武器としての概説
主に西洋で発達した弓を指す。
大きく分けて、一つの材木から削り出す「単弓(たんきゅう)」(「丸木弓(まるきゆみ)」とも)と、複数の素材を複合して作成する「複合弓(ふくごうきゅう)」に分かれ、複合弓でも木材のみならず、金属や動物性の素材(角・皮・腱など)も利用したものは「合成弓(ごうせいきゅう / コンポジットボウ)」と呼ばれる。
大きさでは「長弓」と「短弓」に大別される――が、これはあくまで和弓という弓を扱う日本基準での指標であり、ほとんどの洋弓は短弓に類するものが多い。
欧州では単弓が主流だが、ユーラシア大陸の各騎馬民族は、馬上で弓を扱う関係から複合弓を多用した傾向にある。
和弓のそれと比して小型で、大きい物でも人の身長を超える程のものは稀である。
また弓そのものもやや太めに形成される傾向にある。
もっとも和弓そのものが、世界の弓矢でも規格外なほどに大きいのだが。
小さいものでも複合弓の場合、組み合わせる素材次第で大型の単弓を上回る威力と射程を発揮することが可能になる。
東ローマ帝国は、わざわざ騎馬民族から複合弓を買い付けた事さえあった。
ただしそれだけに、使用には単弓以上の訓練も要する。
クロスボウと比較すると、即応性と最大射程で負けるものの、有効射程と連射性能で優位に立てるため、多数対多数ならば通常の弓に分がある。
イギリスで発達した「ロングボウ」は、そうした歴史の好例とされる。
ほか、弓を巨大化させて槍や岩石等を射出する「バリスタ」や「アーバレスト」などの攻城兵器としても転用されている。
銃の登場により徐々に戦場から姿を消す。
しかし初期の火縄銃に比べて、基本性能では上をいっていたところもあり、何より生産数ではまだまだ大差をつけていたため、しばらくは銃と同居することになる。
その後、銃火器が弓の性能を上回ると、狩猟やアーチェリーとして武芸・スポーツの一環に帰属していった。
なお外国では弓による狩猟は概ね認められているが、日本では禁止されている。
和弓との違い
和弓とはまずサイズ規格が大きく違っている。
和弓のほとんどが使用者の身の丈を越えるほどの大きさを誇るのに対し、洋弓はおよそ100cmほどの長さのものがほとんどである。
ロングボウやコンポジットボウでも180cm前後に収まっている。
和弓は持つと上部が大きく出るのに対し、洋弓はほとんどは上下対称なかたちに収まっており、握りはほぼ中央にある。
同時に弦と弓と矢の位置関係も違っている。和弓は弓と弦が一直線になるために、矢は必ず右寄りにずれて番えられるが、洋弓は弦と矢が一直線になる。アーチェリーではこれが特に顕著で、矢が通る箇所は弓の上下よりも細く形成され、的と弦と矢が一直線になるように工夫されている。
そして引き方も違っており、和弓が親指に矢を乗せて引くのに対し、洋弓は人差し指の上に乗せて引く。
多くは握り部分が内側に湾曲しており、弦を上向きにするとW字を形成する。こうすることでとりあえずはまっすぐ矢が飛ぶようになり、ある程度の訓練で実戦に対応出来るようになる。
弓道でお馴染の「弓懸」も使用されないが、これは和弓が「蒙古式」と呼ばれる特殊な引き方をするためで、洋弓では「フィンガータブ」と呼ばれる一枚革のシートや、「サムリング」と呼ばれる指抜きを使用する。