概要
日本における「整体」とは、指や手(徒手)、場合によってはマッサージ器具を利用して、骨格の歪み等を矯正し、筋肉のこりをほぐすことで体の不調を改善する民間の医療類似行為である。「整体師」といった時は、整体院やサロンなどの施設で実際に働いている人の事を指す。
マッサージの一種に分類され、日本の手技療法や外国の代替医療などが融合したものである。ほかの民間治療であるカイロプラティックや骨格矯正などとの両立を掲げる整体院も少なくない。
日本には「整体師」の国家資格はなく、「資格」と呼ばれているのは全て各団体やスクール、整体店チェーンの社内資格といった扱いで独自に発行している民間資格である。国家資格でないため、養成期間および指導内容はスクールにより非常に差が大きい。
類似する領域の国家資格であるあん摩マッサージ指圧師や柔道整復師、理学療法士などとの混同が世間では多々見られ、また度々法律的な論争にもなっている。
基本的に利用する側としては、あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師(はり師きゅう師)・柔道整復師は3年以上の通学が必須の国家資格であり、整体師はそうではない、という事実は知っておいた方がよい。
ちなみに、鍼、灸は医師もしくは鍼灸師しかできないため、フィクション中で「整体師」が鍼をうつ描写は誤りである。
あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師といった国家資格と民間資格である整体師がどこで分かれるか、となると「医療行為を行うことがあるか」という点にある。
ごく簡単にいってしまうと(医師の指導のもと)柔道整復師や指圧師から受けた治療は保険適用となりうるが、整体師から受けた治療は保険適用外となるという違いがある。
医療行為(医行為)とは、例えば体の中に効果をもたらす薬を使ったり、メスで肌を切るなど体を(治療目的で)傷つけたりするような行為であり「診断」や「診察」も含まれる。
医療行為は日本の法律では「有資格者以外が業として(不特定多数に向けて、仕事として)行ってはならない」とされている。
整体は基本的に「医療行為ではないが、適切に行えば人の健康に害を及ぼさないといえるため、違法ではない」という見解が示されており、医療においてはグレーゾーンに近い立ち位置である。ただし、国家資格を持つ施術者からは「誤った知識や技術の低さにより、逆に健康に害をなす危険があるので、国家資格を持つものに限定して施術するよう法律を厳格化すべきである」という意見も出されている。
しかし一方であん摩マッサージ指圧師と鍼灸師は視覚障害者がなれる数少ない医療職で障害者の雇用確保という観点から国が専門学校の定員増に積極的でない事情もあり、国家資格者の割合増加は容易ではない。
大手整体チェーンの中には、社内補助金を出して希望する社員を国家資格が取得できる専門学校に通わせたり(マッサージ系国家資格は夜間のみ通学でも取得可能な学校が多い)、採用の際に「国家資格優遇」という条件を設けるところもある。
あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師の資格を持つ人が、個人での開業にあたって「整体院」「接骨整体院」などの名称をつけることもあり、話がややこしくなっている。こうした場合、経営者の考えや事情で保険適用治療をやりたくないために整体院を名乗っているケースもある。
医療系国家資格であっても独自の開業権がない理学療法士が整体院の扱いで開業するケースも近年は増えている。
また、国家資格を持っている人でも、治療にあたって整体・カイロプラティックなどに相当する技術を用いることもある。