に成形炸薬弾を用意してまし... - X)
登場作品
アニメ
継続高校の大洗連合チーム参戦車として登場。
車長(?)としてミカ、操縦手としてミッコ、砲手兼装填手としてアキが搭乗する。
第2話から第4話にかけ、継続高校の隊長車として登場。乗員は上に同じ。
ゲーム
2022年10月の2.21 “Fire and Ice”にて実装。
史実通りの紙装甲で、戦車砲どころか12.7mm重機関銃の掃射を受ければ即撃破は免れない。
ただし、成形炸薬弾は同格でトップクラスの100mm厚を超える装甲射貫が可能。格上のKV-1重戦車を正面から撃破できるポテンシャルを秘める。
関連タグ
FV304:World_of_Tanksに実装されている自走砲。BT-42と同型の砲を搭載しており、BT-42自体の実装も期待されている。