概要
小野不由美の小説『十二国記』の登場人物。描写されている原作作品は『白銀の墟_玄の月』。戴国の人物。
阿選軍の卒長であり、赤黒い鎧を身に付けた、赭甲(しゃこう)と呼ばれる集団を率いる、顔色の悪い武将。
以下、「白銀の墟_玄の月」のネタバレを含みます。
驍宗襲撃の実行犯。文州征伐に出た驍宗の護衛として側に付き、「轍囲の里宰が内々に援助を求めている」と嘘を耳打ちして、驍宗を函養山へとおびき出し襲撃した。驍宗はおそらく罠であるだろうことは察していたが、轍囲を理由にされたため見捨てるわけにはいかず、烏衡に従い襲撃を受け函養山の底へと落とされた。
その後、志邱が誅伐に遭った際も、先頭に立って里の者を狩るなど、殺戮そのものを楽しむ残酷な性格で、その評判は、襲撃者の長として選んだ阿選でさえも、“風評のよくない飢狼(けだもの)”“烏衡の人品には嫌悪しか感じなかった”とし、むしろ“利用して使い捨てるにはその方が良かった”との理由で驍宗襲撃の主犯として選んだ。
烏衡の剣の腕は、延王に次ぐほどの剣豪としてその名を他国まで轟かせた驍宗が焦るほどのものだった。だが、それは特殊な呪によって使役した妖魔・賓満(人に憑り付き身体を操る妖魔、麒麟か人が使役し人に憑りつかせた場合、身体能力が劇的に向上する)をその身に宿していたからであり、実際の腕は“烏衡には本来、驍宗と対峙できるような技量はない”“阿選麾下の平均と比べても並の下”とされ、“それでも並の下でいられるのは烏衡が残酷で卑劣だからだ、加減がなく、手段を問わない”からとされている。作中では、烏衡率いる赭甲も“似たり寄ったりの連中だった”と評されている。
友尚軍と共に函養山へと向かった際、自分の快楽のためだけに関係のない土匪たちを惨殺。その残忍で凄惨なやり口に兵卒達からも不満が上がり、阿選からも見限られる。
賓満を取り上げられ無防備になったところを、「病」に罹患した帰泉に処刑される。
人物に対する評価
驍宗“親しく口を利いたことはなかったが、顔と名前は覚えていた。驕王の時代の中軍にいた男で、あまり評判の良くない士卒だったと思う。腕が立つという噂はなかった。”
友尚“もともと友尚は烏衡を軽蔑していた。(中略)勇猛な兵卒だという話だったが、さして腕が立つわけでもなく、単に粗暴なだけだ、と思えた。品性は卑しく、卑劣だった。そういう自分を承知していて、恥じるわけでもなく、むしろ誇っているふうなのが不快だった。その評価は今も変わっていない”