概要
『ブラウン神父』シリーズの「折れた剣」より、ブラウン神父が下記の言葉を言っている。
「賢い人は葉をどこへ隠す?森の中だ。森がない時は、自分で森を作る。一枚の枯れ葉を隠したいと願う者は、枯れ葉の林をこしらえあげるだろう。死体を隠したいと思う者は、死体の山をこしらえてそれを隠すだろう」
つまりは見立て殺人で有名なABC殺人事件と似たような内容である。
ちなみに、金田一少年の事件簿の蝋人形城殺人事件でこの言葉を引用している。
事件解決編で【犯人がトリックのために被害者に脱ぎやすいマントを着させたい=それをごまかすために様々な仮装を用意した】ことを金田一一が説明し、それを「木の葉を隠すなら森の中。森がなければ作ればいい」と言い回している。
「木を隠すなら森の中」と誤用される場合もある。同じ木ばかりなら見つけづらい事には変わりないが。
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ネタバレ
この名言の出典となった短編小説は、下記のようなかなりエグい話。
名将にして愛国者として有名だったイギリスの将軍が居た。
彼の最後の戦いでは、(そんな真似をした事は、それまで一度も無かったのに、何故か、その最後の戦いの時だけ)あまりに無謀な作戦で多くの部下を死なせ、部隊ごと敵の捕虜になったが……捕虜に寛大な扱いをした事で有名な敵将が捕虜となった将軍の部下達を解放した時、(これまた、この敵将は、そんな真似をした事は、それまで一度も無かったのに、何故か、この時だけ)その将軍のみが絞首刑にされていた。
実は、このイギリスの将軍は悪い遊びをやり過ぎたせいで金に困っており、とうとう、国家の機密情報を部外者に売ってしまっていたのだ。
それを知った部下の1人がその将軍に黙って辞職するか軍法会議にかけられるかを選ぶように迫る。
追い詰められた将軍は、その部下を殺害してしまった。
その死体を隠す為に、将軍がとった方法は……配下の部隊に、わざと無謀な突撃を命じる事だった。
たった1つのバレたらマズい死体を隠す為に、無数の部下達を死体に変える事を目論んだのである。
その結果、当然のように大敗し、将軍と部下達は、敵に投降する事になる。
そして、敵将は寛大な性格と、大量の捕虜に食わせる食料が無かった事から、将軍達を解放する。
だが、その時、既に、生き残った部下達は将軍が何をやったかを察してしまっており……。
実は、その将軍は敵に絞首刑にされたのではなく、自分の部下達によって絞首刑にされたのだ。
更に、将軍を手にかけた者の中には、将軍の娘の婚約者で、後に「この時の将軍は愚かな選択などしておらず、敵将もまた捕虜となった我々を寛大に扱った」という内容の回顧録を出した将校も含まれていた。
結局、愛国者として有名だった将軍が、実は、とんだ破廉恥漢だった事を隠す為に、真相は闇の中に葬られた。
そして、その将軍が降伏した際に敵将に差し出した切っ先が折れた剣は、実はこの戦いの最中に1度も抜かれておらず、当然、その剣が折れた原因は戦闘によるものではなく、この剣の失われた切っ先は、将軍が口封じの為に自分の手で殺した部下の死体の中に有ったのである。だが、この事は将軍を手にかけた部下達以外は誰にも知られていなかった為に、「折れた剣」は、この将軍のシンボルとなり、将軍が実は売国奴(それも自分が売国奴である事を隠す為に無数の部下を犬死にさせた最低の人物)だと知らぬイギリス国民達は、この将軍をテーマにした絵や銅像の「折れた剣」に愛国心を鼓舞され続けたのだった。