概要
精神疾患の一つ。
頭の中に自分ではコントロールできない不快な考え、想像がしつこく思い浮かび(強迫観念)、この考えを打ち消す、また不安を取り除こうと、特定の行動に対して何度も確認したり、ある拘りが行き過ぎたりして(強迫行為)、日常生活に支障をきたす症状のことを指す。
代表的な例としては、いわゆる潔癖症と呼ばれる人の中には「不潔」に恐怖を感じて過剰に清潔にしようとするような強迫性障害を抱えている人も多い。
かつては不安障害(不安神経症)の一種に分類されていた。名前は似ているが強迫性パーソナリティ障害とは異なり、こちらは「規則やルールに厳格になるあまり、他人にも自分にも異常に厳しくなり、全てが自分のコントロール下に置かれていないと精神的に耐えられない」というパーソナリティ障害である。
症状
自分から頭の中に渦巻く考えを取り除いたり、行動を止めたりすることは基本的にできない。
たとえば「泥棒に入られてしまうかもしれない」という不安から、家中の窓やドアの鍵を確認しながら閉めても、一旦外に出た途端また不安に襲われてしまい、家の中に戻って、鍵をもう一度開けて閉めるという作業を繰り返してしまうというヒトがいたとする。自分では「鍵を閉めたこと」はわかっていても「もしかしたら見落としがあるかもしれない」という考えが頭から離れず、どれだけ一つ一つきちんと確認したとしても「もしかしたら…」と不安が抑えられない。
先に挙げた潔癖症だと、手を洗っても「汚れが付いている」という考えにとらわれ、必要以上に時間をかけて洗浄する、他人や外の空気を「汚い」と感じ、(手袋や防護用のマスクなしには)外に出られない、といった症状が出ることがある。
ほかにも、「自分の一度手にしたものは捨てられない」という保存強迫が行き過ぎてゴミ屋敷化してしまう、「不完全なものを許せない」という恐怖から身の回りの物を全て左右対称にする、ある行為をする時に一定の回数をこなさなければいけなくなる等が挙げられる。
患者本人はこれらの考えやそこから生じる不安を「バカバカしい」「不毛」だと感じ、また客観的に見てもそうであろうということは理解しているが、それでもコントロールできない。そして「おかしいと思っているがやめられない」こと自体に強いストレスを感じてしまい、症状が悪化することもある。
悪化すると不安の回避のための行為(確認や同じ行為の繰り返しなど)の回数や頻度、規模が増えたり、行為を自分の信頼できる周りの人にもやらせたり(「巻き込み型強迫」)するようになる。うつなどの症状が現れる、他の精神疾患やパーソナリティ障害と合併していることも少なからずある。
元々の性格・性質として、とても几帳面である、神経質、刺激に過敏であるといった特徴の人が発症しやすいと言われる。しつけに厳しい家庭で育ったという人も少なからずいる。
男女比は概ね同じだが、子供(未成年)の場合男児が若干多く、大人の場合女性が若干多い。発症は比較的若く20歳前後にピークがあると見られるが、実際に病院を受診するのは30歳前後であり、症状を自覚しながら受診できず不安を抱えている潜在的な患者も多いと考えられる。参考
治療には、不安や抑うつなどをコントロールするための薬物療法に加え、認知行動療法や支持的精神療法、カウンセリングなどの非薬物療法が主に用いられる。
治療を中断した場合の再発率が高いため、長期的に治療に取り組み、患者自身が「障害と適度に折り合いをつけながらうまく付き合っていく」というように指導が行われる。