概要
徳川家康が残したとされる、「人生とは重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず」という出だしで始まる17の格言。神君とは家康の事だが、彼ではなく孫の徳川光圀(水戸黄門)が書いたものだという説もある。
内容
有名な上記の出だしに続き、
「怒りは敵と思え」「堪忍こそが長く続く秘訣」「己を責めても人を責めるな(自分の言動をよく振り返り、他人の失敗ばかりを責めてはいけない)」といったように寛容さを説くもの、
「不自由が常と思えば不足はない(=足るを知る)」
「勝つことばかりを知り、負けることを知らないとそれが仇になる」
「心に野望を持ったら辛く苦しいときのことを思い出せ」
「やり過ぎよりは足りない方がまだ良い」
…といったように、現代でも通用するような考え方が盛り込まれている。
三大遺訓
家康、光圀、伊達政宗の残した教えをこう呼ぶ。
光圀の教えは9つあり、
「楽は苦の種、苦は楽の種」ということわざの他、
「主や親は道理が通らないもので、下人は足りないものと思え」
※部下は思慮が足らなかったり能力が劣ったりしていても仕方ない。だから目くじら立てず丁寧に指導しなさいという意味
「欲と色(性的なアレコレ)と酒は敵」
「掟、火、分別のないものをおそれなさい。あと恩を忘れてはいけないよ」
「ものの分別は堪忍することにある」
「九分では足りないけど十分ではこぼれる(=加減を知るべし)」
「小事もあなどらず 大事も驚いてはいけない」
「正直は一生の宝 堪忍は一生の相続 慈悲は一生の祈祷」
「朝寝と長話で居座るなんてことはしないように」
……となる。
政宗の遺訓は「貞山政宗公遺訓」と呼ばれ、
仁に過ぐれば弱くなる。
義に過ぐれば固くなる。
禮(礼)に過ぐれば諂(へつらい)となる。
智に過ぐれば嘘をつく。
信に過ぐれば損をする。
…と、儒教で尊ばれる仁・義・礼・智・信のそれぞれも行きすぎればこうなると説き、
氣長く心穏かにして、萬(よろず)に儉約を用て金銭を備ふべし。儉約の仕方は不自由を忍ぶにあり。
……と「穏やかにすごし、倹約を心がけて資金を貯めろ(少しくらい不便でも我慢しろ)」と倹約する大切さを教え、
此の世に客に來たと思へば何の苦もなし。
朝夕の食事うまからずともほめて食ふべし。元來客の身なれば好嫌は申されまじ。
今日の行をおくり、子孫兄弟によく挨拶をして、娑婆の御暇(おいとま)申すがよし(=死ぬときはよく準備しておけ)。
………このように、意外なくらい堅実な内容になっている。