「俺の対戦相手は全員殺す」
概要
『喧嘩商売』および続編の『喧嘩稼業』の登場人物の一人。
古武術・梶原柳剛流の使い手であり、後述のとある件により左手首から先が欠損しているものの修行により片手でも戦える能力を身につけている。
常にキセルを咥えているがこれは喫煙用ではなく咬合力を高めるためのものであり、そのため純金でできており同時にある仕掛けが施されている。
またそれと同じほどに彼を強者たらしめてるのが頭の回転の早さであり、作中でもほとんどの人物が嵌っている主人公の十兵衛の策略に僅かな手がかりからいち早く気づき手を打つ、試合後も根回しや交渉を行うことで有利になるよう立ち回るなど能力はかなり高い。
無論試合中に相手にブラフをかける際など戦闘面でもこの能力は大きく作用している。
ただしその高い能力故か相手を低く見てしまうという悪癖を抱えており、それに気づいた際は本人も苦笑していた。
総じて戦闘力と知力を兼ね備えたかなりの強者…のはずなのだが、
- 「勝っても負けても死ぬ」と言ったのに未練タラタラで生きようとする
- 自分の復讐のため十兵衛の対戦相手に『金剛』の存在をチクる
- 武器術がメインで片手のハンデ持ちなのに武器禁止の格闘トーナメントに出される
と何かしらネタに事欠かさないため読者からはネタキャラとして見られることが多い。
使用技
- 卜辻(うらつじ)
戦後の日本で流行したステゴロ道の技。
相手の腰に向けてタックルし片腕でももを抱え、利き腕で45度上に掌底打ちを行う。
技をかけている象形が「卜」と「辻」に似ていることからこの名がついており、食らった相手はバランスを崩すか反撃しようとして掌底に反応できず倒れてしまう。
ステゴロ道の技ということもあり武術の心得が無くとも使えるのも大きな利点。
- 脛切り
元は梶原流を代表するその名の通り相手の脛を切る剣技。
跳躍し相手の脚を腕で抱えることでバランスを崩す技。
- 暗行(あんこう)
中高拳を作り中指を頬車のツボに当てヒネる技。食らうと顎が外れるため力を入れられなくなる。
- 屍(かばね)
梶原流の奥の手。いわば毒物であり、特にボツリヌス菌を用いたものは「大当たり」と呼ばれる。一度体内に入れば血清を打たなければ命にかかわるというまさに"必殺"であり、梶原はキセルの中に屍を塗った針を仕込んでいた。
- 金剛
富田流の奥義。心臓を強く押すように打撃を加えることで相手を気絶させる技。
他流派の古文書にも記載があり梶原もここから習得した。
- 金剛0式
梶原が独自に作り上げた0距離から肘で行う金剛。厳密には富田流の金剛のバリエーションの中に同じものはあるが、梶原はそれを知らずに作り上げたと思われるためオリジナルの金剛と言える。
- 雷(いかずち)
梶原が澤に教えた工藤を倒すための技。静電気を左腕に溜めることで触れた相手を感電させる。
…が、実際は澤に偽の情報を流すためのブラフ。実際は不良品のAEDを使った手品であり、自らの左腕を握ることを躊躇させるために即興で作り上げた。
活躍
過去
幼い頃から飛んでいる燕を刀で両断するほどの腕前を持っていたが父親が富田流の入江無一に敗北し自殺したことを切っ掛けに剣術のみでの戦いに限界を感じ、富田流への復讐のため様々な古文書を読み漁り技を体得する。
その最中無一は田島彬の襲撃により死亡するものの、その息子である文学に標的を変更し父の死から7年目に彼に挑んだ。
他流派の研究により相手の手の内を知っていたことや、彼との会話から刀に『屍(梶原流で用いる毒)』を塗っている自分に対し田島彬への復讐のため無傷でこの戦いに勝たなければいけない文学の事情を知り精神的に優位に立った。
しかし実際にはその会話は文学の誘導であり、一瞬刀の握りを確認した際視線誘導に引っかかり投擲された刃で左手首を切り落とされてしまった。
「殺せ」と懇願するものの聞き入れられなかったことから、戦いが終わったら死のうと思っていたもののそれを撤回し片手で戦う術を編み出し再び文学への復讐を決意した。
喧嘩商売
暴力団「板垣組」に殴りこんだ後食客として迎えられ、主人公・十兵衛が敗れたらその師匠である文学が仇討ちとして戦うことを予想し十兵衛の対戦相手である金田保に富田流の奥義、『金剛』の存在を教える。
