概要
古代中国の文学者・陶淵明が書いた『桃花源記』に登場する伝説上の楽園。
作中ではとある漁師が山奥で川を遡っていくうちに、桃の林が広がる場所に行き着き、そばの山の中腹に開いた洞窟に入ってみると、美しく豊かな山里が広がっていたという。そこに暮らす村人達は漁師を快く歓迎し、漁師に外界のことを尋ねた。自分達は秦王朝の頃に戦乱を逃れた難民の子孫で、長い間外界から隔絶して、漢王朝も三国志も知らずにこの里で暮らしてきたと説明した。数日山里で過ごした後に自分の家に戻った漁師は、外界で山里のことを人々に話したが、またその山里へ行くことは二度とできなかったという。
解釈
欧州のユートピアは理想郷の実現の可能性があるもので、対して桃源郷は理想郷の実現は不可能であり、極稀に行くことができる現実逃避の世界の性質を持っており、現実世界との境目でユートピアと桃源郷は一線を画す。
後に道教や仙人などの思想とも結びつき、山奥で暮らす仙人の異世界という考えが広まった。
日本にも桃源郷の考えは伝わり、山奥には俗世間とは違う異界や隠れ里が存在しているという伝説や伝承が各地にある。
今では現実とは思えない心地よい思いや体験、場所などを桃源郷のようだと比喩に使われる。