概要
3000年くらい前の中国で使われていた文字。だいたい、鹿の大腿骨か牛の肩甲骨か亀の甲羅へ彫りこまれている。基本的には貴重な亀甲、牛の肩甲骨、鹿の大腿骨の順で価値に序列があり、この使用された骨の種類と回数で当時の王権の置かれた状況がおおよそ把握できる。
占いに用いられ、落合淳思の調査ではある一定の薄さに骨を加工することで都合の良い占いの結果に導くように操作できたことがわかっている。
甲骨文字は情報媒体の主流が金文、木簡と変遷していくにつれ廃れ忘れ去られた後、出土したものは貴重な漢方薬として中国人に親しまれた。発見者である王懿栄は、骨董品店にて甲骨文字を発見し、彼の専門である金石学の文字体系と近いことから金文が普及する以前の文字であると確信、彼の同僚とその娘婿らの研究により出土地が判明、以降伝説扱いであった殷王朝の実在が考古学的にも確認されるなど、古代中国史の研究に重大な手掛かりを与えた。
家の字について白川静の「犬の屠畜儀礼を行った祭祀場」説と、落合の「豚の屠畜儀礼をおこなった祭祀場あるいは家屋の家は豚小屋(ウ冠に豕の字を二つ書く)の略字」説などもあり、解釈にぶれのある文字も多い。