しかし結果として金田は十兵衛に敗北し、この目論見は失敗に終わる。
その後田島彬から自身の開催する陰陽トーナメントの出場者として打診を受け、文学の出場を条件にこの提案を飲んだ。
…しかし対戦相手が主人公の因縁の相手である工藤優作だと判明すると、メタ的な面や身体能力の面で梶原が勝つことは難しいことから読者の間でお通夜ムードになった。
喧嘩稼業
ファイトマネーの都合から板垣組が工藤の方を勝たせようとしていることを認識したため技を偽装し偽の情報を流す、先述のように十兵衛の策略を防ぐ、組を乗っ取りを話し監視役の澤を味方につけるなど番外戦術で活躍を見せる。
同時に工藤に毒を盛ろうとしていたものの、こちらは策を潰された十兵衛が工藤に毒のことを遠回しに伝えたことによって潰されたため、最終的にはリングの上で決着をつけることになった。
冒頭のセリフを独白し気概を見せたところで試合が始まり、まずは『卜辻』により工藤を倒すことに成功する。その後ブラフをかけ連打を浴びせるもなおも立ち上がる工藤に対し『脛切り』を繰り出しマウントを取り、左腕を警戒した工藤の隙をつき目潰しで左目を失明させた。
しかし工藤に右手を掴まれてしまい絶体絶命のピンチに陥るも、力を溜める僅かな隙をつき脱出し胴締めの形に入った。
その体勢のまま『金剛』を浴びせるも、既に対策していたこともあって通じることはなかった。
だがそれでもなお『金剛』を連打し続け、やがて脳内麻薬でも堪えきれない悪心と吐き気を催させるダメージを与えることに成功する。
しかし戦いの中で考えることを覚えた工藤がロープに倒れ込むことで拘束を解き反撃されかけるも、左腕を噛ませ警戒させてからの『暗行』によって顎を外した。
反撃に移るものの学びを始めた工藤によって真似された『卜辻』をカウンターで食らい、さらに反撃をもらったことでかなりのダメージを負ってしまった。
澤の裏切りを明かすも効果はなく続いて放った蹴りも躱され万事休すかと思われたが、直後に工藤の息が荒くなり目が充血するなど異変が起きる。
「何をした」と言う工藤に梶原はたった一言返す。
「"屍"だ」
実は試合前にキセルによってコーナーマットに屍を塗った針を仕込んでおり、蹴りを繰り出したのも後ろに下がらせコーナーマットに触れさせるためだった。
奥の手により五分の状態まで持ち込んだものの工藤の罠によって右手を捕らえられてしまい、またもや絶体絶命の危機に陥る。
――しかしその瞬間、繰り出されたのは左肘での『金剛』。
『金剛0式』と名付けたその技は、確かに直撃し工藤の身体をマットに沈めた。
だがそれでも工藤は復活し、右足を折られてしまう。
そのまま鯖折りに持ち込まれ、自由だった左腕は手首から先が無いためどうすることもできず敗北した。
しかし解毒剤を交渉材料として提示したことにより命は奪われず、さらには解毒剤に2億の値をつけ板垣組に売りつけることで2億をせしめ会場を後にした。
この際澤に自分を裏切らない保険としてこの2億を渡すつもりだったものの、そのことに澤が気づいていたこと、そしてそれが無くとも自分についていくことを明言されたことで自分の悪癖を自覚し苦笑していた。
当然板垣組とは因縁が残る形になったものの、第2試合で十兵衛が自分の残した屍を利用したことで解毒剤が必要となり、主催者のタンに連絡を受け「板垣組に無料で渡した」と嘯いた。一応2億で渡した解毒剤のおまけとしてつけたもう一つの解毒剤は無料で渡した為、嘘はいっていない。
板垣組としては梶原に持っていかれた2億の補填が必要であり、タンに解毒剤を高値で売りたいところ。
一方タンは無料で渡されたと聞いているのだから法外な値段で売りつけられるのは論外である。
この両者の認識の違いからタンは板垣組を見限り乗っ取りを企む梶原に協力するようになり、板垣組にしても高値で売りつけることができたためお咎めなしとなった。(ちなみに最初の要求は10億で最終的に払わせた額は12億円。梶原たちはふっかけても5億円程度と思っていた)
更には同じく主催者である田島彬の追求からも逃れるなど、かなり上手く立ち回る結果となった。
対戦後工藤のことはかなり気に入っており、卜辻の名前を教え板垣組を乗っ取り自分が工藤を雇うと澤に話していた。