概要
日本の各地に伝わる、死んだ、あるいは殺した猫の怨霊が人に取り憑き害を成す心霊現象の一種。
昔、猫は蛇と同じく執念深い生き物と考えられており、伊予国(現在の愛媛県)の宇摩郡では猫を殺すと取り憑かれるといわれて決して猫に害を加えなかったとされ、こんな話が伝わっている。
昔、豪農の主人で弥八という男がいたが、どの様な経緯があったのかは分からないが、ある時、飼っていた猫を殺してしまった。
それ以降、弥八は精神に異常をきたし、財産のなにもかも人に奪われてしまい、そのうえ彼は終始、
「猫が取り憑いた、猫が取り憑いた」
と、うわごとを言いながら、フラフラと彷徨い歩くようになってしまい、このようなことがあって以降、この付近の住人たちはそのことを
「猫を殺すと弥八さんのようになってしまう」
と一種の教訓にするようになったという。
山口県の大島郡では死んだ猫の傍を通ると猫神が取り憑くとされ、人々はなるべくそこを避けて通るようにしていたが、どうしても通らなければならないときは「猫神うつるな、親子じゃないぞ」
と唱えながら通れば取り憑かれないと信じられてきたという。
佐賀県の東松浦郡では、猫の魂は死人に乗り移るといわれており、それを防ぐために、人が亡くなった際は直ぐに枕を北向きに寝かせて布団の上に箒を乗せ、枕元に刃物を置く習慣があるという。
また、岩手県には幅1尺(約30cm)、長さ2尺(約6cm)程の板に、白色で<猫>という字を書いて四辻に建てるという、もし猫に取り憑かれ病気になった時に効く≪猫送り≫という呪術が伝わっているが、当時、人はこれを見つけると皆恐れて誰も近寄らなかったらしい。